~熱風の果て~

観劇の記録

午前0時を眺める人々(Japlin)@下北沢OFF・OFFシアター

【作・演出】桒原秀一

【出演】原田里佳子、黒川進一、松本和宣、小野田侑歌、石田政博、中島舞香、鈴木志麻、長堀純介、上杉英彰
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原田里佳子さんの主演舞台を下北沢で観劇。客演にして主演に抜擢されるというのは、彼女の実力が認められた証でもあり、嬉しい。思えば、コント作品以外で彼女の演技を見るのは3年ぶり。その間の時間をしっかりと成長のために充てられていたことが分かる、主演としての彼女の立派な演じぶりも嬉しく思えた。以前の演技は、全力を貫く余りに固く見えることもあったのだが、今日は、彼女の魅力である力強い眼力を、心の揺れを細かく映し出す繊細な表現に使っているところが見えた。ほぼ全編通して舞台に立ち続け、つむじ風に舞う塵のように移ろいやすい心情を、豊かな表情を交えつつ、対話や独白で表現していた。実年齢より10歳近く上で、既婚かつ8歳児の母親という、ハードルが高い設定だったが、その点も違和感なく演じていて、感心させられた。
登場人物たちは、少しずつどこかがずれていて、他人のことを思いやっているように見えて、本質を見ることができずに利己の罠に陥る。始まりがあれば終わりがある。午前0時の訪れは終わりと共に新たな始まりを予感させるが、一方で二度と戻らないものもある。真実の愛を語る道化の医者は重たく背負った十字架に繋がれることを喜ばれる。全てを解決に導くことができる唯一の存在として、舞台上に姿を現すタイミングを見計らっていた8歳児は誕生日の祝いの輪についに入ることなく宴が終わっても忘れ去られたまま造花を投げ捨てる。いくつかの悲しみが舞台上に残される終幕・・・最近見ていなかった気がする。それにしても貴ちゃん役の石田さんは、アドリブなのか役としての道化なのか、その境目を感じさせない、振り切れた怪演ぶりだった。
原案は、イプセンの戯曲「人形の家」とのこと。作者の名前と作品名は知っていても、読んだことはなかったので、これをきっかけに読んでみようと思った。「まだ登場人物がいたのか驚きでしょう」と終盤に現れた馬場さんは、どんな役割を持って出てきたのか、最後までよく分からなかったが、原案にはモデルとなる人物がいるのだろうか。
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