位置について!〜girls start up!〜(劇団ハーベスト)@DDD青山クロスシアター
【脚本】小林佐千絵、【演出】中村公平
【出演】青山美郷、加藤梨里香、山本萌花、松永ミチル、広瀬咲楽、布施日花梨、望月瑠菜、若菜葵、宮武佳央、川畑光瑠、西園瑠花、高橋紗良、久保田紗友、オカドミキ、吉村京太、冠仁、楠世蓮
本公演としては、昨年夏休み以来の第3回目となる、劇団ハーベストの公演。高校受験組も戻って全員集合となったものの、やはり受験で思うように稽古時間は取れなかった様子。しかし、そこはこれまでの積み上げと高い意識で十分にカバーできていた。
明確な主役を置かず、単純明快なストーリーもなく、それぞれが行動の本当の意味を見失っていたり、心にもやもやを抱えていたり。それらが絡み合うことによって逆に、一人ひとりが抱えていたもやもやが徐々にほつれていく。劇的な展開とは無縁の、地味ながらも心の繊細な動きに迫る、劇団らしい脚本だった。
当初の、オーディション型劇団のコンセプトは、久保田さんのドラマ主演をもって、一応の結実を見たのかもしれないが、このプロジェクトは2年目も継続が決定し、メンバー固定の中期的な育成プロジェクトへと変貌しつつある。そのコンセプトと作品がマッチしているというところも、彼女たちの成長の助けになっているだろう。
パンフレットのインタビューを見ると、皆、演技に対する意識が高い。そして、自分の個性や他のメンバーの個性を観察し、冷静に分析する力を持っている。「主役にならなくてもいい」と言い切れる高橋さんのような人が出てくるのも心強い。
個人としての活動も増えつつあるハーベスト。電車のモニターをぼんやり見ていて、似ている人が出ていると思ったら、実際に青山さんが店員役でファストフードのCMが流れていたりする。個人活動が忙しくなってスケジュールの都合がつかなくなったときが、この劇団の終焉としては理想の形になる。
軽音部員たちという設定もあるので、舞台上では、加藤梨里香(Vo)、松永ミチル(G)、山本萌花(B)、望月瑠菜(Key)、広瀬咲楽(Dr)の5人による生演奏、生歌も披露された。劇中歌ということを忘れて聴き入ってしまう力強さがあった。CDデビューしてアイドル化ということはないだろうが、機会があればまた彼女たちの演奏を聴いてみたい。
どういう形でも、意識の高い女の子たちが本気でぶつかって、やり切る姿を目の前にすると清々しい気分になる。