~熱風の果て~

観劇の記録

ろくでなし八犬伝(男〆天魚)@赤坂レッドシアター

【作・演出】田中大祐

【出演】平野勲人、長戸勝彦、幸村吉也、藤江れいな、斉藤レイ、新宮乙矢、石井康太、竹本洋平、前島綾介、小林佳織、古賀司照、たむらがはく、神原弘之、農塚誓志、熊谷学、松藤拓也、黒羽志竜、樋口裕司、柴崎咲子
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れいにゃんこと藤江れいなさん出演の舞台を赤坂で観劇。
黒いスーツに身を包んだ男女5人が描かれたメインビジュアルから、ヤクザものかと想像していたが、少し違う方向でのマンダム~男の世界~が繰り広げられた。血の宿命を負った八剣士という設定と、彼らのうだつの上がらなさやろくでなしぶりのギャップだけでも面白味を誘う。舞台で見られがちな強引な笑いの取り方ではなくて、人物像やシチュエーションも絡めてのより深いところからの笑いの取り方なのがよかった。格好良さを敢えて排除する格好良さ。尿道から八剣士の印の珠が出てきたり、決戦前夜に風俗遊びに走ったり、糖尿病で息も絶え絶えだったり。渋味走ったおじさんたちだからこそ出せるくだらなさに、大いに笑い、楽しませてもらった。スマホの操作を覚えて宝塚の動画を楽しむ妖魔というのも面白かったし、その設定を生かしてクライマックスでも笑いを取りに行く攻めの姿勢が素晴らしい。若い役者たちの舞台とは違った魅力にあふれていて、新鮮だった。
もちろん、緩さだけではなく、演技や殺陣の質の高さがあってこそ笑いが生きる。長剣、短刀、ライフル銃、ピストル、ボクシング、剣道、マサカリ、一眼レフ、鉄パイプ、妖術、スリッパと、様々な得物を使っての多彩かつ本格的な殺陣やアクションの迫力も見逃せない。殺陣つけはある程度の経験があればできるようになるが役者の安全を考えられるのが殺陣師の仕事である、という幸村さんの言葉にはなるほどど感心させられた。
藤江れいなさんの出演舞台を見るのは、大雪の中を見に行った、2014年2月の「アルゴリズム、虎よ」以来で、顔を見るのもそれ以来。その後、NMBへの移籍やキャプテンへの就任、そして卒業と経験を重ねてきた彼女。魅力である透明感あふれる見た目はあの頃のまま、内面の強さを増していた。舞台では、その透明感も生かして、周りの役者さんたちの空気を取り込みつつ、力強い表情の力で反射していくような演じぶり。酔っぱらったときの喜怒哀楽の演技や、短刀を振りかざしての殺陣のシーンといった見せ場もあった。本格的に女優の仕事が増えていくであろう来年以降の活躍も楽しみ。事前に、キスシーンがあるという見出しを目にしていたので、このろくでなしたちの一人に唇を奪われるのかと心配でもあった。実際、泥酔したところを襲われそうになったり、幻術を解くためと称してキスされそうになったりと危ない場面もあったが、彼女の唇を奪ったのは、斉藤レイさん演じる玉梓だった。
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