~熱風の果て~

観劇の記録

マクベス狂走曲@ウッディシアター中目黒

【演出】私オム

【出演】ミク・ドール・シャルロットコヒメ・リト・プッチ冨田樹梨亜海老原優花野々宮ミカ、岩崎真奈、妃野由樹子、内田菜々、林さくら、豊田真希、佐伯侑梨加、蒼みこ、吉村南美、橘亜季彩、咲良しょうこ、國井紫苑、永田紗芽
f:id:JoanUBARA:20170618093545j:plain
観劇歴の中で、トラウマ作品と呼べるものがいくつかあって、その代表が2014年に下北沢で上演された「特攻(ぶっこみ)のマクベス」。以来、ゴブさん作品の観劇に復帰するまでに実に3年もの月日をかけることになってしまい、その間に、「リングのマクベス」や、コヒメさんが出演した「リングのロミジュリ」なども演じられていたのだった。
今作も、ゴブさんが脚本・演出として携わるのかと思っていたが、名前は出ず。設定や内容は「特攻のマクベス」そのものであるにもかかわらず、作品のページにも作者や脚本のクレジットはなく、どんな事情かは分からないが、不可解だった。ただ、出演者たちには何の責任もないし、真摯に作品の完成に向き合っていったことだけははっきりしていた。
ウッディシアターに5年ぶりに足を運んだのは、アイドルとしてのラストコンサートを終えたばかりのコヒメさんの演技を初めて観るため。低い声色を使ってのセリフの安定感には努力の結果と才能を感じることができる。悪になり切ることができなかった野心家の凶子役を眼差しや全身の動きを使って演じていた。今作では、舞台上では背の小ささがネタとして使われなかったのは評価できる。実際、小ささをあまり感じさせることがなかった。悪役ばかり回ってくるとボヤいてもいた彼女にはどんな役柄が向いているのだろう。本格的な舞台作品で一般的な役を演じるところなども見てみたい。一時は芸能界引退も考えていた彼女だが、溢れそうな涙を何とか飲み込みながらの、「この舞台に出演してよかった、これから「小日向茜」としてのコヒちゃん第2章が始まる」と、将来に向かっての力強いコメントを聞けてよかった。
演技の面で圧倒的なインパクトを残したのが、占い師役の永田紗芽さん。この作品での占い師というのは美味しい役ではあるのだが、役としての設定に食われないだけの個性で、怪しさを醸し出していた。演劇人として精力的に舞台出演を重ねている18歳、なかなか末恐ろしい最年少だ。きっとまたどこかで演技を見る機会もあるだろう。
今回は、「特攻」での反省を生かして、事前にシェイクスピアの原作を読んでみた。誰が原作で言うところの誰で、ここをこう翻案していて・・・というところが見えたのは楽しみの一つではあるが、血統が正統性の証明になるわけではない暴走族の世界に当てはめた上で誰も死なないハッピーエンドにするのであれば、マクベスである必然性はない気がする。また、野々宮さんや豊田さんなどは特攻服姿が完全にはまっていたが、やはりアイドル演劇である以上は、演者が持つ可愛らしさや可憐さが舞台上で輝くような作品づくりをしてほしいと思う。アイドル界とか、物理的な戦いではない世界まで飛躍させた方がむしろ潔かったのではないかと思った。
【⇒これまでの観劇作品一覧