~熱風の果て~

観劇の記録

紛れもなく、私が真ん中の日(月刊「根本宗子」)@浅草九劇

【作・演出】根本宗子

【出演】山中志歩、藤松祥子、城川もね、尾崎桃子、高橋紗良、小林寛佳、岡美佑、中山春香、福井夏、大竹沙知、川村瑞樹、近藤笑菜、伊藤香菜、チカナガチサト、森桃子、比嘉ニッコ、安川まり、李そじん、椙山さと美、優美早紀、増澤璃凛子
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最近、やや演劇を観ることへの情熱が薄れていることを感じつつもあったので、劇団ハーベストのメンバーの出演などを縁として、いろいろなジャンルの作品を見てみようと観劇を決めたこの舞台。根本宗子さんの名前は知らなかったが、自らをモデルとしたインパクトのあるフライヤーのビジュアルや自らの名を冠したプロジェクト名に加え、オールナイトニッポンのパーソナリティも務めているという情報からは、その筋ではかなり知られる気鋭の劇作家なのだろうと想像できた。400人を超える応募者から選ばれた21人の女性俳優たちが繰り広げる物語を見るために、池袋から浅草行きのバスに乗ること50分余り、花やしきそばの九劇に初めて足を踏み入れた。
かなりのスピードでチケットが売れていて、行ける日は指定席は完売となっていたので、辛うじて確保できた最前ベンチシートからの観劇。入場して、舞台上に既に出演者と思しき、思い思いの衣装に身を包んだ11人の女性たちが姿を現している。観客に頓着する風もなく、ゲームや会話に興じる人たちを眺めながら開演を待つこと30分、開演時間になるや、そのまま本編になだれ込むという、初めて見る斬新なスタイルには驚かされた。
ある中学生の女の子の誕生日パーティを舞台として、クラスメイトたちの残酷な優しさ、友達思いの身勝手さ、うわべの関心という無関心、真実から逃げる無責任さなどが、同時進行的に容赦なく抉り出されていく。謎めいた存在として舞台に存在した「チャイナばばあ」は、こうした無関心や異端排除の部分を象徴しているかのようだった。
よくありがちなように、感情の爆発で場を収めるようなことはなく、何も解決されないまま、爆発は心を傷つけながら次の爆発を呼び、ついに舞台装置の物理的な破壊に至るまで止むことはない。劇中から10年の時を経たラストシーンでも、一筋縄の解決には導かれなかったが、変わるものと変わらないもの、人間の本質的な思考や行動の複雑さを現した、余韻のある終わり方だった。
多くの登場人物たちが入り乱れ、実際に取っ組み合いもあり、精神力も体力も絞り出して演じられる、熱量の高い舞台はゴールデンウィークを挟んで2週間のロングラン。主演の山ちゃん役の山中さんが一時体調不良で休演して根本さんが代役出演するといった出来事もあったようだが、5月4日には無事に復帰していた。主演の見た目の個性もシナリオに乗せた、オリジナルらしい作品だった。
ハーベストから出演のたかさらさんは、友達思いの言葉と行動が逆にナイフのように相手の心を傷つけてしまうこともある直情的な役。目をいっぱいに見開いて表情も感情も豊かに、恥を捨てて、役として舞台上に生きていた。
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