~熱風の果て~

観劇の記録

楽園の女王(ILLUMINUS)@シアターモリエール

【脚本・演出】吉田武寛

【出演】相笠萌、岡田彩花、栗生みな、千歳ゆう、星守紗凪、椎名香奈江、丸瀬こはる、倉沢しえり、植野祐美、日下部美愛、真田真帆、西村美咲、平原ゆか、楓菜々、神野紗英子、田中亜美、徳岡明
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1月に上演された「赤の女王」が持つ世界観、色彩が好きだったので、続編制作決定と聞いたときから楽しみにしていた。作品への期待が高く、今回は早めに席を確保して、2日間観劇することにした。
若さを保ち続けるリリィ、エリザベート、アメリア、そして悪魔の4人はキャスティングも同じく、再登場。そして、その他の人物の中にも、前作の生まれ変わりと明示される人物や、はっきりと示されないまでも前作の香りを漂わせる人物たちが登場して、40年後という舞台設定にもかかわらず、前作とのつながりも随所に見られた。
前作の主人公であるエルの生まれ変わりとされる、相笠萌さん演じるメアリーは、純粋な少女かと思わせた後の、内に抱えた闇や心の壊れ具合のギャップが恐ろしかった。相笠萌さんの、やや無機質なビジュアルと演じ方は、終演後に振り返ってみれば、その両面を上手く表現していたことに気づく。
アフタートークでは、岡田彩花さんと、二人の普段のキャラと演じたキャラの組み合わせが逆だと話していたが、それが舞台で演じることの醍醐味でもある。卒業して別々の道を歩む同期生がこうして同じ舞台に立つ姿を見ることができるというのも感慨深いものだった。いわゆるアンサンブルのサーヴァントのキャストたちも同等にアフタートークに参加するというのは珍しいのではないかと思うが、こういうところにも制作陣の姿勢のようなものが見える。
前作からの40年間の出来事は詳しく語られることがなかったが、最大の謎は、不死身だったはずのエルがどういう経緯でこの世を去ったのかということ。爆発で粉々になっても再生するという設定まで出てきて、ますます謎は深まるが、年末に上演が決まった続編で明かされるのだろうか。個人的には、「リリィ」と言えば、アサルトリリィシリーズを思い出すので、そちらでメインキャストを演じている星守紗凪さんの出演には縁を感じる。可憐なビジュアルとのギャップを最大限に生かした、アンの潔いほどの狂気に星守さんの演技に新たな境地を見た。前作で強烈なインパクトを残したワルツを踊りながらの斬殺シーンの犠牲者となってしまったが、前作のヒルダと違って、アンの場合は完全な自業自得なので、自慢の顔を斬られるというおまけまで付いて、ある意味では爽快なシーンでもあった。しかし、果物を重しにして海に沈めても、腐れば浮き上がってくるようにも思うのだが、肺に水が入っていれば浮かぶことはないということなのか、はたまた続編でアンが再登場するということもあり得る・・・?
続編でも小綺麗にまとめないインモラルな世界観と複雑な人間模様を堪能でき、ますますパワーアップしたエリザベート様など前作のキャラや魂を受け継ぐキャラに再び会えたのも嬉しかった。一方では、リリィ、エリザベート、アメリア、悪魔の前作組の力は余りにも強大でありすぎた感はあった。リリィと悪魔なんかは宿敵と言うよりも、何となく腐れ縁のような気安さまで感じられ、この4人の関係性に進展が見られなかったのは、やや物足りなかった。アドリブも自在にふざけるエリザベート様は愛すべきキャラクターで、ため息をつくシーンに悩みが感じられもしたが、輪廻転生の輪からも、食物連鎖の循環からも逸脱した存在である彼女たちが、真の幸福や安寧、はたまた終焉にたどり着く日はまだまだ遠そうだ。
もう一つ、椎名さん演じたフィオナの裁判を通しての回想という形式を取った点は、人によって評価が分かれるところか。舞台で演じられるよりも先に一部の核心が明かされるという点では先を読む楽しみが奪われるように感じ、また、回想と事実との齟齬に、人間の業の深さが暴かれるという点では単なる回想ではなく、そこもまた物語の一部を成すという深みを感じた。ルイーズ社長が前作で西村さんが演じたタピカの生まれ変わりだとすれば、フィオナは妹のジェシカの生まれ変わりなのかとも思ってしまうが、前作のジェシカは最後は改心していたと信じたい。
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