~熱風の果て~

観劇の記録

煌星★天女(演劇集団WHATCOLOR)@シアターグリーンBIG TREE THEATER

【脚本】藤本浩多郎、【演出】小野寺誠

【出演】フォンチー浦えりか、大高雄一郎、山内克也、笑門福、本東地勝、真瀬京子、井上阿弥、今西哲也、神田英樹、内山陽平、長野耕士、藤野ひみ、岩田有民、宮内洋、伊井悠里、阿部佳美、伊藤蘭、松居摩耶、三宅まるみ、八筬啓子、吉野菜々子、神宮寺しし丸
シアターグリーンの右の扉をはじめてくぐり、BIG TREE THEATERへ。3劇場の中では最も劇場らしく、ここがメインシアターのようだった。
構成・脚本が三年物語の藤本氏なので間違いはないだろうと思っていたものの、今回は全くの期待はずれ。一本の糸を手繰るようなストーリーがなぞられるだけで、緯糸の絡まりがほとんどなく、結果としてストーリーに広がりがなかった。一本の経糸にしても目新しさのないハッピーエンドであり、魂の震えを感じることができなかった。殺陣も迫力に欠けたし、ストロングポイントが見つからない作品だった。

てんいちっ(K.B.S.Project)@高田馬場ラビネスト

【作・演出】山口喬司

【出演】遊佐航、山川ひろみ、古屋太朗、佐野江ゆっか、森田猛虎、臼井章悟、小曽根章央、佐藤夕夏、山口喬司、中野将樹、山田美緒、鴎佐和志孝、IKAZO
ここのところ完全に演劇漬け。4時間の超大作「ロボット」を2回観劇した上に、K.B.S.の前作「おくられびと」のDVDまで見た。前作も十分おもしろいが、映像と生というハンデを差し引いても、「てんいちっ」の方がより笑いを誘う作品となっている。
約10日にわたるプチロングラン公演「てんいちっ」。怪我人が出てもおかしくない激しい舞台だったが、無事に千秋楽を迎えた。観劇3回目ともなれば、笑いどころやネタは分かってしまっていて余り楽しめないかもしれないと思いながらの幕開けだったが、はじまってみれば千秋楽ならではのアドリブ連発や、森田さん演じるラゴラの「○○拳」実演ネタや、古屋さんのモノマネ、中野さんの仏像モノマネなど、芸達者や役者さんたちが送るエンターテイメントを前にしては、笑うしかなかった。千秋楽は身体もさらに張る。女性陣はいつもより多く蹴りを決め、遊佐くんは余計に叩かれ、最後は中野さんと唇コンタクトで片想いFinally。見た目が僧なだけでなく、仏像にも造詣の深い中野さんおそるべし。
山田美緒たんのリクエスト「ブタ拳」に、鞭で女王様に叩かれて悦に入る男を表現する森田さん。その姿にポカンとしていた美緒たんが意味を解していなくてホッとした。やっぱり22歳には見えないなぁ。その美緒たんから「赤ちゃん」と称されてしまう山川ひろみたんは偉大だ。

ワンダース★インベーダー(劇団ジャイアント・キリング)@シアターグリーンBASE THEATER

【脚本】仁瀬由深、【演出】纐纈大輔

【出演】小川達也、関田剛志、渋谷優史、村上健一、加藤コージ、菅原雪、赤松唯斉藤麻衣子、阿部悠磨、中島希望、鈴木澄子、鈴木桜花、清河寛、早野由香、村門聡、村澤舞、西嶋たもつ、こんどうひろこ
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前作「もんぞもんぞ」に続いてのジャイキリ公演。前作と同じく鄙びた田舎が舞台であり、土俗的な香りが漂う。それに似合わない主人公のゲーマー軍団。その設定自体は非常に面白いのだが、おそらく脚本家さんがヲタではないのだろう、劇中でヲタ属性が笑いに転化することがほとんどなかった。劇中でゲーマーという設定が余り関係なくなっていったのも仕方ないか。
一方で飛び道具に頼らずに会話や心の動きの中から正攻法で説得力を持たせる脚本は地に足が着いている。キャラクター的には、ゲーマー側より村人側の方が自由に、活き活きと描かれていた。この作品は、スリルコメディーと銘打たれながら、単なるコメディーではないし、おそらくこの劇団の性質としては、単なるコメディーはやろうとしてもそうならないだろう。いなくなって誰が・・・というくだりは重いが、腐ったアスパラガスの例えは上手いとは思えなかった。
前作で小悪魔なもんぞもん・ココロを演じていた赤松唯たんは年齢詐称設定の「まゆねこ」役。詐称はしていないが、年齢を感じさせないアイドルぶりを見せる彼女には相応しい設定と言える。菅原雪たん演じる「ぽち」ともども下ネタ担当でもあったので、キャラクター的には、劇団はんなりふるぼっこ所属の斉藤麻衣子さんが演じた「カカシ」のクールなキャラの方が好み。初体験で鮪してたら案山子と呼ばれって・・・うーん。

ロボット(劇団三年物語)@シアターサンモール

【作・演出】藤本浩多郎

【出演】馬渡直子、南雲亜由美、小名木美里、北村悠、岩永大生、三宅ひとみ、東佑樹、栗城宇宙、中津留明子、佐藤有、菅原千聖、羽鳥健一、高橋里英、染川重樹、桜舞、廣瀬直也、二之宮亜弥、速水剛、すずき・寅・けんた、小林ゆか、吉田一義、関沢明日香、斉藤優紀、関口あきら、斎藤むつみ、川守田政人、モリタモリオ
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劇団三年物語シーズン2の第10作にして3年間の活動の最後を飾る解散公演。この劇団の作品は前作の「御伽草子」からしか見ていないので、個人的には解散は早すぎるという思いはあるが、期間限定とのコンセプトを潔しと思えば何ぞ惜しまん。
過去の演目で最も支持を受けたという理由もあって最終公演の演目に選ばれた「ロボット」は、休憩を挟んで上演時間が4時間にも及ぶという超大作。登場人物が全て出揃うのは午後10時にもなろうという遅さ。ロボットアニメへのオマージュとパロディが含まれるとのことではあるが、ロボットものやヒーローものとは無縁に育った己にとっては消化不能な部分。もちろん消化せずとも十分に楽しめるように作られているが、全てを堪能できなかったであろうことへのもどかしさは残る。宇宙の脅威となった人類を滅亡させるべく攻撃する宇宙の免疫システム・・・この舞台の設定は、数年前にネットを介して見たことがある「ザンボット」にも近い。仲間を救うために自爆を選ぶ・・・というのも。
長大なストーリーでも間延びはない。次々と増えていく登場人物や戦闘ロボットたちも個性がはっきりとしていたので、見ていて、彩り豊かに絡み合う糸を真っ直ぐに手繰り寄せるような心地よさがあった。役自体の個性、それをさらに鮮やかに浮き出させる役者の個性。前作で舞台に立っていた役者も裏方となってひとつの作品をつくり上げる。三年物語はプロの演劇集団の真髄を見せてくれる。
敵である宇宙生物が実際に姿を舞台上に現すことがないので、戦闘は主に得物を振り回して空を切ることで演じられるので迫力は前作に劣った部分はあるが、段差のある広い舞台を立体的に使うことで離れた空間を同時に現出したり、また、舞台内外と段の上下を演者がスピーディーに移動することで十分に緊張感が表現されていた。
看板女優の馬渡さんのことは、三年物語以外にも昨年からいろいろなところで目にしているが、その存在感はどこへ行っても圧倒的。見た目ちょっと怖いし貫禄ある演技もできるけど、基本お茶目で可愛らしいというところが非常に奥深い魅力を構成している。中枢ロボットの無限の大宇宙にも匹敵する愛を見せてくれた。
なお想像する部分を残すのが、早乙女博士がロボットたちに自我を与えた意図。馬渡さん演じるミライに自我を与えるために、彼女と接続して睡眠をとる戦闘ロボットたちにも自我を与えたのかとも思ったが、実際にミライが人類を守ろうと行動を起こしたときの博士の様子からは、己の想像は外れたようにも思える。また、ラストシーンで宇宙の彼方で寂しさに襲われたミライはいつか光子に会おうと地球に戻ってくることがあるだろうか。さらに、免疫システムを封じられた宇宙の運命・・・。単純にハッピーエンドとすることには躊躇を覚えるが、そのくらいの余地を残しておく方が親切な脚本と言えるだろう。

鏡に映らない女 記憶に残らない男(企画演劇集団ボクラ団義)@SPACE107

【作・演出】久保田唱

【出演】桜田聖子、沖野晃司、真凛、塩崎こうせい、酒井瞳、竹石悟朗、齋藤彩夏大神拓哉、大野清志、竹花久美、春原優子、結束友哉、添田翔太、平山空、高橋雄一山田健太郎、糸永徹、野中美智子、福田智行、内田智太、福丸彩乃、中村宜広、大音文子
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昨年末のアリスインの舞台「ハイスクールミレニアム」で興味を持ったボクラ団義の公演を観劇。前説で登場した演出・脚本の久保田氏は想像以上に若い。「ハイスクールミレニアム」には、ボクラ団義団員の平山さんが出演していて、アイドルの中に混じると浮いて見えたものだが、今回の舞台では若い女性役でしっかり馴染んでいた。
主要登場人物の多くが舞台上の時の経過とともに役者が入れ替わることで、真実を容易には白日に曝さないので、常に情報を整理しながら見ることになり、自然とストーリーに惹きこまれた。
己の場合、サスペンスもの、推理ものには、小説でも演劇でも馴染んでいないので、誰が犯人なのか推理しながら、という見方はできない。結局どんな結末でも、はあそうですかと受け入れることになってしまう。この舞台は、所属劇団員にゲストを加えた大所帯の登場人物たちを破綻させずに緻密な構成力で整理しており、役者の演技力にも何の不安もない。完成度の高い舞台なのは間違いないが、終演後に心に残るものが少ない。なぜというに、己が舞台観劇に求めているものは、完成度ではなく、心を揺さぶる人間や人外の生き様だからだ。それと頑張る女の子。
先月末に続いてその姿を舞台に見ることとなったアイドリング酒井さんはアイドル女子高生役。ソロ歌唱もあったけど、アイドリングでは歌唱担当ではないのかな。スタイル良いし、凛とした顔立ちだし、喋らないか演じていれば絵に描いたような芸能人だ。担任教師が彼女のヲタという設定なのだが、いまどきバンダナにリュックとか、好きなアイドルを「たん」付けで呼ぶとか、設定が古典的すぎるでしょう。