~熱風の果て~

観劇の記録

名探偵とナン(カラスカ)@日暮里d-倉庫

【脚本・演出】江戸川崇

【出演】緒方有里沙、前田真弥、三輪翔志、塩原康孝、星守紗凪、吉本剛士、ぴんきゅ、ささきあや、西山駿太、黒津勇介、伊藤新、大橋タクヤ、丸山祐花、藤崎日菜子、藤井玲乃、大仲マリ、久高将史、滝川華子、
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「シュベスターの誓い」と「ノッキンヘブン」に出演していた役者さんが複数出演する舞台をはしごすることになったこの週末。日暮里d-倉庫では、「シュベスター」から緒方有里沙さんが主演、星守紗凪さんが変則ダブルキャストで出演する舞台が演じられた。9月に上演された江戸川崇さん作の舞台「バック島」を見ているという縁もあった。
公演タイトルを聞けば、「ナン」とは何ぞやとなるわけだが、元名作劇場ファン的思考としては、「ナン」といえば、「ナンとジョー先生」の主人公であるノーティ・ナンことアニー・ハーディングさんのことを真っ先に思い浮かべることになる。もちろんそれは不正解で、「名探偵コナン」と、インド料理のナンを掛けているのが正解。作者が江戸川さんだから、江戸川コナン君という発想がすぐに出てきたのだろうか。
「こなそ君」が登場したり、基本的にはパロディ色も豊かなナンセンスコメディ。しかし、会場が一番大きな笑いに包まれたのは、インド人役で、劇中ずっと甲高い声で滅茶苦茶な言葉を語り続けていた吉本さんが普通の日本語で喋った瞬間だった。
殺人事件による死人が一人もいない探偵ものというのも珍しいが、探偵ものらしく、どこか不自然な設定や伏線が至る所に張られていて、最終的には回想シーンと行き来しながら全て回収される。飛び道具が使われているとはいえ、なかなか周到だった。今回は1公演しか見られなかったが、こういう舞台は複数回見ると全く違った見方ができて面白いはず。インド人にすっかり騙されて、「幽霊」という発想までは思い至らなかったな。しかし、こなそ君の言うように、真実は一つとは限らず、舞台上で描かれた光景が真実とも言い切れない。もしかしたら、統合失調症とされていたナン姉ちゃんだけが真実を見ていて、秘密組織が実在している可能性もゼロではないのだ。
主演の緒方さんは、探偵のベレー帽姿と、前髪から三つ編みにした髪型は可愛らしい。いまだに「シュベスター」のときのブリちゃん役の印象が強すぎるので、顔を見ていると「眼鏡を外したら美女だった」という感覚を抱いてしまう。眉根を少し険しくして八の字の眉の下の綺麗な瞳を光らせ、口の中に飴玉を入れているかのように頬を膨らましながら謎解きに挑んでいた。過去を思い出すことを避け、過去を思い出してもなお、未来へ進み続けていく生き方は賛否両論あるところかもしれないが、強さに溢れていた。
星守さんは、ナンに足を滑らせて転落死してしまった幽霊という設定。今回のような、力が入り過ぎて空回りしているような役もよく似合う。途中までは、なぜ時が経過しているはずなのに制服姿のままなのかという疑問はあっても、そうとは気づかなかった。声優としても活躍する彼女らしく、ルド女のときよりも一段高い声を張って精一杯の演技ぶりだった。一発芸コーナーもあって、そこはお約束の滑りっぷりだったが、こういう経験をして舞台度胸がついていくもの。共演者がネタを拾った場合の展開も見てみたかった。12月には、また江戸川さんが作・演出の「ダーリンの進化論」にも出演が決まっているので、そちらも楽しみにしている。そして、来年2月の「ルド女」では、また馴染みのある顔が揃うことになる。
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