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~熱風の果て~

観劇の記録

優しい電子回路(ベニバラ兎団)@サンモールスタジオ

【演出】IZAM 【作】川尻恵太

【出演】秋山ゆずき、北村悠水月桃子、川竹達也、林由莉恵、北原知奈、竹内麻美、外山将平、碧風歌、青山由美子、黒木綾、三浦タマ、飯田南織
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「踊りが丘学園」で好演を見せたベニバラ兎団所属の秋山ゆずきさんの初主演となる舞台。「踊りが丘学園」からは顔芸で多くの観客に強い印象を残した水月桃子さんも参戦。
これまで、シアターサンモールには、「ロボット」「落下ガール」の観劇で何度か訪れていたが、同じ敷地の建物の地下にあるサンモールスタジオには初入場。100席強の小ぶりな劇場の客席は、横幅が狭く斜度がしっかりとついており、見やすさで言えば隣のシアターよりも勝る。
物語は主にネットゲームの中のたまり場を舞台に進行し、登場人物たちは、ゲームのキャラクターの姿に扮する。ゲーム的なセリフや都合のよい設定などで笑いもとりつつ、次第に現実世界が重たくオーバーラップし、キャラクターを操る生身の人間たちの姿が見えてくる。AIという設定を持ち込んだことによって、現実世界に過剰に引っ張られずに、ゲーム世界と緊張感を持ちながら進んでいった。また、最後にはAI自体が物語の鍵を握ることにもなり、設定が上手く使われていた。ラストもゲーム世界を否定するわけではなく、ほどよく付き合いながら、現実世界を楽しむというスタンスに落ち着いたところも、バランスがよかったと思う。
主演の秋山さんの張りのある美声は本当に舞台向きで、小声になってもしっかりと聞き取れる。「踊りが丘学園」の参子のような屈折した感情や、今作のテンカのような弱さといったマイナスな部分の表現もでき、幅広い演技ができるオールマイティな女優さんだと思う。主役タイプではないような印象も持っていたが、そんな印象を打ち消すだけの存在感を見せていた。
主人公の相手役の北村悠さんの演技を見るのは5年ぶり。翳のあるクールなアクションスターのイメージだったが、最近の写真はソフトな印象になっていて、この舞台でどういう演技を見せてくれるのか楽しみだった。文字通りの優しい電子回路として、テンカやゲームの世界を優しく見守るモーリーの立ち位置。ときにセリフの早回しでお茶目な部分も見せつつ、ほぼ出ずっぱり、喋りどおしでこの舞台を支えていた。最後のダンスシーンの切れ味はさすが。
水月桃子さんは、胸元が開いたセクシーな衣装だけで十分目立つ上に、セリフのないところでの顔芸や動きがいちいち細かい。ここまでは「踊りが丘学園」再びという感じだが、今作では何と悪役として後半に豹変。新たな一面を見せてくれた。悪役としての迫力という点では一歩足りない気はしたが、こういう新たな挑戦は女優としての成長につながるはず。現実世界の大石は・・・やっぱり"death by hanging"でしょうね。来月も、4か月連続で彼女の演技を見る機会がありそうなので楽しみだ。
ネットゲームらしい現実離れしたキャラクターとして登場した、語尾がおかしいキンパチ、ジャモンコンビ。レアアイテムのタマタマを嬉しそうに運んでくる登場シーンから可愛らしい。キンパチ役の北原知奈さんは、普段は声優として活動しているらしく、アニメチックな声ながらしっかりと抑揚のある安定したセリフの回しぶりとモコモコ髪のマスコット的ないでたちで華を添えていた。カーテンコールでは、出演していたっけ・・・と初めて見るような美人の顔があって、消去法でようやくジャモンと分かって驚いてしまった。
終演後は出演者5人が上がってのトークショー。いじられ役の佐藤役の川竹さんを中心に、役者たちが良い雰囲気でこの劇を作り上げてきたことがよく分かる。ホワイトボードに登場人物たちの似顔絵をせっせと描いていったという三浦さんの画力はさすが。ホワイトボードの二頭身キャラたちは、そのままTシャツにでもできるのではないかというくらいの完成度だった。
1週間前くらいに見に行くことを決めた舞台だったが、実際に見てみれば、もう1回くらいは見たかったと思わせる良作だった。
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