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~熱風の果て~

観劇の記録

PIRATES OF THE DESERT 3 ~偽りの羅針盤と真実の操舵輪~(Ann&Mary)@池袋シアターグリーン BIG TREE THEATER

【演出】上田郁代 【脚本】川手ふきの

【出演】日比美思、中江友梨、齊藤夢愛熊谷知花犬童美乃梨軽辺るか、池山智瑛、黒木麗奈、河東杏樹、佐伯香織、佐藤秀樹、小浜光洋、五十嵐山人、佐々木修二、秦瑞穂尻無浜冴美、稲見綾乃、空美夕日、林田鈴菜、社ことの、落合莉菜、荘司里穂、結城ひめり、水野淳之、木田健太、竹本茉莉、黒木ひかり、佐藤琴乃、新里菜摘、上田郁代、川手ふきの、木村葉月
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2013年7月の第1作は千秋楽を観て、演劇から離れていた2014年の第2作は見ず、そして第3作は再び千秋楽で観ることになったPirates of the Desert。第1作の時点では、浮沈の激しい芸能界で、4年もの期間をかけて完結するシリーズにつながるとは想像していなかった。第1作で演じている姿を見たキャストは、わずかにジャミレフ役の齊藤夢愛さんとジャバード役の佐藤秀樹さん、アザリー・ワルド役で演出家の上田郁代さんの3人のみ。主演の日比美思さんは、3作通しての主演を務めているが、第1作はダブルキャストで芸能界を既に引退されている田中絵里花さんが演じる回を観劇していたので、今回が初顔だった。
千秋楽ということで、前半はジャバードを中心に無茶ぶり、アドリブの嵐。第1作の千秋楽もこんな感じだったなあと、懐かしく思いながらも、千秋楽で初めて見る身としては、なかなか世界観に浸らせてもらえないもどかしさもあった。中盤からのストーリーの転換に加え、舞台の空気を大きく変えたのは、主人公のラナーと義姉のカーラとの別れを描いた回想の場面。1日だけのゲスト出演ながらも、感情のこもった声を振り絞りながら演じる木村葉月さんの演技は印象的で、できることなら、もっと長い時間見てみたかった。
第1作では誰も斃れることなく大団円を迎えたが、今作では不実が復讐と悲劇を呼び、代償として血が求められずには済まなかった。愛情が生んだ悲劇であり、血を流す側にも劇中で過去のいきさつや将来の希望が語られていたので、それらが絶たれることも重なり、辛い場面だった。
第1作でアザリー・ワルドに抱かれて逃れるようにウターリドにたどり着いたラナーの素性が明かされ、最後はカナロア国の女王として、僅かに残された海(ハバル)を守り、7つの海を甦らせるという使命に向かっていく覚悟を決める。終盤での日比美思さん演じるラナーの大いなる成長と覚醒。それはラナーと日比さんの双方に第1作からの4年間で積み重ねられてきたものがあればこそ見られたもの。最後はラナーと完全に一体になったかのような、何かが降りてきたような、もの凄い迫力だった。そこからの大団円は観ていて爽快。座長としての最後の挨拶も、それぞれのハバルを目指していこうと呼びかける立派なもの。芸能の世界を生きていくだけの覚悟と強さを見せられた気がした。
シリーズものということもあって世界観は確立されており、ストーリーの組み立てもしっかりとしている。そして力強く人生に響くメッセージ性。笑いの要素やアドリブが入ってもすぐに戻ってこれる骨太の芯があり、経験豊富や役者さんもいるので、安心して見ていられるし、それは初舞台となる女優さんたちにとっても同じだったのではないだろうか。さすがアザリンとアザトイのワルド姉妹・・・。クリーガーメヌエットなどバロック時代の曲を多用した舞台音楽や、日比さんとTGSの中江有梨さんの二人の歌声が奏でる美しいハーモニーも、感動に一役買っていた。
衣装は無国籍といった風で、色鮮やかでそれぞれ特徴も華もある。結城ひめりさんは頭がお花畑状態。千秋楽までにどんどん派手になっていったらしいが、ユニークな声も含めてそういういじられ方をされるというのも才能のうちだし、舞台経験を短期間に重ねることで、演技の面でも着実に成長を見せている。実際にこれだけ大人数の舞台でも観客の印象には強く残る。同じくカナロア国住民役で出ていた荘司里穂さんの演技を見るのは実に5年ぶり。もうすぐ21歳を迎えるという彼女、当然ながらずいぶんと大人っぽく、綺麗になっていた。「石川幸子」での演技を見て以来、注目していた女優さんでもあるので、舞台で息の長い活躍をしてほしい。
演出が第1作の小川信太郎さんから上田さんに変わっていることには気づいていたが、小川さんが昨年39歳で病死されていたことは、終演後に購入したパンフレットを読んではじめて知った。上田さんはじめ制作陣の小川さんへの思いも詰まったこの舞台、そうと知れれば「限りある生命」というキーワードが余計に重く響く。
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