~熱風の果て~

観劇の記録

ふらちな侍(気晴らしBOYZ)@あうるすぽっと

【作・演出】田中大祐

【出演】木ノ本嶺浩、原嶋元久、輝山立、恵麻、裕樹、右近良之、平野勲人、石井康太、加藤梨里香、酒井俊介、望月卓哉、青木俊輔、岸田タツヤ、冠仁、町田尚規、たむらがはく、古賀司照、両國宏、錦織純平、錦織聡、渡辺克己
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欲得の前に、実態のない価値に振り回される人間達の欲望を滑稽に描いた喜劇作品。絵に描いたような悪代官と悪徳商人が実は正義のために動いていたというどんでん返し。しかし二人は既に正義の刃に斃れた後の祭り。欲の詰まった壺が渡れば、それにつられて演じられる華やかなる皆殺しに舞う血しぶき。個性的な面々が揃って、ストーリーも練り上げられていたが、人物たちを小分けにしたシーンの数が多く、行きつ戻りつで軽快なテンポに欠けた感があるのは惜しまれるところか。
ハーベストの加藤梨里香さん演じるお鶴は、大人しい女中。若旦那に手籠めにされかけるくらいで、終盤までは見せ場らしいところもなかったが、まさかの豹変ぶりのサディスティック乙女。お凛と並んで、女の怖さを存分に見せつけてくれた。
善の悪徳商人・越後屋役の右近良之さんは、25年前に上演された、内田順子さん主演のミュージカル「ごんぎつね」に出演していた大ベテラン。そういう縁のある役者さんの演技を見られるというだけでも、何となしに嬉しさが湧く。
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ノッキンオンヘブンズきのこ(BOBJACK THEATER×隣のきのこちゃん)@シアターKASSAI

【演出】扇田賢、中野裕理【脚本】守山カオリ、ムラコ

【出演】民本しょうこ、丸山正吾、長谷川太郎、石部雄一、石田将士、門野翔、松木わかは、梅原サエリ、双松桃子、遊佐航、中野裕理、小島ことり、渡壁りさ、蜂巣和紀、宮井洋治、片岡由帆、さいとう雅子、七海とろろ、小林加奈
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2つの劇団・プロジェクトの初コラボ企画として上演された本舞台は、演出・脚本も両者合同での制作。これまで、BOBJACK作品は2つ見たことがあって、今作と登場人物の一部を共有する「ノッキンヘブン」は、一時期、舞台を観ることから離れていた己を、再び演劇の良さに気づかせ、観劇人に引き戻す決定打を与えた、思い入れのある作品でもあるので、楽しみな企画だった。
「隣のきのこちゃん」は名前は聞いたことはあったが、見るのは初めて。きのこちゃんを演じているのはBOBJACK所属の民本さんということで、コラボも自然な流れだったのか。開演前に、「ノッキンヘブン」のものと同時に購入したパンフレットを開くと、いきなり、きのこちゃん役の民本さんのプロフィールやQAがひたすらプロレスの世界になっていてぶっ飛んでいると思ったら、最終ページのポチ役のところで真面目に答えていたのね。
序盤はきのこちゃんパート。長谷川太郎さん演じる「青二才」に対して、殴る蹴る、無茶ぶりで振り回したかと思うと、唐突に始まる音楽と妙にハイテンションでピタリと揃ったダンスが織り込まれる。気が付くときのこちゃんワールドの中に問答無用ですっぽりと埋められてしまっていた。恐るべし・・・。唐突な歌のシーンだけのために様々な衣装を用意していたり、長谷川太郎さんなどは前説のためだけにショッカー衣装を準備するという入念さ。太郎さんのことは、「PLAYROOM」のいかにも神経質な桐野範容役でしか見たことがなかったので、実物もそういう人なのかと勝手に思ってしまっていたが、きのこちゃんでは真逆と言ってもいいくらいのいじられ役。これだけの振れ幅を演じられるのはさすがプロだ。
歌の1番と2番を使って、スピーディにBOBJACKパートにバトンタッチ。こういうところも綺麗だ。ノッキンヘブンのオープニングBGMに、まぁこさん演じる探偵助手による回想的なモノローグと、懐かしい世界観が広がる。みのりちゃんに別の作品で会えるとは思ってもいなかったので、そのおっちょこちょいぶりと猪突猛進ぶりを久しぶりに見ることができて嬉しくなる。ことりさん、はっちさん、宮井さんの劇団員トリオは見た目だけでも存在感が十分なところに、キャラの味付けも濃いとくれば反則級だ。少し不思議なことが起きる中に、登場人物たちの寂しさや温かさをくどさを感じさせずに織り込んでくるところはさすが守山脚本。はちゃめちゃな笑いの中にも、しっかりとしたストーリーの軸を持たせ、ストーリーとして成り立たせていた。二つの空間とそれぞれの場所にいる人物を同時並行的に舞台に登場させて、台詞を重ね合わせる手法は、コラボ企画らしくもあり、ラストに向けてのクライマックス感を高めてもくれた。
二つの世界観の中心に位置するのが、とろろさん演じる月子。月が欠けるように、心に翳を抱えた儚げな役で、ルド女人狼でのパッションあふれる理紬とは全く違う役柄。騒動に巻き込まれる中で少しずつ明るさを取り戻し、自分の力で過去の軛を断ち切る強さも備えていた。ワンピースに身を包んで哀し気な瞳を照明に映し出せば、紛うことなきお嬢様。周りと違うテンションで演じ続けるのは大変だったと想像できるが、エンディングなどでのダンスシーンでは、持ち前のパッションあふれる表情をこれでもかと魅せてくれた。はっちさんの渋めの執事役も貫禄があって様になっていた。
まるまる2時間、汗と涙と唾と血を迸らせながら、身体を張り続ける渾身の作品。プロが稽古を重ねて全力でやるバカほど素直に笑えるものはない。テレビのコントの真似事ではなく、こういう舞台でしかできない笑いを求めていた。ゴールデンウィークに出会えたことに感謝したくなる作品だった。下のような手形色紙を物販で買えるというのも、面白く、ありがたい企画だった。
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LADYBIRD,LADYBIRD(アリーエンターテイメント)@シアターグリーンBIG TREE THEATER

【演出・脚本】早川康介

【出演】葛岡有、安島萌、東将司、堀田勝、平山佳延、迫英雄、吉田天音、玉井萌黄、吉田菜々、リチャーズ恵莉、中村楓菜、舟久保美咲希、今村貴空
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毎年の上演を重ねて6年目となるグリーン・ミュージカル「レディバ」。テントウムシの「アン」の3代目として、ハーベストの葛岡有さんが主演を務めた。虫かごの中のムシたちという舞台設定や、子供たちが多く出演するミュージカルということで、明るく楽しく健全な作品を想像していたら、そんな単純なものではなかった。
大人になること、生き方を決めること、誰かを思うこと、死ぬことのペーソスを、虫たちの姿を借りて、シニカルさも交えて紡ぎ出す。子供向けとか大人向けとかは関係なく、むしろ子供たちが多く見る作品だからこそ、甘い皮で包むようなことをせずに、この世界や人生の本質をまっすぐに伝えようとするような、真摯なつくりの作品だった。いつか、子供たちが人生に悩んだ時に、この作品のことを思い出すときもあるだろう。大人たちにもグサリと刺さるような場面はいくつもあったし、子供たちも集中を切らすことなく、静かに舞台を見ていた。子供たちが演じるムシたちの可愛らしさや華やかさはもちろんのこと、大人たちの確かな実力と稽古に裏打ちされたコミカルな演技や歌の力も大きく、飽きさせることのないつくりだった。ミツバチの4姉妹をはじめ、子役といってもみんな演技力が高い。
葛岡さん演じるアンは、前半はどこまでも素直で無垢な感じで、ハーベストで演じた「鉄のあ」役に近い感じかと思って見ていたが、終盤にはその裏に隠された寂しさや本音の部分まで、演技の幅を見せつつ、歌唱も安定していて、見事に主演を務めあげていた。ハーベストでも、今後もきっと新しい面を見せ続けていってくれることだろう。
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紛れもなく、私が真ん中の日(月刊「根本宗子」)@浅草九劇

【作・演出】根本宗子

【出演】山中志歩、藤松祥子、城川もね、尾崎桃子、高橋紗良、小林寛佳、岡美佑、中山春香、福井夏、大竹沙知、川村瑞樹、近藤笑菜、伊藤香菜、チカナガチサト、森桃子、比嘉ニッコ、安川まり、李そじん、椙山さと美、優美早紀、増澤璃凛子
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最近、やや演劇を観ることへの情熱が薄れていることを感じつつもあったので、劇団ハーベストのメンバーの出演などを縁として、いろいろなジャンルの作品を見てみようと観劇を決めたこの舞台。根本宗子さんの名前は知らなかったが、自らをモデルとしたインパクトのあるフライヤーのビジュアルや自らの名を冠したプロジェクト名に加え、オールナイトニッポンのパーソナリティも務めているという情報からは、その筋ではかなり知られる気鋭の劇作家なのだろうと想像できた。400人を超える応募者から選ばれた21人の女性俳優たちが繰り広げる物語を見るために、池袋から浅草行きのバスに乗ること50分余り、花やしきそばの九劇に初めて足を踏み入れた。
かなりのスピードでチケットが売れていて、行ける日は指定席は完売となっていたので、辛うじて確保できた最前ベンチシートからの観劇。入場して、舞台上に既に出演者と思しき、思い思いの衣装に身を包んだ11人の女性たちが姿を現している。観客に頓着する風もなく、ゲームや会話に興じる人たちを眺めながら開演を待つこと30分、開演時間になるや、そのまま本編になだれ込むという、初めて見る斬新なスタイルには驚かされた。
ある中学生の女の子の誕生日パーティを舞台として、クラスメイトたちの残酷な優しさ、友達思いの身勝手さ、うわべの関心という無関心、真実から逃げる無責任さなどが、同時進行的に容赦なく抉り出されていく。謎めいた存在として舞台に存在した「チャイナばばあ」は、こうした無関心や異端排除の部分を象徴しているかのようだった。
よくありがちなように、感情の爆発で場を収めるようなことはなく、何も解決されないまま、爆発は心を傷つけながら次の爆発を呼び、ついに舞台装置の物理的な破壊に至るまで止むことはない。劇中から10年の時を経たラストシーンでも、一筋縄の解決には導かれなかったが、変わるものと変わらないもの、人間の本質的な思考や行動の複雑さを現した、余韻のある終わり方だった。
多くの登場人物たちが入り乱れ、実際に取っ組み合いもあり、精神力も体力も絞り出して演じられる、熱量の高い舞台はゴールデンウィークを挟んで2週間のロングラン。主演の山ちゃん役の山中さんが一時体調不良で休演して根本さんが代役出演するといった出来事もあったようだが、5月4日には無事に復帰していた。主演の見た目の個性もシナリオに乗せた、オリジナルらしい作品だった。
ハーベストから出演のたかさらさんは、友達思いの言葉と行動が逆にナイフのように相手の心を傷つけてしまうこともある直情的な役。目をいっぱいに見開いて表情も感情も豊かに、恥を捨てて、役として舞台上に生きていた。
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ザ・エレベーターホール(K.B.S.Project)@コフレリオ新宿シアター

【演出・脚本】山口喬司

【出演】山川ひろみ、木本夕貴、栁川瑠衣、山口喬司、森田猛虎、久保早里奈、中野将樹、森大成、白石恭平、工藤優希、近藤麗音、ジョセフ運生、菅ノ又北都、鈴木咲稀、西川諒多、西田有里、メクダシ・カリル
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山口喬司さん主宰のK.B.S.Projectの記念すべき20作目。10年以上にわたってジャンルを問わない作品をつくり続け、劇場で上演し続けるということは並大抵のことではない。作品の質や笑いの要素に関しても心地よく、安心して見ることができる。これまでは20分の4しか見ることができていないが、これからも続いていくという山口さんの挨拶を聞いて安心した。
主演の山川さんも、K.B.S.の第6作から積み重ねたキャリアはちょうど10年。謙虚な姿勢やフレッシュさを失うことなく、確かな演技力を見せる彼女は、もはやK.B.S.の申し子のような存在だ。これまでヒロイン的な準主演ポジションの役を見ることが多かったが、今回は主役で、とにかくよく動き、喋り、感情も表情も変わる。ひとつの作品の中でこれほど様々な面が見られるのは珍しいが、引き出しの多さに感服させられもした。
小劇場のセットとは思えないような精巧なエレベーターの造形の前で、場の転換を一度も行わずに、扉が開いては閉じ、人が乗り込んでは降りと、息つく暇ないスピード感で劇が進行していく。扉が開くタイミングをずらしたり、死角をつくって人物同士をすれ違わせたりと、2台のエレベーターが効果的に使われていた。
森田猛虎さん演じる警備員は、台詞はほとんどないにもかかわらず、動きや表情に味があって、何もないときでも、つい警備員室の方を見たくなってしまう。耄碌しているかのような警備員が、最後にしゃっきりとして大仕事をやってのけるという展開は、意外性と暖かみがあった。ひと世代違う役者と共演するようになったことに感慨深そうな森田さんだったが、中野さんや森田さんのようなベテランの安定感と、二役を演じ分けて貫禄も出てきたジョセフ運生さんのような中堅、さらには若手の役者たちのパワーの融合が、K.B.S.の魅力になっている。今回はそこにメクダシ・カリルさんのような飛び道具も加わり、登場人物一人一人のはっきりとした個性と、役者の個性が融合して、バラエティあふれる舞台空間となっていた。
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