~熱風の果て~

観劇の記録

冬椿(女神座ATHENA)@高田馬場ラビネスト

【作・演出】山口喬司

【出演】日野麻衣、原田里佳子、山川ひろみ、水崎綾、古河結子、三田寺理紗蒼井ちあき涼本めぐみ、河合風花、澤村佳奈。、森実咲守永七彩
f:id:JoanUBARA:20170312223318j:plain
第10回公演「大泥棒・石川幸子」の後、不可解な終焉宣言で幕を閉じた劇団女神座が完全リニューアルした女神座ATHENA。これに伴い、スタッフから相沢まくら氏の名前が消えたが、ラビネストオーナーの山口喬司氏は引き続き全面的に関わっているようだ。
HPの出演者募集コーナーで、イベントの延長のその辺のアイドル演劇にあらず、女優を目指す者のみ集えと理想を大上段に掲げる一方で、イベントの実施、ポイントカードの導入、人気投票と、やっていることはアイドルイベント指向だったので、理想で恥をかくようなことにならなければよいがと、不安も抱えた中での観劇だった。
観た後の感想は「参りました」。戦国の世を舞台に、信長、名人久太郎、築山殿、徳姫、信康といった実在した人物たちを交えながら、くノ一の血の宿命と友情が激しく火花を散らす殺陣とともに描かれる。殺陣では小劇場の強みも存分に発揮し、アイドル演劇のレベルを超える迫力まで達していた。命を懸ける重い展開の中に個性的なキャラクターたちが笑いの要素も忍ばせ、舞台に引き込まれるままにクライマックスへと向かっていった。「アドリブ第六天魔王」こと古河結子たんの存在感と、期待を裏切らない落とし方は女神座の大きな武器だ。ラストシーンは思わず目が熱くなるものだった。
主演の二人の気迫がとにかく凄まじく、終わってみれば納得の人選。1日2公演持つのかと心配になるほどに、持てる力の全てを出し切っていることが伝わってきた。日野麻衣たんは、滑舌は決して良くはないのだが、一本気で情に篤いオラキャラのアカネ役にはそれが効果的だった。ライバルのオレキャラ・コハク役は原田里佳子たん。魂の籠もった眼光で、戦闘シーンだけではなく、翳を潜めた心の揺れも見事に演じていた。チアチアパーティーで納まる才能ではないな。
石川幸子」に続いての出演となった蒼井ちあきたんは、「ヴェッカーΧ」のアルで見せたようなアクションシーンはなし。7歳の幼女・徳姫たん役を、持ち前の甘ったるい小悪魔的な声色と口調で違和感なく演じていた。
このレベルの劇がラビネストという小さな会場で臨場感たっぷりに楽しめるというのは贅沢なひととき。その代償にアイドルイベント的な売り方をするのはやむを得ないことなのかもしれないが、これだけいい演劇を作っているのだから勿体無いとも思う。女神座ATHENAへの懐疑は完全に払拭され、明日の千秋楽、さらには次回作にも大いに期待できそうだ。