~熱風の果て~

観劇の記録

父、カエル。(演劇ユニット ハレボンド)@劇場HOPE

【作・演出】橋本幸坪

【出演】原田里佳子、森田武博、福永奈津美、乃芙斗、尾方泰輝、橋本コーヘイ、イマハシミハル
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梅雨どきに雨がほとんどなく、なぜか8月や10月に梅雨空が続いた今年の関東地方。秋雨の最後の贈り物である台風がやって来つつある雨空の中、原田里佳子さん出演の雨音響く舞台を中野で観劇。
AチームとBチームの完全ダブルキャストで、香川県出身である原田さんのBチームが、来月、岡山公演に出向く地元出身者によるチームということだった。ショートカットになった原田さんは、今回は主役の小学生の少年役。男の子役を演じるのは多分はじめてだと思うが、「少年のような」という形容がぴったりの純粋な瞳を持つ彼女にとって、少年役が似合わないはずがない。子供らしい無邪気さや正義感、信じていたものが崩れたときの戸惑いと絶望感まで、よく通る舞台声と、きりっとした眉を中心にした豊かな表情とで、あらゆる感情を狭い舞台から伝えていた。「冬椿」のときに感じた才能の煌きは、努力と経験で磨かれて輝きを増していく、その姿を見ることができるのは嬉しい。
長閑な田舎が舞台で、父がカエルでというどこか間の抜けた設定ではあっても、家族のカタチや、何が正しいのかということを問いかけてくる重たさも同居している。ラストシーンでの森田さん演じる土夫の表情と目線は、これが納まるべきところなんだと納得はしても、やはり切なかった。なぜかオタマジャクシではなくて、へその緒がついたカエルとして生まれ落ちた子はどういう運命を辿るのだろう。もしかしたら、フライヤーにあるように、全ては夢の中なのかもしれないが。
キリ太くんの父親への憧れや屈折した思いや好きな女の子への通じない思い、大家さんのいっときの許されざる幸福もまた切ない。蛇松もまた一概に悪と決めつけることはできず、恨みだけでない彼なりの寂しさや、もしかしたら愛情の芽生えのようなものもあったのではないだろうか。乃芙斗さん演じた蛇松の底なし沼のような、嫌らしい臭気が伝わってくる蛇蝎の目つきと振る舞い、そしておどける姿とのギャップ。物すごい凄味と存在感があった。Aチームの蛇松役は水野淳之さんか・・・こちらもきっと個性的で迫力のある蛇松だったろうと頭の中で演じぶりを想像する。

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