~熱風の果て~

観劇の記録

開演します!〜girl's up! up!〜(劇団ハーベスト)@ウッディシアター中目黒

【脚本】小林佐千絵、【演出】中村公平

【出演】加藤梨里香、若菜葵、山本萌花、宮武佳央、松永ミチル、布施日花梨、高橋紗良、川畑光瑠、広瀬咲楽、望月瑠菜、西園瑠花、篠崎ニイナ、久保田紗友、青山美郷、市川円香、岡田茉奈、冨田裕美子、オカドミキ、永島知洋
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ソニー・ミュージックアーティスツの大規模な女優オーディションを勝ち抜いた14名による少女劇団である「劇団ハーベスト」。さらにこの中からテレビドラマのヒロインが選ばれるのだという。会場のウッディシアターは100席規模の小劇場で、今回の旗揚げ公演は割と早くソールドアウトになっていた。客層はヲタと出演者の家族が半分ずつくらい。
さすがに選抜された美少女たちだけあって、公式サイトのプロフィールからして素人臭さがあまり感じられず、既にビジュアルの完成度が高い。既にイメージ戦略がはじまっているように見えて、何となく親しみにくさも感じてしまっていたが、舞台上の彼女たちの姿は実際に美しく、それでいて初々しさと瑞々しさに満ちあふれており、サイトだけを見ていたときのイメージは良い方に変わった。
主演は14歳になったばかりの加藤梨里香たん。プロフィール写真の完璧な美少女顔よりは、食いしん坊キャラを意識してか幾分丸くなっていたのと、顔を丸く見せるおだんご髪とで、親しみやすい雰囲気だった。丸顔フェチとしては、理想の美。元オドロンパerの己にとっては特別な存在であるじゅんじゅんこと内田順子さんの面影も重なって見えた。幼少時から豊富な舞台経験を持っているということもあり、演技は安定していた。声や表情のつくり方なんかは、黒田有彩たんに似ており、コミカルな演技も無理なくこなしていた。
美少女ぞろいでも、没個性ではなく、それぞれが独自の雰囲気を持っている原石たち。脚本家の卵を演じた若菜葵たんや、演劇部に途中加入する下級生を演じた久保田紗友たんは、既に女優として大成しそうな大物感を醸している。17歳で最年長メンバーとしてリーダーを任されている青山美郷たんは、凛として、なおかつどこまでも透明。これから何色にでも染まりそうな可能性が感じられた。個性という点では、ともーみに似たたれ目と魔性を秘めた色気が印象的な14歳の布施日花梨たん、ミステリアスな雰囲気を役にも活かしていた14歳の松永ミチルたん、眉毛で強烈な自己主張を放つ12歳の宮武佳央たん、典型的美少女顔ではないものの独特の透明感を持つ12歳の篠崎ニイナたんなどなど。ほかにも、役に恵まれれば個性を伸ばせそうな子も見られたので、8月にザ・ポケットを会場に行われることが決定している第2回公演も楽しみだ。
ストーリーとしては、学園生活のひとコマを、少女たちの微妙な心の動きを見せながら、やさしくなぞっていく感じなので、派手な場面がない分、経験の少ない彼女たちにとっては逆に難しい面もあったのではないかと思う。あえてそういう脚本を用意したことは、彼女たちの成長にもつながると思うし、評価したい。オカドミキさんら、客演の役者さんたちと比べると、演技のレベルには差はあったが、いきなり完成形を見せられでもしたら、旗揚げ公演を見守る意味もないというもの。可能性が感じられればそれでいい。
千秋楽の挨拶では多くのメンバーが感極まった表情で涙を流していた。ピュアな涙に心が浄化される思いだった。終演後の「お見送り」では、一人ひとりと握手をしながら声をかけられたのもよかった。将来、この場で間近に演技を見、手を触れたことがいい思い出として残るような大女優が現れる可能性も低くはない。