~熱風の果て~

観劇の記録

雨のち晴れ(劇団シアターザロケッツ)@劇場HOPE

【作・演出】荒木太朗

【出演】若宮亮、岡田彩花、濱田和馬、西尾来人、田代竜之介、藤原亜紀乃、宮平もりひろ、天野きょうじ、美鈴響子、田中精
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AKB13期・岡田彩花さんの初舞台を観劇。
この劇の舞台であるラーメン屋を模してセットされたのれんをくぐって階段を下りた先の劇場HOPEは、約70席の小さな劇場。ポケットスクエアには何度も訪れているが、ここには初入場だった。
昔ながらの雰囲気の町のラーメン屋という舞台、「雨のち晴れ」というタイトル、あらすじからは、貧しいながらも健気に生きる兄妹が巻き起こるひと騒動を人情で乗り越えてハッピーエンド・・・という流れが想像していたので、途中からの展開はかなり予想外だった。
前半は店を盛り上げようと手を尽くす、バイトのバンドマンたちによるドタバタが見どころ。汗だくになりながらのエアーバンドは、日本エアギター協会幹事の指導を受けてまで披露されたもので、その力のいれようがパフォーマンスとして実を結んでいた。「エアー湯切り」も、単に笑いが取れればよいというものではない完成度の高さだったからこそ笑えた。格闘シーンも机に足をぶつけることも厭わない本気のぶつかり合いで、作品を作り上げる役者さんの気持ちの強さを感じた。
岡田彩花さん演じる晴美の存在の不思議さは序盤からあって、途中からは、2つの時間軸が交互に描かれているのかと錯覚しそうになったが、その錯覚が解けたときの真実は重たかった。個人的に、その設定は簡単には受け入れられなかったが、若宮亮さん演じる陽介がオカリナを取りに行くシーンに至っては胸が熱くなった。もっとも、サングラスにタオルマントで出てきた姿には、せっかくの感動も水を差されてしまったが、涙を隠すためのサングラスだったと思えば納得できる。
ストーリーを深めるためにも、兄妹で店を切り盛りしたり、一緒にラーメンを食べたりといった、以前の「当たり前の日常」のシーンの描写は欲しかった。そこがあれば、陽介や店員たちが守ろうとしているものや、崩れたものの大きさがより明らかになったのではないかと思う。バンドが解散危機を迎えるとか、お店の危機に合わせて人間関係にもヒビが入って・・・といった悪循環が重なるような展開が絡んでもよかったかなとも思った。
プレッシャーで眠れない夜も過ごしながら本番迎えたという初舞台の岡田彩花さん。彼女にとっては大きな第一歩。演技はまだまだ固い印象も受けたが、涙も見せながら、静かに、確かに感情を表現していた。AKB時代は、内なる感情の豊かさがなかなかストレートに表に出てこないような印象を持っていたので、それが解放されるような、大声で感情を爆発させるような演技も、次は見てみたいと思った。演劇での活躍が目立ってきた13期生の、外の世界での躍進は今後も期待したい。

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