~熱風の果て~

観劇の記録

「最終ベルが鳴る」公演@AKB48劇場

【出演】阿部マリア岩立沙穂内田眞由美北原里英倉持明日香小林香菜小林茉里奈鈴木紫帆里近野莉菜中田ちさと野澤玲奈平田梨奈藤田奈那前田亜美宮崎美穂武藤十夢後藤萌咲下口ひなな
千秋楽まで残すこと2公演というタイミングで急告があった、さっほーのチームKへの代役出演。チーム4の解散も近いということもあって、多少の迷いはあったが、最初で最後の雄姿を見られるものならば現場で見たいという思いが勝り、そして叶えられた。
「最終ベルが鳴る」公演を劇場で見るのは、2009年1月4日以来、5年3か月ぶり。オリジナルの当時を振り返れば、K3までの、客席と一緒に盛り上がる路線からの転換を前に、初見時にはとっつきにくさが先に来た公演だった。しかし、個人のパフォーマンスと複雑なフォーメーションを両立しなければ成り立たないようなハイレベルなセットリストの魅力に次第に虜にされたのを覚えている。AKBのチーム公演の金字塔がそこにはあった。久しぶりに劇場で見ても、セットリスト自体の力を再認識した。特に全体曲は、「マンモス」から「支え」まで一瞬の無駄もない。序盤4曲、中盤4曲、アンコール3曲は、単体としても良曲ぞろいだし、それぞれのつながり、流れ、コントラストが素晴らしい。
さっほーは、かつてのともーみポジでの出演。自己紹介で、ちぃちゃんに「可愛がってあげる」と言われていたので、これはあるかと期待していたら、そのとおり「おしめし」にも出演。のっけから怯えたような俯きがちな眼差しで妖しさを掻き立てる。相手がちぃちゃんなので、まだボディタッチは控えめ。これがもし相手がめーたんだったらどんなことをされていただろうかと、さっほーの唇は守られたと胸を撫で下ろしつつも別の期待もしていた自分に気づく。見せ場である「お姉ちゃまー!」はさすがに恥じらいが出てしまったのか、声の伸びが中途半端になってしまっていた。
はじめて生で見たと、周囲のKメンから感嘆の声が挙がったさっほーの発声練習。憧れの妹キャラになって、先輩に可愛がられる姿が新鮮でいとおしい。チーム4残留によって閉ざされた、さっほーのもう一つの道を覗き見したような気分だった。もっちぃ、しほりん、とむさんと、普段から親交の深いメンバーが共演していたというのも、さっほーにとっては幸いだった。MCでもきちんとしほりんから振ってもらえたし。これまでの出演公演では見たことがないような表情も多かった今日のさっほー。1回限りの出演は勿体ないことこの上ないが、彼女にとって貴重な経験になったことは間違いない。
さっほーと同じく、最初で最後のアンダー出演を果たしたのが、まりんちゃん。写真会や握手会でも会いに行っていたが、劇場公演ではやっと4回目。大学生になって、大人っぽくなったと言われることも増えたと語っていた。独特の波長を持った声は相変わらずで、スピーカーごしでも、耳元で囁かれているようなくすぐったさと心地よさを感じる。ユニット出演がなく、MCでは所在なさ気なところがありつつも、激しい曲が多いK4にあっても笑顔でいることが多いのが彼女らしかった。
普段、チーム4の公演しか見ていないと気付くこともなかったが、千秋楽を前に、最終公演を迎えることになるチームメンバーが出てきてしまうというのが、今のチーム制度。みゃおと野澤さんは、千秋楽の舞台に立つことはない。MCでは相変わらずの奔放さを見せていたみゃおだったが、「支え」前で指名されての挨拶は立派だった。今日の公演をまとめ上げていたもっちぃも、複雑な思いを包み隠さず、涙を見せながら本音で語ってくれた。そして「支え」で号泣するひらりー。組閣と称するものを経て、チームと呼ばれるものがどれだけ軽く扱われようとも、メンバーの心が同じ方向を向けば、チームはやはりチームたり得るのだと思えた。さっほーの出演というきっかけがあって、今日のような特別な公演を目の当たりにできたことは、己にとっても思いがけない収穫だった。
K4当時、もっちぃと共にチームメンバーだったもう一人が、香菜。「同期は私以外みんな売れっ子」という自虐的キャッチフレーズで失笑を買っていたが、パフォーマンスを見れば、展望が見えない中でも、劇場公演に対する彼女の心はまだ折れてはいないということが分かって安心した。ユニットは相変わらず「隊長」なのか。19人姉妹と名を替えたバージョンは初めて見た。人数が増えて、今日は裏方のパネル操作が追いついていなかった。ちかりなが「過去の栄光」と披露した「いいとも」での中居くんのモノマネ、懐かしい。あの頃のAKBには、まだどこにスポットライトが当たるか予測不能な部分が残っていた。
ドラフトで採用された中学生になりたてコンビは、自己紹介MCとユニット1曲目のみの出演。ユニット曲の「狼とプライド」という曲は初めて聴いたが、狼と赤頭巾を折衷した衣装が彼女たちの幼さ、無邪気さに恐ろしいくらいに似合う。脚は細いし、マスコット感がすごい。どこに行っても愛されるだろうな。
この曲の後で「初恋泥棒」も演じられるというのはどうなのかと思ったが、ひらりーは意外と似合っていた。きたりえも21歳になって自分では疲れに年齢を感じると言っていたが、見た目はデビュー当時とどこか変わったところがあるのか分からないくらいなので、それほど違和感はなかった。「リターンマッチ」や「ごめんねジュエル」は、しほりんを中心に、大人の魅力が出ていて、むしろK4当時よりも、曲の世界観とビジュアル面の違和感が小さく感じた。
2年以上劇場で顔を見ていなかったメンバーが多いので、ハイタッチでも覚えられてはいないだろうと高をくくっていたら、うっちーからは激しく反応があった。置手紙も残さずに家を出て行ったような感覚に似た後ろめたさもあったので、覚えてくれているというだけでも嬉しいものだ。

反重力ガール(劇団ハーベスト)@SPACE107

【脚本】田中大祐、【演出】中村公平

【出演】加藤梨里香山本萌花松永ミチル布施日花梨広瀬咲楽青山美郷望月瑠菜久保田紗友宮武佳央高橋紗良、弓木菜生、川畑光瑠、鈴木悠巴、ROLLY、錦織純平、鈴木優介、濱田龍司、茂木淳一、楠世蓮、大森謙治、徳光和夫
劇団ハーベストの第5回本公演。地方組や受験生もいる中で、多少のメンバーの卒業・加入を経たハーベストは、ウッディシアターでの旗揚げ公演から、ちょうど2年。定期的に公演を打ち続け、演劇のプロである共演者から「化け物集団」という賛辞を受けるまでになった。
1年前の「位置について!」と同様のバンドもので、共演のROLLY氏をメンバーに加えての生演奏が行われ、会場は盛り上がった。ROLLYと聞いてもピンと来ないが、「ローリー寺西」といえば懐かしい名前だ。高橋さんは、バンギャっぽく、今回も濃いメイクなのがちょっと残念。久保田さんと宮武さんの年少組も大人びてきていて、冒頭では誰が演じているのか判別できないくらいだった。正統派女優の青山さんのコミカルな演技はやり切っている感じが素晴らしい。今回は、宮武さんが関西弁キャラだったが、青山さんの本場の関西弁キャラも見てみたい。望月さんは、今回も少し不思議ちゃんが入ったキャラクター。彼女のショートカットはよく似合う。見るからに柔らかそうなほっぺたは芸術的ですらあり、その頬がくしゃっと緩む瞬間が見たくて、彼女が舞台にいると注目せずにはいられない。

「ハート・エレキ」発売記念大握手会

第4日(2/22)

岩立沙穂北澤早紀岩立沙穂北澤早紀北澤早紀北澤早紀岩立沙穂
すくなくとも半年後までは握手会会場となることはない幕張メッセに、これが最後かと少し感傷的な気分になるのは、明後日を迎える気の重さもあるだろうか。
白いイメージのさっほーは、珍しく黒い衣装に、みきちゃんにやってもらったという編み込み。発表当日から既に気持ちを切り替えているさっほーのことは、心配していない。今日も「なるようになりますよ」と、さっぱりした表情だった。その心意気に寄り添おうとは思わないが、心強く感じる。最近は、ポジティブかつアクティブに思考を変化させて、自ら道を切り開く強さが感じられるさっほー。そして、彼女のその姿勢が運をも手繰り寄せることになる。
またグラビアの抽選かと大した興味もなく第5部開始前のスクリーンを見ていると、「二人合わせてのろりんず」が仲良く登場。残る枠2つということで、2人が引き当てるシーンを思い浮かべながら期待もしていなかったら、さっほーが「1」の筮竹を引き当てた。AKBに入って初めての「いちばん」に驚くさっほーの表情は、己がこれまでに見たことがないようなものだった。人差し指でかたつむりの触覚のように「1」をつくる「のろりんずポーズ」が効いたかな。さっきーは残念だったが、うめたんも当たりを引いて、ようやく13期生の不運の歴史に終止符が打たれた。
パステルカラーのニットと靴が季節を先取りするさっきーのファッション。三つ編み姿で、今日も安定した素朴さで癒される。もぎちゃんとなぁちゃんがインフル、ゆーりんがインフル様の体調不良でダウンと、チーム4に蔓延する病魔。その波に冒されかけていたさっきーは、ただの風邪だったとのことで、とりあえずひと安心。次第に涙もろくなっていることを自分で感じ、先週の茂木ちゃんの誕生祝でも泣いていたさっきー。キャプテンからは、いちばん心配されてしまっているとか。明後日の趣味の悪い涙売りイベントでは、さっきーも間違いなく涙を流すことになるだろうが、嬉しい涙であってほしい。

第3日(12/1)

岩立沙穂北澤早紀岩立沙穂北澤早紀北澤早紀北澤早紀岩立沙穂
先週の教訓を生かして、今日は受付終了5分前に会場に到着。クリスマスらしい服装という予告のあったさっほーは、隣のゆいりーのようにサンタのコスプレというわけではなく、パーティーに出かけるような清楚ないでたち。頭はベレー帽ではなく、愛の真実のような輝く白い粒で飾っていた。今年のクリスマスイブにはチーム4公演への出演が予定されているさっほー。今年はどんなクリスマス公演になるのかな?次のアルバムの写メ会は、予定どおり確保できた、と思っていたら、3枚ほど、日付を間違えて大阪会場の分を買ってしまっていたことに気がついた。さっほーには「大阪で待ってます!」と言われたけど・・・。
さっきーも、さっほーと同じくワインレッドとホワイトのコントラストが映えるコーディネイトで、少しだけジャンヌ衣装にも似ている。このあたりはのろりんずで打ち合わせたのだろうか。ポニーテールは、前門のなっきー、後門のゆーりんとおそろい。こちらは偶然だったらしい。ゆーりんと並ぶと、さっきーの小ささが目立つ。ゆーりんはゆーりんで、初期と比べてだいぶ身長が伸びたような気がする。昨日はねっきーと舞台を見に行ったというさっきーは、ミュージカルに出てみたいとか。隠れた身体能力の高さを生かして、やや前方に見えた中村さんのように、さっきーがアクションに挑戦する姿も見てみたい。

第1日(11/23)

岩立沙穂北澤早紀岩立沙穂北澤早紀北澤早紀
チーム4の新公演が始まったとはいえ、AKBプロジェクト全体への関心は過去最低レベルまで低下した状態で迎えた今回の握手会。このまま握手会に行かなければそれで終わるのではないかという考えすら浮かぶ中、のろりんずへの思いまで断ち切られることはなく、パシフィコ横浜へ。
乗り換えなしでも行けるとはいえ、りんかい線東西線に比べると混雑して快適とは言えないみなとみらいへの道のり。颯爽と受付終了10分前に会場に着く段取りでいたら、人身事故の影響であえなく第4部を遅刻。
今回からフルタイムで専用ブースを持ったさっほー。1対1に集中できるし、オープンレーンよりも剥がしがきついということもなかった。さすがに疲れも見えるかと思いきや、そんなことは全然なく、いつもどおりの笑顔と声。はじめて会ったときから変わることがないその姿勢に頭が下がる。さっほーはまだまだ守りに入ってはいない。ベレー帽フェチとしてベレー帽の話題を出すと、「あっ、今日してきたんだった」と、最終部になってベレー帽の存在を思い出すさっほー。明日・・・は己が握手不参加なので来週のリベンジをお願いしてみたが、果たして?
口内炎やウイルスによる喉の不調にも悩まされていたさっきーは元気に登場。さっきーのサインの耳としっぽは、さっきーが似ていると自己分析する猫をイメージしたものとか。滑舌の悪さではるっぴに見つかってしまってもいたが、先日のノンティのラジオに出演したときや、握手会では気にはならない。劇場MCとかであせって喋ろうとするとダメなタイプらしいが、最近はようやくMCでの積極性も見えてきているので、自信も持って喋ってほしい。

AKB48(チーム4)「手をつなぎながら」公演@AKB48劇場

【出演】岩立沙穂内山奈月梅田綾乃大川莉央、大和田南那、岡田彩花岡田奈々北澤早紀篠崎彩奈高島祐利奈西野未姫橋本耀前田美月村山彩希茂木忍湯本亜美
さっほーが一部出演となってしまった「ふるふる公演」以来となる劇場公演への参加は、茂木ちゃんの17歳の誕生祝公演。
メンバーの太ももを愛するモギハラ変態キャラを確立する一方で、今を時めくなーにゃが「顔を交換したい」と言ってしまうほどの美貌も誇る茂木ちゃん。有志から配布されたリーフレットに「茂木忍はもっとコアに、もっと深いところへ入っていかなければならない」と書いてあるのを見ると、その通りだなあと思う。13期生のGoogle+が始まったとき、己はまだ彼女たちの顔も名前も把握していなかった。そんな中で茂木ちゃんが挨拶がわりにいきなり発信した変顔。久しぶりに規格外のすごい研究生が出てきたな、13期は光宗薫とその他じゃないんだなと、その強烈なキャラクターに驚き、期待するとともに、己にとっては13期生に対して興味を持つきっかけでもあった。
その時の印象からすれば、殻に閉じ込めた才能はまだ出し切れていないと感じる。例えば、自己紹介のキャッチが「あなたのハートをもっぎもぎ」に決まったとき、己はそのアイドルっぽい月並みさを、彼女らしくないと思った。ニックネームも、「茂木ちゃん」よりも、お母さんやさっほーからは時々呼ばれている「ぶーちゃん」の方がインパクトがあって好きだな。誕生祝公演では序盤から涙が堰を切り、あーみんとお母さんからの手紙には鼻水まで溢れさせてしまった茂木ちゃん。彼女が繊細な心を奮い立たせて大きく羽ばたく時はきっと来ると思うが、決意を語った17歳がその時であってもいい。
なっきーを劇場で見るのは、11月3日の初日以来。握手会ではよくさっきーやさっほーの隣で汗をしたたらせながらのパワフルな握手ぶりを眺めては癒されていたが、公演で見た回数は他のチーム4のメンバーに比べると圧倒的に少ない。劇場公演でも、彼女がいるとステージ全体が幸福感に包まれるような、色が変わるような感じになる。自己紹介でなっきーとみっきが並ぶのは強力なことこの上ない。
「Glory Days」のバックダンサーは、今日は研究生ではなく、チームメンバー。ここでも帽子が脱げてしまうゆいりー。脇役に徹するように軽めに踊るバックダンサーの中で、彼女だけは常に全力。ゆいりーのそういう姿勢が好きだ。バレンタイン2日後に相応しい曲である「チョコの行方」でもやっぱり帽子を飛ばしていた。帽子をキャッチする準備も万端の彼女は、いつ脱げるのか分かって踊ってるね。
ぴっかりんは髪が伸びてきたようで、ユニットまでは髪を後ろで結んでいたが、後半からはそれを解いた。前髪ぱっつんで、チョコの家に住んでいる妖精のようなイメージになる。人生の大半を共に過ごしてきた愛猫クーの話をするときの幸せそうな表情も可愛らしい。「僕の太陽」公演時代のような、躍動する動きを取り戻してきているので、小さな彼女が少し大きく見えた。ゆいりーとぴっかりんとなーにゃ。似た髪形のこの3人は、ともすると見分けるのに時間がかかってしまう。
さっきーは「マンゴーNo.2」のズッコケポーズからエンジン全開。2回公演では体力に不安があるという彼女だが、「恋の傾向と対策」あたりでは相当息を切らせながら頑張っていた。お祝いごとが大好きで、今日も茂木ちゃんの誕生祝に泣いてしまったさっきー。特別な日でテンションが上がっていたということもあるかもしれないが、今日くらいの躍動感を常に出していければ、ステージを見渡したときに目を引く存在になれるはず。自己紹介MCの「メンバーのほっこり話」では3回も名前を出されるという、相変わらずの愛されキャラぶりだった。
予防接種の効果もあって、幸いそれほど酷くならずに回復したさっほー。体調の心配や、次の曲にも出てこれるかという心配をせずに公演を見ていられるだけでも幸せなことと実感。インフル以来、写真では多少やつれた感じもあったが、生で見るとそんな心配もなさそうだった。シリアスな曲であえて漏らす笑みには大人の色気を感じさせるさっほー。そこから更に表情のバリエーションを増やしていくのが今後の課題だろうか。
みきちゃんの制限されることを知らない表情と全身の関節を目いっぱい使ってのパフォーマンス。1曲目からビュンビュンと風を感じ、その渦に巻き込まれる。歌うことのない「Innocence」での内面からも外面からも、複数の邪霊によって操られているのではないかと思うほどの、恐ろしさすら感じるような表現力の源泉はどこなのだろう。もちろん、彼女の研究熱心さによる部分が大きいのだろうが、劇場で見ることができることを感謝したくなるレベルだ。「大好き」のような静かな曲でも、みきちゃんのコロコロとビー玉が転がるような、表情やステップでの繊細な表現は見ていて飽きることがない。決して大きくはないが、時に大きく見開かれ、時に俯きがちに流すように動く様子が遠めにも分かる彼女の瞳も「ビー玉アイランド」と呼ぶにふさわしい。
15期仮研究生組のりおりんこと大川さんは、今日がアンダーデビューだったらしい。立ち位置が覚束ずに、さっきーのエスコートを受けたりしていたようだが、無事にフルステージをこなしていた。余裕がない中でもアイドルらしさを失わない笑顔は彼女の持ち味。エキゾチックな顔立ちだが、まだ12歳らしい幼さが勝っていた。
チーム4の黎明期に闇をもたらすかのような不吉な言葉とそれを飾るお為ごかしの御託に耳を塞ぐ中で見る「遠くにいても」前の映像パートは、擦り切れたレコードのようなパチパチとした音のようなノイズが頭を駆け、前回までと同じような気持ちで見ることができなかった。次は、どんな気持ちでこの映像を見ることになるのだろうか。

アルゴリズム、虎よ!(project DREAMER)@戸野廣浩司記念劇場

【作・演出】井上テテ

【出演】藤江れいな、竹林林重郎、みやなおこ、屋良学、ゆかわたかし
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20年ぶりという足元の積雪と乱れ舞う風雪に身を屈めながら、その20年前に産声をあげたれいにゃんの初主演舞台の観劇のために、西日暮里にある100席規模の小劇場へ。幸い電車が止まることはなく、どうにか転倒もせずに帰ってこれた。荒天の中、千秋楽はほぼ全席埋まり、当日立ち見も出る盛況だった。
2010年9月の初舞台「浅草あちゃらか」で末っ子の雛子役を演じた姿を見たときには、なかなかどうして堂々とした演技ぶりで、次のチャンスが来る日は遠くないだろうと思ったし、れいにゃん自身も、舞台「ロカボク」を観劇して「浅草あちゃらかぶりにやりたいな!(b^ー°)」と、舞台への思いも強くしていたが、意外にも2回目の舞台出演までに、3年5か月の時が流れてしまった。
この前れいにゃんの顔を見たのは、前回が2012年5月の、事務所の同僚である相楽さんが出演していた「ロカボク」のトークショーのゲストとして来ていたとき。その前が2011年10月の、彼女が縁切り様役で出演した映画「縁切り村」の舞台挨拶のとき。さらにその前まで遡って、ようやくK6「RESET」公演となる。
「縁切り村」では村人に虐げられた怨みで縁切り様になってしまい、今作では幼い頃に催眠術によって「人虎」になってしまったれいにゃん。彼女の容貌に、人外を演じさせてみたくなるような要素があるということだろうか。普段から表情は豊かなので、演技でも、役の感情の起伏の激しさを表情に出し、トランスモードや人喰いモードでも、時にコミカルに、時に激しく演じていた。
公演で見たのは17歳のときが最後なので、20歳になったということが実感として湧いていなかったのだが、最初にエプロン姿で登場したときは大人っぽく見えて、なるほどこれならお酒を飲んでも許せるかなと思えた。その後の妖精モードでは、衣装が「心の端のソファー」に似ているということもあってか、己の知っているれいにゃんのイメージに戻った。このあたりの微妙なバランスも、少女から大人へと変わっていく時期の繊細さを間近に見たような思いだった。
ホラーやミステリーの要素も交えたストーリーがコミカルな台詞とともに展開されていき、テンポ良く進んでいく。上演時間が1時間20分ほどなので、もう1回くらいどんでん返しがあってもよかったかもしれないが、設定を含めて完成度が高かった。ラストを完全な悲劇にしたらどうなっていただろうかとか、最後のアルゴリズムを「おわり」ではなく「とらよ」にして催眠術ではなく本当に虎として覚醒したらどうなるだろうかとか、脚本家の意図をそっちのけに、想像を膨らませることができる設定に思いを巡らせている。
安定した人気を維持しつつもAKBでは傍流にあるイメージのれいにゃんだが、これまでに経験してきた仕事や、これから先のことを考えても、AKBの栄枯盛衰の波を直接受けない独自の位置を占めていることは長い目で見ればプラス。今回の作品のように、百戦錬磨の少数の役者陣と渡り合うという経験をしたり、映画の演技の経験を重ねているのも大きい。事務所や周囲の大人たち、ファンから大事にされて、最近では頼りになる先輩としてゆいりーからの尊敬も受ける彼女のこれからが楽しみだ。
《あらすじ》両親が経営する群馬の山奥の喫茶店に、かつての同級生であるお笑い芸人の霞ヶ浦(ゆかわ)、催眠術師の諏訪(屋良)、教育実習の教師だった猪苗代(みや)の3人を同窓会という名目で呼び寄せた大地(竹林)。大地は、かつて3人に恥ずかしい動画を撮影されて公開されたことが元で引きこもりとなり、東京にもいられなくなってしまったのだった。今日はその復讐の日。大地は動画サイトに生中継を始める。そして、3人にストリキニーネの入った水を飲ませた上で、解毒剤を賭けたゲームを提案するのだった。3つの暗号をアルゴリズム表をヒントに解く。それが条件。第1の暗号は、大地がかつて辱めを受けたのと同じように「裸になれ」。しかし、大地の妹の由江(藤江)が、霞ヶ浦のギャグを見たいがために、大地の知らないうちにアルゴリズムの配列を変えてしまっていたため、第1の暗号は難なくクリアされた。第2の暗号は「おけつはなび」のはずだったが、アルゴリズム表が変わったために意味不明の言葉に。妖精に扮した由江がこれは妖精語だと誤魔化して、「ミス生け贄コンテスト」のグランプリになるための買収資金の獲得のために「500万円払え」という意味にしてしまうが、成金の諏訪が手持ちの500万円を即座に由江に支払い、第2の暗号もクリア。第3の暗号も意味不明の言葉になったが、由江が大地の真意を汲んで、妖精語で「あやまれ」という意味だと、3人に過去の苛めを大地に謝罪するように迫る。霞ヶ浦らが渋るうちに時は午後9時3分。大地が不敵な笑いとともに、真意を開陳する。満月の夜のこの時刻になると虎に変身して人を襲う由江に3人を喰い殺させて復讐すると同時に、3人の体内のストリキニーネによって、一家が東京にいられなくなった真の原因である妹の由江をも葬ろうというのだった。暗闇の中、由江の刃に弄ばれながら、ストリキニーネによる痙攣も始まった猪苗代らは絶体絶命となる。そのとき、諏訪が、かつて由江に「お前は虎だ」と催眠術をかけたことを思い出す。霞ヶ浦がギャグで由江をトランス状態にし、諏訪が催眠術をかけて由江は正気を取り戻す。過去のあやまちや自分の浅ましい考えを反省した5人は、散らかった店を片付けるのだった。