~熱風の果て~

観劇の記録

門星家の秘密 第三夜(劇団SPACE☆TRIP)@千本桜ホール

【脚本・演出】ゴブリン串田

【出演】田沢涼夏、松樹侑奈、椎名香奈江、橘あるひ、神崎晴香、水野以津美、江里奈、天音、のもとあき、笹木ありさ、まえばらかな、三宅ひとみ、織田唯愛、235
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劇団SPACE☆TRIPの第13回公演を観劇。この劇団を知って見始めたのは今年に入ってからなので、「門星家の秘密」シリーズはこの第三夜が初めて。過去の歴史を調べてみたら、2013年10月に第一夜(第5回公演)、2015年10月に第二夜(第9回公演)と、隔年ペースでのハロウィン恒例の演目で、門星家のキャラクターも引き継がれてきているという由緒あるシリーズ。しかしサブタイトルがマチコ先生以上に長い・・・
ストレートな性格で喧嘩っ早いオオカミ女と、彼女に拾われて妖怪の中で育てられた人間の女の子との種族の壁と家族の絆が物語の中心で、ゴブさん作品らしく、種族の違いよりも家族愛が強い、薬の力よりも心からの愛が強いという、衒いのないストレートなメッセージがあった。
オープニングを任されたのは、オオカミ女役の松樹侑奈さん。犬耳と、誇らしげな表情を浮かべながらの遠吠えが可愛らしい。「地球防衛レストラン」ではひたすら食べる役だった彼女が、場の空気を決める重要な役割を任されて、客席にも絡みながら一人芝居をやり切る姿に、こうしてアイドルは女優になっていくのかとしみじみ。
観客巻き込まれ型なのもいつもどおり安定。面白い仕掛けも散りばめられていて、客が「トリック」と「トリート」のどちらを選ぶかで展開が変わるという仕掛けや、客にセリフを読ませたり、お菓子をねだったり、一緒に呪文を唱えさせたりと、あの手この手があるので、最前でなくても安心してはいられない。「源's egg」のときに、橘あるひさん演じる頼朝に叩かれたのはいい思い出で、その縁もあって、今回終演後イベントでお話しもさせてもらったところ、いつも彼女に観客を叩くお役が回ってくるらしい。確かに何をしても許される雰囲気がある。今回橘さんが演じた人造人間のルイスは、ゆっくりとした動きとセリフが特徴で、彼女だけでなく、キャラクターたちの衣装やメイクなど、ハロウィン色が全開の個性を見ているだけでも楽しい。
先々週の「デッドリー」に黄市恵美役で出演していた天音さんは、悪魔軍団のボス・サタンと、前作からすごい振れ幅の役だが、癒しボイスで何とも小さくて愛らしいボス。登場時の侘しい音楽と独特の動きがシュールだ。ベタボレールを飲んだと見せかけて操られているふりをする、「のび太と鉄人兵団」で言うところの「リルル作戦」かと思いきや、普通に操られてしまっていたが、正しい心も持った死神のボスだった。
江里奈さん演じる死神・ベッキーは長髪になって登場。その長髪と死神の鎌を使っての哀愁漂う小芝居はもはや職人芸の域。さすがは、SPACE☆TRIP皆勤で、4年前の第一夜から出続けているだけはある。卑屈になっていた彼女が、終盤に逆転で正義の鉄槌を下すのは爽快だった。
人間たちの名前は、自動車メーカーシリーズになっていて、スズとイスズという紛らわしい二人が登場したのも、そのせいなのか。イスズ役の三宅ひとみさんは、「食卓の愛」では怪しい微笑みを浮かべる占い師役だったので、魔法使いの血を引くとは言っても今回の女子高生役は意外な配役という感じもしたが、きゃぴきゃぴした役もやり切れば自然と似合って見える。235さん演じるねるねーにゃんと二人で、独特の世界観を作り上げていた。「ネル」だけは自動車とは関係なさそうな名前だが、魔女つながりの「ねるねるねるね」が由来なのだろうか。

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