~熱風の果て~

観劇の記録

聖餐のプシュコマキア(女神座ATHENA)@コフレリオ新宿シアター

【作・演出】山口喬司

【出演】今出舞、山川ひろみ、木村葉月、晴野未子、可愛りおん、中嶋こゆき、松崎カンナ、五十畑愛、操みさこ、前園かえで、東口優希
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本公演としては2年ぶりとなる女神座ATHENAの第6回公演。この春にオープンしたコフレリオでは初めての女神座公演となった。
「プシュコマキア」という単語は初耳で、4世紀ころのキリスト教詩人・プロデンティウスによる人間の悪徳と美徳との争いを描いた寓意的叙事詩の題名とのこと。そこに描かれるという7つの美徳の名を負った7人の少女が登場し、主人公の姓「湯田」と「聖餐」もキリスト教的世界観を想像させる。パンフレットの山口さんのコメントを読むにつけても一筋縄ではいかなそうな世界観に気圧されて、やや構えながら開演の刻を待った。
最初の観劇では、急展開についていくのに精一杯で、ようやく追いついたと思ったらそこが終幕で、呆気にとられたような感じにもなってしまった。実際に起こっていることだけを表現するという山口さんのコメントどおり、説明的なモノローグやナレーションは排されて、その時々の人物の気持ちは推し量らなければ分からない部分がほとんど。ストーリーを呑み込めている2回目の観劇では、その部分に注意しながら見ていると、表情ひとつひとつからも、初回では気づかなかった意味や感情が読み取れたりした。
制羅が愛を生徒会にスカウトしようとしたことや、教師にまでなって潜入している記者が学園の謎を追っていること、パンフレットの最終ページのビジュアル、山口さんの意味深なコメントなどを総合すると、終幕で描かれた平和な学園生活が続くとそのまま考えるのは早計で、もう一つの選択肢を選んだ制羅が鳥かごから抜け出して、7人の美徳の力を結集して、仮の姿に納まっている真の悪に戦いを挑む・・・というその後のストーリーが浮かんできたが、それも可能性の一つでしかない。続編の構想があるのなら是非見てみたい。
今作のキャスティングで驚いたのが、木村葉月さんの出演。4月に見た「パイレーツ3」にゲスト出演した際の演技が印象的で、ゲストではない形で演技を見たいと思っていたが、それが女神座ATHENAになるというのは意外な感じだった。彼女自身が確立している独特の世界観に、制羅という役が見事にマッチング。声色や眼力もフル活用して、華麗さや気品、そして狂気が表現されていて、彼女のためにあるのではないかと思えるような制羅役だった。
アクションも所々に織り交ぜられていて、そこは一方の主役を張った今出舞さんが大活躍。武道の嗜みが元々あるのかとプロフィールを見ても、特技はバトンやバレエということで、舞台稽古であれだけの迫力を身につけたとすれば頭が下がる。これなら「バトバト」でも自ら十分戦えたような・・・。豪快なデコ出しの髪型で、さっぱりとした頼りになる少女役を演じていたが、今年の2月に見た朗読劇を思い出すと、もう少し彼女の奔放さが演技に生かせるとよかったかなと思った。
もう一方の主役である山川さんは安定の制服姿。今までは、特殊な能力を持つにしてもニコニコしながら力を抜いてという感じの役が多かったが、今回は絶体絶命のピンチをギリギリのところで守る能力の持ち主ということで、今出さん演じる依朱佳と互いに守り合う、能動的な強さも併せ持った役で、大きな瞳が戸惑いや怒りを表現することも多かったが、根底にはやはり「愛」が溢れていた。愛が拳法部に入ったとしたら、「てんいちっ」の歩書瑤のような酔拳の使い手にでもなるのだろうか・・・。今回、女神座ATHENAでは初めて「女神さまのポイントカード」を使って終演後の「謁見」に参加。山川さんから嬉しい言葉もいただき、細々とでもこのブログを書いてきてよかったと思えた。
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