~熱風の果て~

観劇の記録

終わらない歌を少女はうたう(アリスインプロジェクト)@新宿村LIVE

【演出】扇田賢、【脚本】守山カオリ

【出演】相笠萌小原莉子、針谷早織、松永真穂、田沢涼夏、渡辺菜友、寺田真珠、佐藤ゆうき、井上貴惠、民本しょうこ、生田善子、仲野りおん、酢谷有紀子、渡壁りさ、横尾莉緒、宮崎優衣、岩﨑千明、加藤文美、縣みりあ、國井紫苑、白井真緒、瀬野るりか、山下ほなみ、河合真衣
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現代編「終わらない歌」、2100年編「いつか出会う歌」、2120年編「はじまりの歌」の3つの時代の物語を繋いで展開される本舞台。「終わらない歌」といえば、やはり扇田・守山コンビの手による、2012年11月の「ラストホリデイ~終わらない歌~」を思い出す。今作とは世界観や登場人物の共有もあるかと予想していたが、「不思議部」の設定と雪女伝説に言及された場面くらいで、全く別のストーリーが演じられた。
主演の相笠さんの顔を見るのは、彼女がまだ中学生だった2014年1月13日以来、3年半ぶり。自分だけの世界から徐々に心を開いていく、科学部員・中森あゆみは彼女自身のようでもあるということで、最初は怖い人と思われるような態度から打ち解けていきながら作品を作り上げていった過程と重ね合わせていた。声を張った堂々とした演じぶりと、自信に満ちたような面構えは、座長に相応しいもので、AKBで揉まれ、そこから自ら踏み出した強さが演技にも表れていた。
アリスインプロジェクトの舞台では初めて見た生演奏。3つの物語をつなぐ鍵にもなる歌を歌ったのは、透明感のある可愛らしいルックスの持ち主で、ギタリストでもある小原莉子さん。アコギでの弾き語りやエレキでのロックンロールを披露。歌声もルックスそのままに透明で、技巧に走らず、ストレートに感情を表現する歌唱は、この舞台の大きなアクセントになった。
人間への愛と、人間を殺す本能との間で葛藤するアンドロイドを演じたのは松永真穂さん。2012年1月のStylipSの初イベントをサンシャイン噴水広場で見たことを思い出す。アンドロイドと人間との関係は、アリスインの舞台では屡々描かれる。アンドロイドは人間への愛を覚え、時に悩み、純粋な心を持つように自己犠牲を厭わない。松永さん演じるハジメと、渡壁さん演じるココロの「生き様」は胸を打った。ハジメの良き友である美雪を演じた仲野りおんさんや、自称天才科学者の真琴を演じた渡辺菜友さんは、年は下の方でもアリスインで培った確かな演技力で、作品を下支えしていた。千秋楽の挨拶は、あっけらかんと「がんばりおん」の仲野さんと、号泣する渡辺さんと、対照的だったけど。
昨年の「ノッキンヘブン」以来の扇田作品への出演を果たした寺田真珠さんは、自由奔放なキャラクターを敢えて封印するような、メガネをかけたもの静かな文芸部員役で、こういう意外な配役も、扇田さんの親心か。しかしどうして、微妙な心理を表現するような役もしっかりと演じていて、彼女の役者としての懐の広さ、可能性に驚かされた。次のボブジャックの本公演にも出演するかどうかは分からないが、遠い将来、民本さんのような存在感と出オチ感のある女優の道を進む可能性も無きにしも非ず・・・。民本さんは今回も様々なネタを繰り出して客席をほどよく温めてくれた。しかし、民本さんに続いて蜂巣さんまで補強したボブジャックの今後は、楽しみなような恐ろしいような。
今作は、ストーリーは脚本協力として参加している麻草さんの色も強めに出ていた。ラストで晴子の死が回避されるということは、アイボがタイムカプセルとして埋められることがなくなり、不思議部による発掘もなく、メインフレームの休眠もなく・・・と考えていけば、舞台中の歴史を根底から大きく変えることになるはずだが、全ては「大丈夫、きっと上手くいく」ということなのだろうか。
アリスインは、旗揚げ公演で演じられて以来、再演を繰り返している「Alice in Deadly School」の舞台と、コフレリオでの映画の公開が予定されており、本作からは渡辺さんと民本さんが参加。中塚さんが再び和磨会長を演じるという見どころもあり、舞台版は既にチケットを確保している。予告編を見たところ、舞台版ではなかったような、かなり過激な演出もありそうな映画版にも興味を惹かれる。
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