~熱風の果て~

観劇の記録

ラストホリデイ〜終わらない歌(アリスインプロジェクト)@てあとるらぽう

【脚本】守山カオリ、【演出】扇田賢

【出演】栞菜、水原ゆき、稲森美優相田瑠菜麻生かな野村真由美、高倉はづき、渡壁りさ、櫻井結衣、花井円香、宮島小百合、橘沙奈江、中村友理香、岡田桜、白川卯奈
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アリスインの舞台を見るのは3作品ぶり。まず、会場がてあとるらぽうと聞いたときには驚いた。アリスインのHPでは「100席」と案内されていたが、以前、B-Babyの「空隙」で入ったときの感覚では、せいぜい30人規模の客席だったはずだから。ぎゅうぎゅう詰めでもさすがに100人は入れていなかった。シアターKASSAIに比べれば役者が演じる舞台は奥行きがあって使いやすいとはいえ、アリスインがなぜこの狭い会場を選んだのか謎だ。
主演は栞菜さん。彼女の演技を見るのは、「落下ガール」、「VAMPIRE HUNTER」、「深愛」、「キミハ・シラナイ」、「ノエルサンドレ」、「空色ドロップ」、「桃太郎外伝」に続いて8作品目。これらの作品では全て主要な役どころを演じ、ムードメーカーにもなっていた彼女も、座長公演はこの「ラストホリデイ」が初めてということで、少し意外に感じた。翳を感じさせる表情や艶のある声を武器に、様々なタイプの役をこなせる彼女の演技は己のお気に入りでもある。最後の挨拶では、彼女にしては珍しく号泣しながら、周囲の助けを受けて座長公演を終えられたことへの感謝を述べていた。
準主演の水原さんは、凛とした雰囲気と愛嬌を同居させることができる人で、舞台に登場したときから、独特の味が感じられた。優等生キャラと落ちこぼれのコンビということで、「ノエルサンドレ」のアリサとリンのような関係を想像していたが、時代小説にはまって江戸ことばにはまってしまう、というお茶目な一面も強調されたので、対比はそれほど明瞭にはなっていなかった。
アリスインといえば、いくつかの作品に繰り返し出演する人も多いが、今回は初舞台の出演者も目立った。初舞台が、客席が間近に迫る満員のてあとるらぽうというのも緊張するのではないだろうか。拙い台詞回しも諸所に見受けられたが、新しい人材を発掘するのはいいことだと思う。稲森さん、麻生さんのアリスインアリス組や、よく通る声を持つ相田さんといった経験豊富なメンバーがしっかりとメインに座ることで、演劇として成り立っていた。相田さんのキャスト写真が異様に色っぽいのでどういう役なのかと思ったら普通に制服女子高生役だった。
栞菜さん演じるマホのお姉さんで教師役の宮島さん、しっかりとした演技をする人だと思って気になったが、多くのミュージカルに出演経験があると知って納得、高校1年生と知ってびっくりだった。
来月のアリスインの次回作は、やはり栞菜さんが出演予定で、ついにまつだ壱岱氏とのコラボで「戦国降臨Girl」とか。壱岱氏率いるASSHには「降臨Fight!」という作品があるが、その姉妹編のようなものなのだろうか。今月のASSHの本公演「世界は僕のCUBEで造られる」はチケットを買っておきながら見ることができなかったが、降臨Girlはそういうことがないようにしたい。しかし、激しい殺陣も予想される題材で、シアターKASSAIで大丈夫なのか心配。出演者の顔ぶれからしても、もう少し大きな会場でやっていいように思うのだが。
(以下あらすじ)
「闇」に飲み込まれつつある世界。ナージャ(橘)とルビー(宮島)は世界を救う術を予言書に探す。そして彼女たちによって「特別留学生」として選ばれ、地球に派遣されることになったのが、第一魔法高等学校の優等生のサラ(水原)と落ちこぼれのマホ(栞菜)だった。留学期間は与えられたペンダントの封印が解けるまで、そして魔法を使ってはならないという定め。使い魔の猫、従者の老婆と共に女子高生に変装した2人は、波子(相田)とあかり(麻生)が率いる「不思議部」に入部する。顧問の教師はマホの亡くなったはずの姉・ルビーに瓜二つだった。夏合宿にやって来た不思議部一行は、現地で雪女伝説を耳にする。その謎を解き明かすことで秋の全国大会優勝を狙う部員たち。ペンダントの封印を解く鍵は誰かから感謝されることと気づいたマホとサラは、出会った吹雪という村娘(稲森)を雪女に仕立て上げて部員たちに紹介する。喜ぶ部員たちを前に、マホは嘘で感謝されることをよしとせず、全てを明かす。突然のマホの行動にショックを受けて森に迷い込むサラに迫る闇(白川)。それを助けたのは腕に傷を負ったマホだった。自らの過ちに気づきマホを気遣うサラの心から闇は消えた。2人が無事に戻ると、あかりは合宿を延長して雪女伝説を解明することを強く主張し始める。「私には時間がない」とこぼすあかりを問い詰める波子。あかりは、自分がもうじきアメリカに渡らなければならないことを告げる。それを今まで教えてくれなかったことに蟠りを抱いた波子は怒って立ち去ってしまった。2人の仲たがいをなかったことにしようと、マホは、そもそも出会ったことすら2人の記憶から消して無に帰そうと魔法を使う決心をする。しかし、そのやり方をナージャから厳しく咎められ、マホは元の世界に帰されてしまう。山へと分け入る波子に近づく、実は60年前に山で行方不明になった女の子だった吹雪。彼女は闇の力にも支配され、孤独から逃れるために、あかりとの溝につけ込んで波子を自分だけの友達にしようとする。サラと不思議部員たちは雪女の正体を知り、波子を助けようとするが、吹雪の力の前に倒れる。そこに現れたマホは禁を破り魔法の力で吹雪と対峙する。サラもまた魔法の力で部員たちを助けた。互いに泣きながら謝る波子とあかり。吹雪の孤独の闇をも救い、封印も解け、元の世界に帰ることになったマホたちだが、魔法使いの記憶は地球で出会った人たちから消さなければならない。それを知った2人は、せめてもの思い出にとみんなと一緒に花火を楽しんだ。花火の記憶はずっと残るのだ。予言書によると闇の侵食から世界を救う伝説の光の魔術師となるマホを育てるため、ナージャとルビーはすぐさまマホとサラを次の特別留学に向かわせることを決めるのだった。マホはまだ自分の使命を知らない・・・