~熱風の果て~

観劇の記録

最果ての星(アリスインプロジェクト)@シアターKASSAI

【脚本・演出】松本陽一

【出演】酒井萌衣、八坂沙織、新藤まなみ、針谷早織、ゆうの、渡辺菜友、千歳ゆう、山本柚月、安達優菜、栗生みな、がーな、松本奈々、梅原サエリ、黒木美紗子、田中奈月、天音、南條あかね、舞川みやこ
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デッドリースクールから、2週間ほど経過した世界の別の屋上で展開される、もう一つのサバイバル劇。デッドリーからは、バット女こと紅島さんと、ビデオカメラ女こと霧子が登場。修羅場をくぐり抜けてきた二人らしく、サバイバルの先輩格として、もはやこの世界で生きることを楽しんでいるような風格があった。
人間不信や疑心暗鬼、現実逃避といった、極限の状況の中で自然に芽生えてくる負の感情もはっきりと描き出し、考え方が異なるグループの合流もあって、緊張感の強い作品となった。美術部コンビの美しい関係性と、それを切り裂く襲撃を経ての展開には胸が痛んだ。
こちらでも世界の終わりがいつ終わるのか、光明は見えなかったが、それでもデッドリーと同様に、一筋の明るさを感じさせるラストだった。
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DOLL(劇団ハーベスト)@小劇場B1

【演出】中村公平、劇団ハーベスト【作】如月小春

【出演】加藤梨里香、高橋紗良、川畑光瑠、弓木菜生、山本萌花、広瀬咲楽、望月瑠菜、篠崎新菜、宮武佳央、葛岡有
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久保田さん、布施さんが退団し、10人体制で迎えた劇団ハーベストの第14回公演。既存作品に対して、劇団員たちが話し合いを重ねて、人間関係や人物の内面を深く掘り下げながら作り上げたステージで、演出として、劇団ハーベストがクレジットされた。
どこにでもいるような高校生たちの青春とその最期が繊細に、描かれる。こういった青春に共鳴できないのは己が年をとったせいかとも思うが、高校生の頃に見ていたとしても、やはり共感はできないだろうとも思う。青春とは美しく痛々しいもの、というのは創作の上で形作られたイメージによるところも大きいのではないだろうか。4人の少女たちの1人ずつにスポットを当てながら展開していく4部作的なストーリーには、やや冗長な感も受け、その合間に演じられる抽象的なシーンも、やや鼻につく感じは否めなかった。
この公演を最後に、弓木さん、山本さんの2名が退団。8名まで人数を減らしたハーベストは、それでも次の公演に向けて、前へ、進む。
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沼田☆フォーエバー(UDAMAP)@シアターKASSAI

【脚本・演出】松本陽一

【出演】栞菜、中塚智実、石井陽菜、さいとう雅子、宇田川美樹、三浦菜々子、中野裕理、鶴田葵、松木わかは、有馬綾香、古野あきほ、喜屋武蓮、新木美優、藤堂瞬、福田真夕、民本しょうこ、土田卓
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シアターKASSAIの小さな舞台をいっぱいに使ってドタバタとテンション張りっぱなしで演じられる、時代を超え、世界をまたにかけるタイムリープもののコメディ劇。主役の腐女子4人組のデフォルメされたキャラクターを、主演軍団が一層鮮やかに見せる。数多の舞台に出演し、主役も張ってきた女優だからこそできる、気持ちがいいほどの怪演ぶりだった。タイトルにその名を冠する沼田先輩は最後まで舞台にその姿を見せることなく終わった。シアターKASSAIで宙乗りまで見られるとは思わなかった。本来は飛んでいたはずの蜂巣さんは稽古中に2度の心臓発作を起こして一時は生死の境をさまよい、本舞台は降板となってしまったが、命に別状なく、演劇活動にも復帰できたようで安心した。
さいとう雅子さんは、この舞台の後、12年間続けてきた芸能活動を年内で休止することを発表。その演技の魅力に引き込まれ、舞台女優として追いかけてきただけに勿体ない思いはあるが、導き出された彼女の決断は尊重したい。
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蝶つがい(カムカムミニキーナ)@座・高円寺1

【作・演出】松村武

【出演】八嶋智人、松村武、谷川清美、仁藤萌乃、渡邊礼、柳瀬芽美、小林健一、富岡晃一郎、菊川耕太郎、未来、大倉杏菜、栄治郎、長谷部洋子、吉田晋一、亀岡孝洋、田原靖子、元尾裕介、福久聡吾、梶野春菜、三科喜代、清水芳成、スガチズル、柿崎智巳、丸山雄也
妖しく舞う蝶が、諸所に咲く不条理の花弁に羽を休めるとき、そこに物語が生まれる。
小道具をつかった繊細な動きに魅了はされども、奇想かつ壮大なストーリー展開について行けたとは言えず、ラストシーンにはあっけに取られたのみ。こういったものを世の人々は芸術として高く評価するであろうことは想像できるが、己の実感としては伴わなかった。
名の通った劇団の本格派の舞台を観ることで、新しい楽しみ方に気が付くことができるかもしれないという期待は空振りに終わったのだった。
ゲスト出演の仁藤萌乃さんは、後日、年内での芸能界引退を発表。この舞台が見納めとなってしまった。
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ふらちな侍(気晴らしBOYZ)@あうるすぽっと

【作・演出】田中大祐

【出演】木ノ本嶺浩、原嶋元久、輝山立、恵麻、裕樹、右近良之、平野勲人、石井康太、加藤梨里香、酒井俊介、望月卓哉、青木俊輔、岸田タツヤ、冠仁、町田尚規、たむらがはく、古賀司照、両國宏、錦織純平、錦織聡、渡辺克己
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欲得の前に、実態のない価値に振り回される人間達の欲望を滑稽に描いた喜劇作品。絵に描いたような悪代官と悪徳商人が実は正義のために動いていたというどんでん返し。しかし二人は既に正義の刃に斃れた後の祭り。欲の詰まった壺が渡れば、それにつられて演じられる華やかなる皆殺しに舞う血しぶき。個性的な面々が揃って、ストーリーも練り上げられていたが、人物たちを小分けにしたシーンの数が多く、行きつ戻りつで軽快なテンポに欠けた感があるのは惜しまれるところか。
ハーベストの加藤梨里香さん演じるお鶴は、大人しい女中。若旦那に手籠めにされかけるくらいで、終盤までは見せ場らしいところもなかったが、まさかの豹変ぶりのサディスティック乙女。お凛と並んで、女の怖さを存分に見せつけてくれた。
善の悪徳商人・越後屋役の右近良之さんは、25年前に上演された、内田順子さん主演のミュージカル「ごんぎつね」に出演していた大ベテラン。そういう縁のある役者さんの演技を見られるというだけでも、何となしに嬉しさが湧く。
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