~熱風の果て~

観劇の記録

Pirates of the Desert(Ann&Mary)@池袋シアターグリーン BIG TREE THEATER

【演出】小川信太郎、【脚本】川手ふきの

【出演】田中絵里花フォンチー倉田瑠夏齊藤夢愛梅本静香佐藤秀樹、上田郁代、望月龍平、山口篤司、本倉さつき、浅川クミ、沢辺りおん、時乃真央、メイリ、アヤ、白崎ほのか、階戸瑠李、竹見采華、綾乃彩吉用由美、小松詩乃、長島実咲、椎名えるな、近藤真行、籠谷和樹、矢野秀実、仁藤みさき、小川信太郎
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先週の「戦国降臨ガールズ」で受け取ったビラで上演を知ったこの舞台。ビラからビラへ、興味のある舞台がつながる流れが途切れた今年の前半は、あまり観劇に向かう機会がなかったが、ここに来て再び流れが地表へと現れつつある。劇団BOOGIE★WOOGIEのスタッフが関わったアイドル系舞台といえば、シアターグリーンのBASE THEATERで上演された、昨年の「ハムレッツ!」が思い出される。キャスト陣は、他の舞台で印象に残っている面々が多い。
いろいろと複雑怪奇なことが起きるアイドルの世界。坂本りおんさんは、この舞台の直前に本名から「沢辺りおん」に改名。どういうことかとブログを見たら、面倒くさいからブログでは言わないとか書いてあって、思わず目を疑ってしまった。
アフィリアの一員として活動していたメイリは、体調不良という名目で労われる様子もなくひっそりと卒業していたという恐ろしさ。部外者には真相は分からないが、こういう舞台への出演もグループに所属していてはなかなか難しかったと思うので、何とか頑張ってほしいもの。
長島実咲さんも、一時期バックステージパスで働いたかと思えばサラから契約解除されていて、いつの間にかエヴォルト所属に納まっている。ともやんぬコンビの後を受けて、梅本さんと長島さんがパーソナリティを務める「アイコレ」は、まだ続いているようだ。今作のキャスティングに関わっているエヴォルトだが、乃下さんは既に辞めて「VIC:CESS」に専念しているようだし、「VIC:CESS」自体、メンバーの増員や男性メンバーの加入など、TIFに出演していた頃からはだいぶ路線転換しているようだ。
主演だけがダブルキャストということで、日程後半は初舞台という田中さんが演じていた。アイドル中心とはいえ舞台経験のある人たちや劇団員に囲まれて、中規模の劇場で主役を務めるのは、少し荷が重かったかというのが率直な感想になってしまう。自分のセリフだけでいっぱいになってしまい、周りとペースを合わせて雰囲気をつくり上げるというところまで達してはいなかった。しかし、全力で演じている様子は全編から伝わってきたので、初々しさを快く感じることはできた。
戦いの中で誰も命を落とすことなく、和をもって大団円。千秋楽のカーテンコールがなかなか止まらなかったのは、ハッピーエンドと呼べるストーリーだったからというのもあるだろう。どちらかといえば破滅、悲劇を好む己ではあるが、メインキャストの大半が討ち死にした「戦国降臨ガールズ」に加え、大河ドラマ「八重の桜」では西郷一族に白虎隊に娘子軍と重たいシーンをこれでもかと見せられたものだから、誰も死なずに誰も悪役にならないような舞台を心のどこかで渇望していたのかもしれない。
池袋での「戦国降臨」で信長を演じた階戸さんは、六行会での続編ではなく、こちらの舞台に出演。剣の腕を存分に披露するような役ではなかったのが残念だったが、顔を見られただけでもよかった。齊藤夢愛さんは、「アリスイン」の紅島さんに近い直情的な役。女性らしさあふれる演技もできる彼女だが、やはり本領はこっちの路線か。梅本さんは「アイコレ」に初登場した頃からすれば別人のように色っぽく変身していて、誰だか分からなかった。女性のこの時期の1年半は変身を遂げるに十分な時間だ。綾乃さんは黒髪にして髪を結っていたからか、逆に若くなった印象。海賊に斬られてご臨終かと冷やりとしたが、鰹節製の剣というオチだった。日替わりゲストは初舞台の仁藤さん。心根の強さと思うようにならない身体の葛藤を、品のある佇まいで演じていた。声量は足りなかったが、どこかでまた演じている姿を見てみたいと思わされた。
様々なネタやアドリブが仕込まれ、千秋楽ならではのお祭り的な要素もある中で舞台が進んでいった。中でも、演出家の小川さんが女海賊に扮して腹出しで舞台に登場し、女性陣から手ひどく扱われるシーンのインパクトは強烈だった。これだけ頑張って恥をかいて盛り上げておいて、賞賛を集めることもできたであろうカーテンコールには出てこないという奥ゆかしさが微笑ましかった。
(以下あらすじ)
砂漠化した世界に僅かに残された水とオアシス。しかし、砂漠には人間をも喰らう巨大昆虫「バグ」やならず者の海賊たちが跋扈していた。砂漠の中に、虐げられた運命から逃れ、ひっそりと暮らす女性だけのコロニーがあった。ある日、赤子を連れたファラーシャ(上田)という女性がコロニーに現れる。赤子はラナー(田中)と名付けられ、長であるアミーラ(本倉)の子として育てられ、ファラーシャは教育係としてコロニーにとどまることになった。やがて時は流れ、ラナーが成人を迎えようとするある日、オアシスを手に入れるために密かに外に出撃したザンバク(アヤ)たちは、巨大なバグに襲われたところを海賊ジャバード(佐藤)たちに助けられる。招かれざる客である海賊たちはコロニーで乱痴気騒ぎを繰り広げる。その中で、ジャバードは、かつて自分を騙して牢獄送りにした女海賊・アザリンワルドがファラーシャとしてコロニーにいることを発見し、彼女を殺す機会を窺っていた。一方、ラナーと同じくアミーラの養女であるカーラ(仁藤)を奉じるグループは宴の席で海賊たちを撃滅することを謀る。また、ラナー、ビゼル(フォンチー)たち5人は、海賊に媚を売り、一緒に旅立ったところで彼らを殺して船を乗っ取ることを企んでいた。しかし、ビゼルは海賊団の中に生き別れとなった兄であるラシード(山口)がいることを知り、煩悶する。そして迎えたラナーの成人の祝宴の日。先手を打った海賊団と女たちとの戦闘が始まる。船を賭けてジャバードに決闘を挑むラナー。女たちを追い詰めるジャバードに立ちはだかったのはラシードだった。四面楚歌となり、負けを認めたジャバードは船をラナーに与える。こうして、ラナーたちは遥かな海を目指し、コロニーから旅立っていくのだった。