~熱風の果て~

観劇の記録

ゼロヨンヨンの終電車(アリスインプロジェクト)@新宿村LIVE

【脚本・演出】松本陽一

【出演】高橋明日香、梅田悠、舞川みやこ、中塚智実、針谷早織、田沢涼夏、佐藤ゆうき、宇田川美樹、花奈澪、渡辺菜友、野田怜奈、松本稽古、八坂沙織、宮崎優衣、岡田香菜、郷咲あやね、妃野由樹子、稲葉楓、田口空、神崎晴香、大島みふき、椎名亜音
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「電撃の100幕劇」という宣伝文句に、いったいどんな光景が繰り広げられるのか、見る前から非常に楽しみにしていた「ゼロヨンヨン」。想像をはるかに超えるスピード感と熱量と胸糞の悪さと感動。一癖も二癖もある個性あふれる登場人物たちが繰り広げる、殺人や暴力といった要素もふんだんに盛り込まれたハードボイルド劇は、観客に考える間も与えずに、2時間を休みなく走破。この作品をアリスインで上演するということ自体がかなりの挑戦のようにも思えるが、7年余りの積み重ねの結果として、上演の機は熟していたのだと、終演した後になってみれば思う。10代から30代まで、初舞台からベテラン、芸能界からの引退を決めている人まで、様々な年齢と経験の女性陣が集まって、これだけの作品を作り上げることができたということは、間違いなく、2010年10月に旗揚げされたアリスインプロジェクトの一つの到達点だと言える。ガールズ演劇でもここまでできるという、その可能性と素晴らしさについて語る座長のあすぴーこと高橋明日香さんの言葉にも説得力があったし、自称ドSの宇田川さんですら、6番シードがかつて上演したときを超える今回の座組のパワーを称えていた。
高橋さん自身が話していたように、旗揚げ公演の「デッドリー」に出演していた彼女が、30歳にしてこの到達点の作品を率いるというのも、見てきた側からしても十分感慨深い。宇田川さんがジャージを着てホイッスルを吹き鳴らしていた2011年の「ライン」でも、高橋明日香さんや、「デッドリー17」に主演した船岡咲さんはまだダブルキャストだった。この先、このプロジェクトが続いていけば、今回のダブルキャストの中からもいつか座長を務める人が出てきても不思議ではない。
今や舞台上で変幻自在の演じぶりで自由に楽しみ観客に笑いも提供する中塚さんの女優開眼も、思えば2010年のデッドリーがきっかけだった。このプロジェクトがなければ、彼女の芸能生活も、もしかしたら今とは違う方向に行っていたのかもしれないと思うと、中塚さんもまた、アリスインの申し子とも言えるだろう。
主役の花の苗字の「きさら」は聞き覚えがあると思っていたら、やはり松本陽一さん演出の「まなつの銀河」の主役と同じだった。こちらは「黄彩」であちらは「木在」。こういう共通点が見つかるのも面白い。

ぬばたまの夜のみ降れる白雪は 照る月影の積もるなりけり(詠み人知らず)

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