~熱風の果て~

観劇の記録

Sympathy FOR THE DEVIL(劇団くりびつてんぎょう)@ウッディシアター中目黒

【作・演出】水野宏太

【出演】松本淳、安藤清美、樹理、鶴岡和輝、坂口邦弘、勝又悠里、合志風彦、琴音きなこ、和田修昌、菊池聡子、奈綱郁美、桜原友美、白井諒子、塚川大介、豊田茉莉花、福満さちこ、若本諒平、柿の葉なら、石原功助、遠藤康平、白井肉丸、桜井晴雪、松谷なみ、前原実、小日向茜
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ウッディシアターで小日向茜さん出演の舞台を観劇。同じ会場で上演された6月の「マクベス狂走曲」のときもかなりの雨だったことを思い出す。様々な要素が重なって、観劇テンションは下がり気味だったが、当日パンフレットにあった「泣いた赤おに」がベースという記述を見て、期待が高まった。
こんな本を持っているし、
浜田廣介童話集 (ハルキ文庫)

浜田廣介童話集 (ハルキ文庫)

こんなところにも行ったことがあるのだから。
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歌えや踊れやの華やかな祭りの場面から始まった物語は、フライヤーで童話のあらすじを紹介したうえで、「ネタバレではありません」と宣言しているとおり、青鬼を退治して赤鬼の家に村人たちが来るようになってから、異なる展開を見せていく。
青鬼を退治した赤鬼は、決して村人たちに受け入れられないのだ。ムラのコミュニティは、ウチとソトを峻別し、凝集性を強めることで守られている面があり、それを乱す恐れのある新たな参加者や、内から生じた異端分子は、役に立つ限りにおいて利用するか、その価値がなければ、私刑に処したり村八分にしたり、徹底的に排除しようとするのだ。それは昔話の中だけではなく、舞台作品らしく時代考証を無視して登場した携帯電話とであったりLINEであったり、仲間内だけで通じ合うスラングであったりする。
子供たちも決して無垢な存在ではなく、残酷さも持ち合わせた存在として描かれるが、過ちに気づくことができるのも、この世界に生きている期間が短い子供たち。そして、厄介払いのように赤鬼の嫁としてあてがわれたうつけ女が、理屈ではない真実に最も早く気づき、物語を収束に導くことで、物語は幕を閉じた。他者を思いやり、違いを受け入れる寛容の心を忘れた人間たちの醜さが舞台上に描かれていく場面に胸糞の悪さを感じてしまうのは、どこかに思い当たる節があるというリアリティのために罪悪感が入り混じった感情だろうか。和解と希望の象徴ともなる赤児の存在があっても、50年の時を経て、再び同じような光景が繰り返されないとも限らないとすれば、単純にハッピーエンドと割り切ることもできないのだが、結局は良い面だけではない人間(自己や他者)を知り、受け入れて、その中で前を見て生きていくしかないんだというメッセージと受け取った。
フライヤーの裏面の役者紹介が、オープニングの踊りでも披露されたひょっとこ顔の変顔で、当日パンフレットにも役名が記されていないので、役と演者の名前が結びつかないのは、惜しまれるところだったが、久しぶりに劇団による、前衛的な遊び心とスパイスの利いた演劇を見ることができた。小日向さんは、現代風に言えば「知的障害のある」子供の役・・・と思いきや実は50歳の正真正銘ロリ何とか。普通のセリフが多くない分、演じるのが大変そうな役を、時に意地の悪い目つきも交えて、デコ出しで表情豊かに演じていた。中10日で次の座長公演というハードスケジュールは心配でもあるが、年内にさらにもう1本舞台出演が決まった小日向さんの精力的な女優としての活躍を見ることができるのは楽しみだ。

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