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~熱風の果て~

観劇の記録

君が予む物語(劇団SPACE☆TRIP)@千本桜ホール

演劇 演劇-2017年
【脚本・演出】ゴブリン串田

【出演】椎名香奈江、高橋茉琴、斎藤未来、坂本実紅、橘あるひ、山下真実、木畑梨佳子、水野以津美、小阪貴恵、三上真依、関口ふで、馬渡直子、江里奈
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「愛。ちょい」の旗揚げ公演の方向性に戸惑い、しばし離れてしまっていたゴブリンさんの演劇。周辺の情報にも疎くなってしまっていたが、気が付けば「愛原慎一」は再び「ゴブリン串田」となって帰ってきていた。
舞台は学芸大学駅前の千本桜ホール。パンフレットのキャラクター紹介を見ただけで、これからの楽しい時間が約束されたことを確信できた。
道具類が一切なく、カーペットが敷かれただけのステージとも言えない平面が真ん中に置かれ、客席が前後両面に配されて正面が明確にない形。演者が頼れるのは自分の声と身体だけ、というある意味過酷なシチュエーションでもあるが、セリフだけでなく全身を使って笑いを取りにくる。最初の主演の椎名さんの長く激しいモノローグからして、舞台に引き込む迫力は十分だった。キャラクターが十分濃いところに特殊能力のおまけ付きという設定も助けになり、海千山千のベテランも若手も、経験の差も感じさせずにおしなべて高いレベルで演じ、質の高いコメディ作品を作り上げていた。最前列の観客が巻き込まれるのもおなじみの光景だ。
馬渡さん、関口さん、江里奈さんの3人が揃うサイキック社側は特に濃い。馬渡さんはお茶目な部分を見せつつも凄味のある悪役で、彼女なら本当に世界征服できてしまうのではないかという迫力があった。この人たちを小劇場でレギュラーのように呼んでこれるというだけでも、ゴブリン演劇は強い。
間が抜けた超能力が生み出す笑いの中にも、「9人の戦士」の設定があることによって、誰が味方で誰が敵なのか分からないというところで、緊張感が最後まで途切れなかった。そしてエンディングは主人公の思うがままに変化するというマルチエンディング方式。大千秋楽が真エンドと言われてしまうと、どうしても見たいような、何だか損をしたような気にもなってしまうが、千秋楽前だけでも十分満足できるエンディングだった。
初見の演者では、キリッとした個性的な目元を持つ引きこもり役の坂本さんや、可愛らしい機械的な声でサイボーグ役を演じていた三上さんが可愛らしかった。あと、橘さん演じる小学生の可愛さと退化したときの狂暴さの落差も反則的だ。
愛原氏と「愛。ちょい」の1年間が必要だった事情は知る由もないが、やはりゴブリンさんには、こういった路線で作品を送り出していってほしいと思いつつ、満足のうちに次の観劇会場へと向かった。