~熱風の果て~

観劇の記録

舞台版まいっちんぐマチコ先生@築地ブディストホール

【脚本・演出】ゴブリン串田

【出演】青山ひかる柳瀬早紀、夏目愛海、高橋茉琴、椎名香奈江、絢瀬かのん、市川咲、稲葉真由子、江里奈、大塚結生、片瀬美月、木畑梨佳子、小泉花恋、澤井俊輝、鈴原優美、ぜん、関口ふで、玉川愛祈、鳥居きらら、中野由紀子、西村ケリー、堀有里、馬渡直子、三澤絢香、もりしょうこ、山下真実、坂本一敏、しいはしジャスタウェイネゴシックス、ゴブリン串田
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近頃流行りたる「2.5次元」にはどうにも非生産的な香りがして、積極的に求めたいとは思わないが、今作はゴブさん曰く「2.9次元」とのことなので心置きなく観劇。しかも、ゴブさんオールスターズとも言える面々に加え、あいみんこと夏目愛海さんがメインキャストとして出演するという夢のようなキャスティングとあっては、早くから楽しみにするしかない舞台だった。
築地ブディストホールには4回目の入場だが、あいみんのツイートに触発され、道路を挟んだ向かい側にある、痛々しい火災の爪痕を残しながらも活気あふれる築地場外市場まで初めて足を延ばして、サーモンいくら丼を昼食に食してきた。観光客には有名でも、普通に住んでいるだけでは見ることがない東京の景色はまだまだ沢山ありそうだ。
オールスターよろしく、客席も一緒になって楽しめる、お祭りのような舞台。年に1回くらいは、こういう作品があっていい。中でも目玉は舞台前3か所に設けられた「まいっちんぐ台」と撮影タイム。まいっちんぐ台は、中を覗くと扇風機が上向きにセットされているという、アナログなつくりなのだが、それが昭和ぽいし、間抜けな感じが何とも絶妙な空気を作り出していた。まいっちんぐ台システムに恐れをなして超マチコ席を買う勇気はなく、マチコ席と一般席で1回ずつ観劇。マチコ席でも、リアルな質感が十分すぎる迫力で、撮った写真の手ブレ加減に自分の動揺の跡が見えた。アニメから飛び出してきたあらま学園チームは、安定した変態キャラクターたち。しいはしさん演じる山形先生のどうしようもないいい加減さとスケベ魂が清々しい。
「マチコ先生」は、テレビ埼玉でやっていたアニメの再放送を少し見た記憶があるくらいなので、原作と比べてどうということは分からないが、青山ひかるさん演じるマチコ先生は、ニコニコしながらまいっちんぐするというよりは、キリっとしたイメージ。マチコ先生のカツラは2.9次元の残りの0.1次元としてどうしても譲れなかったこだわりなのかもしれないが、できれば地毛で、本当にいたらいいなと思わせるリアリティのあるビジュアルの方が己の好みではあった。原作者のえびはら先生も会場に通われていて、とても気さくな感じの方だった。藤子先生のアシスタントをされていたということは初めて知った。
ゴブさんお得意の音楽と変な動きの融合も、近作よりも多く、「太。ちょい」的な演出もちょいちょい見られた。ぜんさん演じるこなきの旦那を中心として演じられたお祭りのダンスがいちばんツボにはまった。村人たちも脇役にはもったいないくらいの魅力的なキャラクターが揃っていて、マチコ先生とのコラボでなくても、村人チームと妖怪たちを描いたスピンオフ作品なんかも見てみたくなった。妖怪チームでは、絢瀬かのんさん演じる豆腐小僧のおどおどした喋り方と性格がとにかく可愛らしかった。人魚の母親と祖母を演じた馬渡さんと関口さん。扱いづらそうな衣装をまといながら、馬渡さんは独特の間で、関口さんは顔と身体を目いっぱい使った動きで、圧倒的な存在感を放っていた。
いちばん楽しみだったのは、初めての男の子役となる、あいみんのケン太くん。途切れることなく舞台への出演を続けながら、毎回新たな挑戦に挑み、課題をクリアしてきた彼女も、さすがに今回の役には稽古中から苦労していた様子が伺えた。でも、幕が開いてみれば確かに乗り越えていて、豊かな声量はそのままに、低めの声をつくって、いたずらっぽい表情や胸を反り返すような態度で、自然に男の子役を演じていた。髪の毛をアップにして前髪を撫でつけ、よく動く眉毛を濃いめに描いていたので、表情で感情を表す演技がよく伝わってきた。ケン太くんたちがマチコ先生にエッチないたずらを仕掛けるスケベさと、人魚の願いを叶えたいと願う心は、どちらも純粋な感情で根は違わないということを、「彼」の綺麗な瞳が教えてくれた。「大天使」と称されるあいみんが演じる「小さな悪魔」も魅力的だった。2週間後には、息つく暇もなく早くも次の舞台の本番が彼女を待っているが、次もきっとやり切ってくれるだろう。
【⇒これまでの観劇作品一覧
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