~熱風の果て~

観劇の記録

AKB48(チーム4)「手をつなぎながら」公演@AKB48劇場

【出演】相笠萌岩立沙穂内山奈月梅田綾乃岡田彩花岡田奈々北澤早紀小嶋真子篠崎彩奈高島祐利奈西野未姫橋本耀前田美月峯岸みなみ村山彩希茂木忍
パジャマドライブ千秋楽の知らせと同時に風のようにやって来た、チーム4による「手をつなぎながら」初日公演。初日公演に入るのは、K2「青春ガールズ」、H2「夢を死なせるわけにいかない」、A6「目撃者」の各公演に続き4回目。
「手をつなぎながら」公演は、SKEチームSとHKTチームHの劇場公演DVDで見たことがあるのみで、生で観るのは初めて。13期生が演じてきた「RESET」、「僕の太陽」、「パジャマドライブ」は、いずれもAKB劇場でのオリジナル公演を多数見てきた後だったので、意識せずともオリジナルとの比較の視点が入ってきた。一方、この公演は、己にとってはチーム4のオリジナル公演としてまっさらな気持ちで見ることができるのはむしろ幸せなこと。チーム4のメンバーたちにも、先人たちを意識することなく、オリジナルのつもりでやってほしいと思う。ゆーりんは、DVDを見まくってチームK2の古川さんのことを研究したと言っていたが、真似事にならずに自分の表現を見つけるための材料とするのであれば、それもひとつの方法だろう。
DVDやCDでの印象は、何といっても「Innocence」が突出している。処女喪失という危険なテーマをユーモアに包んで逃がすような真似をせずにストレートにぶつける詞の迫力は圧巻。特にチームSの歌唱力に自信のある3人の歌唱の迫力には圧倒される。DVDではこの曲だけ何十回と再生したのを覚えている。HKT版になると「Innocence」に関しては色気や表現力不足が露になってしまっているが、全体を通せば、テンションの高いアイドル性の高い曲が揃っているセットリストを爽やかに演じているという印象だった。2つの公演DVDを見てみると、「手をつなぎながら」公演は、チームの色が出やすい公演だと感じた。
アイドル性の高い曲が苦手で、暗いか重いか激しい曲を好む己なので、チーム4の最初の演目が「手をつなぎながら」に決まったときには、大きな期待感は抱かなかった。しかし、劇場に入って、メンバーの姿を眼前にし、劇場の音響で耳にすると、非常に現場向きのセットリストだった。アップテンポの曲が多く、振り付けも曲のテンポが求める以上の激しさとなっていることから、よそ見をしているような暇はなく、常にステージ上の出来事に目をひきつけられる。メンバーがコンビで絡み合う場面や、自由に表情をつくる場面も多いというのも、チームの個性が出やすくなっている原因だと思った。こじまこのような「小技師」にとっては特に魅力を出すにはあつらえ向きのセットリストだ。
こじまこ、みきちゃん、なぁちゃんの3人がセンター付近で躍動するのは予想どおり。序盤から顎を大きく振り回すようなみきちゃんの個性全開の表現が見られた。振り付けをなぞるのに精一杯の状態では決して出てこない表現なので、これだけでも充実した状態で初日を迎えられていることが分かって安心した。みきちゃんは、髪が伸びたのと、目元がやや穏やかな印象になったのとで、一時期よりは、まゆゆに似ているという感じではなくなっている。彼女だけの魅力をアピールしていく上では、彼女自身も、ファンにもまゆゆのイメージを意識させない方が得策だと思うので、いい傾向だと思う。
なぁちゃんはシリアスな表情には誰にも負けない自信がある、と高らかに宣言。彼女のこういう有言実行の姿勢は大好きだ。このセットリストでそういう路線の曲はほとんどないので、その発言には少し違和感も覚えたが、「雨のピアニスト」に登場した姿を見て納得。表情や動きの鋭さを武器とするなぁちゃんにとっては、まだこの曲の世界と彼女の表現の間には溝が見られる。ただ、貪欲に研究を続ける彼女のことなので、日を追うごとに間違いなく曲にシンクロしていくことだろう。オーソドックスな表現をするこじまこの両脇で、みきちゃんとなぁちゃんが個性全開の表現を見せるというところが、チーム4の全体曲での分かりやすい強みだ。
「雨のピアニスト」では、なぁちゃんの両脇の岡田ちゃんとゆーりんが素晴らしかった。岡田ちゃんは努力家な一面が禍しているようなところもあって、「パジャマドライブ」公演では力を抜いているように見えてしまうような表現をあえて選択していた感じだったのだが、今日の公演では、全く異なる彼女の姿を見ることができた。「雨のピアニスト」では、もえちゃんが絶賛していたように、年に似合わない女性らしさを前面に押し出し、全体曲では激しいダンスを満面の笑顔を見せながら踊っていた。このままのテンションで行ってくれれば、彼女にも新しい展開が見えてきそうな気がした。
ゆーりんは、「パジャマドライブ」公演の後半から完全に何かを摑んだような印象。腕や指先の動きには品格が感じられ、本当に雨に濡れているようなイメージが彼女に映し出された。「足に自信がある」とうそぶいたMCにしても、何でもいいからまずはやり切ってみることの楽しさを覚えたような自信があふれていた。
この胸のバーコード」は、みぃちゃんをセンターに、さっほーともぎちゃんで平均年齢18歳超のアダルトな雰囲気。さっほーのユニットセンターがお預けとなったことには、胸にちくりと刺さるものも感じてしまう。ただ、ベレー帽フェチの己にとっては、さっほーのベレー帽姿を見ただけでテンションは上がる。チーム4では年上のさっほーの強みである、流れるような腕と身体の軌跡の美しさがこの曲に映える。衣装といえば、序盤の「手をつなぎながら」でのヘソ出し衣装も、彼女のスタイルのよさや肌の白さが際立って見える。「Innocence」で眼光も鋭く腕を振り下ろす表現にも年長メンバーらしさが見えた。高1組が核となっているチーム4は、意外と「Innocence」を歌えるメンバーが多いんだな。
さっほーをユニットセンターで見たい気持ちはあるが、これまでの研究生公演のように、複数ポジションを覚えるのが前提ではなく、与えられたポジションを大事にして、深めて極めていく過程が見たい。公演を成り立たせるためには、研究生の起用だけでは難しいという事情もあるだろうが、しばらくはポジション固定でやっていってほしい。
「チョコの行方」とその後のMCパートは、13期生はゆいりー一人で、あとは14期の3人。ゆいりーが「チョコの行方」のダンスをいち早く習得して先生役になっていたという先輩らしいエピソードも。「純情主義」とはうってかわってのアイドル路線だが、ゆいりーの高速ターンはこの曲でも見ることができるのが嬉しい。MCの面子を見て心配するみっきに、MCを緻密に組み立てようと努力するなっきー、そしてあっけらかんとしたぴっかりん、と個性ばらばらな14期生をゆいりーが危なっかしく引っ張っていくここのMCパートからは、笑いがふんだんに提供されていきそうだ。
忙しなく動き回る振り付けが多いので、しっとりと聴かせる「大好き」や「遠くにいても」のしめやかさが深く心に染みてくる。チームとしての初日を迎えて、目を潤ませるメンバーも多かった。SKEやHKTのDVDを見ていると、だいたいこのセットリストで2番目に好きな「ロープの友情」が終わったところで再生停止してしまうので気が付かなかったが、「火曜日の夜、水曜日の朝」の伴奏のマニアックな激しさにも、劇場で重低音の振動を身体に感じるとテンションが上がっていく。この曲を聴くと、H2の「ハートが風邪をひいた夜」をイメージの近い曲として思い出す。H2は「ハートが風邪をひいた夜」でセットリストを締めくくるという無謀なことをやってしまったが、「手をつなぎながら」公演は、ラストに「遠くにいても」があってよかった。「ロープの友情」は、よくアイドル向けに書けたと思うすごい詞だ。「マンゴーNo.2」とか「ロマンスロケット」とかの発想力も、秋Pの脂の乗り切っていた時期ということなんだろうな。
火曜日の夜、水曜日の朝」の後は、「ハート・エレキ」が挟まる。GSで人差し指でLサイン・・・といえば、ザ・タイガースのジュリーだよなぁ。人差し指すら上がってこないのが今のAKB劇場の客席なので、少々違和感はある。AKBのコンサートでは、さすがにLサインをもらって失神するようなファンはいないだろうね。シングル曲をセットリストの流れの間に挟んでぶった切ってしまうのはやはりいただけない。
ハート・エレキ」の後は、「パジャマドライブ」公演からチーム4誕生までのメンバーの姿を切り取った映像がスクリーンに映し出される。メンバーも裏で見ていたようで、目を赤くして出てくるメンバーも多かった。チーム4コールにも、号泣のさっきーをはじめとして、ほとんどのメンバーが感極まっていた。その片棒を担ぎつつも、涙を流すほどには同情することがなかった己は、これが7年前のチームKだったらどうだったろうか、と心の裡を覗いてみては一抹の寂しさも覚えたのだった。
「遠くにいても」の後は「純情フィロソフィー」。この曲を聴くと、ザ・テンプターズの「純愛」を思い出すので、歌詞だけ見れば、「ハート・エレキ」よりもGSに近く感じる。
初日イベントとして、ハイタッチの代わりに「手のひらサイン会」。さっほーかさっきーか悩みながらも、列の様子なども見て、さっきーから左手に書いてもらってきた。明日が仕事じゃなくてよかった・・・。「ウィンブルドン」で初めてぶりぶりアイドル路線のユニットを演じることに戸惑いも感じているようだったが、公演に関してはオールラウンダーなさっきーだし、MCや外野での積極性も感じられた。
「手をつなぎながら」公演は、劇場に入れれば間違いなく楽しめる公演ということも分かったし、初日にしては大きなミスもなく、値段に見合った質で作り上げてきたチーム4がこれからどう染め上げていくのか、期待が持てる。これまでと比べると入りにくくなるかもしれないが、「ハート・エレキ」後の映像を見て、ひとつのチームの成長を劇場で見守ることの大切さを改めて感じたので、彼女たちの行く末はもうしばらく見ていきたい。