~熱風の果て~

観劇の記録

バック・島・ザ・フューチャー(シザーブリッツ)@上野ストアハウス

【演出・脚本】江戸川崇

【出演】高岡裕貴、小日向茜、藍菜、谷沢龍馬、春山大輔、伊東一人、工藤竜太、光希沙織、栗原みさ、紫水杏奈、小松詩乃、西田薫子、北村まりこ、渋谷昂平、星村優、植松大祐、久野木貴士、岡田武義、河田直樹、中場梨乃、水川華奈、高橋喜和子、釈永春歌、右田隆志、湯谷崇仁
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コヒメ改め小日向茜さんがヒロインを務める本作。一時は芸能界からの引退を表明した彼女が、こうして表舞台に立ち続ける決断をしてくれたおかげで、初めてお話しをすることもできた。
11日間18公演という密度の濃いスケジュールが組まれ、半数以上の役がダブルキャストと、聞くだけでも大変そうだが、両チームお薦めという小日向さんの言葉に従って、1週間の間を空けて、Bチーム、Aチームを1回ずつ観劇。同じ役名でも人が変われば人物の性格も変わる。警官や民生委員の変わりっぷりには驚いた。後から見たAチームも違和感があったのは最初だけで、幕が進めばどちらもチームの個性が出ていて魅力的だった。主演の高岡さんは、1週間の間でだいぶ演技に余裕が出てきたのがよく分かった。
若い俳優さんが多いので、技術面ではこれからというところも見られるのだが、アドリブを含めて全力感があり、汗を飛ばし、口角から泡を飛ばしながらの演技は見ていて気持ちがよい。特に高校生パートや園児パートは皆、苦悩や憎しみが心の大きな部分を占める大人パートよりも生き生きと演じていた。傭兵と海賊は設定と見た目だけでも空気を持っていってしまう強力な飛び道具。普通、海賊さんの立ち位置は、道化に見せておいて実はいちばんの賢者というパターンのはずなのだが、片鱗を見せただけで結局最後まで道化だった。
小日向さんは、主にセーラー服の高校生時代の姿。舞台が平場なので、リトルなプッチさが間近によく分かる。その小ささをネタとして生かすのが必ずしも正解とは思わないが、28センチの身長差がある藍菜さんから耳打ちを受けるためにジャンプする場面など、彼女ならではの演出が生まれるというのはやはり武器でもある。幼稚園児パートはルックスや声のはまり具合は言うに及ばず、飛び跳ねたり地団駄踏んだりといった動きがまた可愛らしく、彼女にしか作れない世界を現出していた。一方で、アイドル時代ではなかなかできなかった、恋や友情に悩む大人っぽい表情も見ることができた。来月出演の劇団くりびつてんぎょうの作品では、どんな顔を見せてくれるのか。魅力的な演技をする人なので、声優としてだけではなく、舞台女優としても活躍の場をどんどん広げていってほしい。
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