~熱風の果て~

観劇の記録

スナップ・アウェイ(ZERO BEAT.)@テアトルBONBON

【演出・脚本】西永貴文

【出演】北澤早紀、岡田彩花、松波優輝、永田彬、江崎香澄、結城駿、緑川良介、安孫子聖奈、中條孝紀、山岸拓生、鍋嶋圭一、川畑早紀、井関友香、秋月栄志、島本修彰、市瀬瑠夏
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AKBの内と外、活動の場を分けた13期の北澤早紀さんと、岡田彩花さんが、W主演のような位置づけで再会を果たした本舞台。
昨年9月の初舞台「雨のち晴れ」のときには、まだまだ不安な演技を見せていた岡田彩花さん。それから1年少し、舞台出演を精力的にこなしてきた彼女は大きく成長していた。編集部の変わった同僚たちに巻き込まれて参るような表情から、顔の筋肉をいっぱいに使うような感じで、複雑な感情の起伏もしっかりと表現できていた。AKB時代から見たいと思ってもなかなか見ることができなかった、彼女の感情表現の解放。久しぶりに見た岡田彩花さんの変貌ぶりを見ることができたのは大きな収穫だった。
北澤早紀さんは、メガネをかけた編集者役。普通の会社員役は初めてのはずだが、違和感は全くない。落ち着きと、内に秘めた信念と熱さ。彼女自身にも重なるところがある「クマ」役だった。イケイケタイプが好みとか、ヒョウ柄の・・・とかは違うと思いたいけど。北澤早紀さんの舞台出演も、この1年半で6作品と、かなりのハイペース。舞台に呼ばれ続けるというのは、決してAKBメンバーとしての集客力だけを買われているわけではないことは、彼女の演技への対応力を見れば分かる。カーテンコールのコメントも、自分のことを差し置いて周りの人を立てるという「100点満点」のものだった。
演技面での成長が著しい岡田彩花さんと北澤早紀さんだったが、舞台での発声という面では、まだまだ舞台役者を専業とする人たちには及ばない。成長の余地があるということは、これからが楽しみということでもある。カーテンコールで2人で並んで、こそこそを打合せをして、それが上手くいかずに内輪もめをする、そんな姿もどこか懐かしく、微笑ましかった。
コメディと案内されていたので、ドタバタするだけの舞台を見せられるのはちょっと嫌だなと不安も感じていた「スナップ・アウェイ」。実際に見てみたところ、あえてジャンル分けするなら「コメディ」なのかもしれないが、サスペンス的な要素や繊細な感情の表現、感動もあるしっかりしたつくりで、ストーリーもよく練り込まれていた。2つの編集部を行き来しながら進むテンポ感も軽快で、2時間の上演時間中、まったく飽きさせるところがなかった。2つの雑誌の編集長を演じた中條さんと山岸さんの二人は、舞台の重み、軽みを自在にコントロールするような感じの、要石のような存在になっていた。
完成度の高い作品だったが、気になった部分もある。ストーリーの中心的な設定である「週刊誌で部数対決」自体が印刷や流通のことを考えれば非現実的だったり、犯行時は未成年のはずなのに実名報道されてしまうところだったり。そもそも霊が降臨するような世界観なのだから、そんな細かいところに目くじらを立てるのは野暮という考え方もあるだろうが、超現実的な設定であるほど、世界観と関わりのない基本的な設定の粗はないにこしたことはない、と思う。日大ネタはそこそこ受けてはいたが、今のタイミングでそれに乗っかるのは安易な感じもした。
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