~熱風の果て~

観劇の記録

「RESET」公演@AKB48劇場

【出演】相笠萌岩立沙穂梅田綾乃大島涼花大森美優岡田彩花北澤早紀小林茉里奈サイード横田絵玲奈佐々木優佳里篠崎彩奈高島祐利奈名取稚菜藤田奈那森川彩香渡邊寧々
秋葉原に行く前に、ラクーアガーデンステージでのわさみんの歌唱ステージを鑑賞。生憎の雨で合羽強制着用の優先エリアはジャンボ曰く「宗教みたい」、わさみん曰く「雪だるまみたい」で、客入りも今ひとつ。わさみん「私からのプレゼント」って、合羽は要返却ですからー。鞄に忍ばせた誕生祝の手紙が濡れても都合が悪いので、傘をさしながら遠巻きに見つめた。今日は、「無人駅」に「瀬戸の花嫁」と「ヘビロテ」が挟まる構成。音程の安定感はもっと上げていかないと独り立ちはまだ厳しいとは感じるが、歌声から角が取れて、声に重みが加わっていて、確実に演歌歌手として成長していた。「瀬戸の花嫁」は以前と比べるとだんだん演歌色が濃くなってきたような気がする。囲み取材が始まったので、握手会への参加は断念して秋葉原へ移動。
前回が昨年の10月、その前が昨年の2月と、ここ最近では、最も縁遠い公演となっていた「RESET」公演。今日のメンバーには、これまでに己が見た「RESET」公演に登場したことのある子が一人もいなかった。余りに離れていたせいで、「檸檬の年頃」がないのは研究生公演だからかと納得したまではよいものの、「虫のバラード」がないのも才加の代わりはいないからかと納得しかけ・・・と、もはやK5とK6の区別も怪しくなってしまっていた。
今日の楽しみは、17歳の誕生日を迎えたばかりのわかにゃんを、「RESET」公演で初めて見ること。2年前には「RESET」公演を己のすぐ斜め後ろの席から見ていた彼女が、同じセットリストをメンバーとしてステージで演じている、というだけでも感慨が湧く。前半4曲や「逆転王子様」でのアイドルらしい笑顔から、中盤では一転。デコ出しで登場するや、その額や頬に纏わりつく髪の乱れるままに、悩ましく妖しげな表情を見せてくれたのは期待した以上だった。「毒蜘蛛」、「オケラ」といえば、かつてわかにゃんを劇場に招待した萌乃たんの十八番。萌乃たんのような切れ味や表情の鋭さとはまた違った妖艶さを表現するわかにゃんも、ここがこの公演での最大の見せ場と言える。
わかにゃんと森川さんは、楽屋で喋っているうちにわかにゃんが泣きの演技を入れてきて、最後は吐く演技で終了するのがお決まりとか。そして、袖から入場しながら実演してみるわかにゃん。劇団NYみたいにステージでレギュラー化するまではないかもしれないが、劇場で力をつけてきているわかにゃんの演技を見てみたいのは確か。「らめらめ」のときですら、いじめっ子チームの裏ボスと言えるような怖いところもある役を、迫力と色気を出して演じていたくらいなので、今であればさらに上のレベルが期待できるはず。
先月の「ミニスカートの妖精」で、13期生の2人に全く笑顔が見られなかったので、研究生の「RESET」公演の雰囲気が心配になっていたところだった。しかし実際に見てみると、全くの取り越し苦労。公演として成立していたことはもちろん、チーム公演とは違った新鮮な空気、若い息吹を感じることができた。パフォーマンスの完成度はメンバーによってバラつきが大きいものの、10期から13期までのメンバーがいる中で、メンバー構成のバランスとしては非常によかった。先輩たちはみんな面倒見がよさそうだし、後輩も素直そうで、先輩を信頼していて調子に乗るような心配もなさそう。これならまた見に行きたいと思える。これまで、「研究生オーディション」への反発から、研究生公演には距離を置くようにしていたが、やはり公演を見た以上は情が出てくるのは止められない。
「RESET」公演は、現行のAKBのセットリストの中ではいちばん好き。「目撃者」や「シアターの女神」は明暗のコントラストが急すぎて、雰囲気に浸る余裕もなく疲れてしまう。一方、このセットリストには、前半4曲は勢いで楽しく乗せて、中盤では一気に大人の世界に変貌、そして思い切り明転してしっとりと締めるという大きな流れ、色調の移り変わりがある。アンコールにこの公演でいちばん見たい曲である「夢の鐘」が控えているというのも大きい。上っ面をなぞるだけでは滑稽になりかねない「夢の鐘」という曲を、今日のメンバーも十分に絶望と復活を表現してくれていた。
MCでは、まりんちゃんの仕切り能力の高さが目立っていた。彼女の公演出演を見るのは昨年8月以来の2回目だったが、すっかり綺麗になっていたことと、聞きなれていなかったその声に驚いた。合唱パートでも彼女の独特の周波数は強力だった。13期生にお尻をポンポンされてしまっていたのも、それだけ身近な存在になれているということでもあるだろう。今日のメンバーをひとつのチームとして見るのであれば、キャプテンの位置にいるのはまりんちゃんだった。これまで、「まりなってるNEWS」の存在すら知らなかったが、今日の公演は彼女に興味を持つきっかけとなりそうだ。
13期生は平均年齢も若く、黒髪ストレートが多いということもフレッシュな雰囲気を増幅させる。しかし、13期生の名前もほとんど知らない状態で劇場に行って、黒髪ストレートが何人もいると、名前と顔を公演中に一致させるのが難しい。ハイタッチでは、13期生は名札を付けて出てきても、ベルトコンベアーは研究生でも変わらずの高速で、これでは名札が報われない。
13期生の中でいちばん気になったのは、15歳になったばかりの北澤早紀さん。小柄な身体で目を輝かしながら演じている姿が印象に残った。MCで「この中に楽屋でひとりぼっちの子がいます」と言い出したのにはびっくりしたが、こういうことを言えてしまうだけでも度胸がある。自己紹介MCでは、「末日」を本当は「まつび」なのに「まつじつ」と間違って読んでいたと言っていたけど、「まつじつ」が正解だよね。いろいろ謎も多そうな彼女、とりあえずモバメを登録してみた。
13期生は自己紹介MCが取りとめもなくなる子が何人かいた。昔のまーちゃんみたいに途中で切り上げるというのは余りよくない。高島さんなんかは喋りの要領の悪さも個性になりそうだけど、やはりきちんと整理してから出てきてほしいもの。
優子ポジションは大島さん。実は、「ミニスカートの妖精」での無表情のステージを見たときは、印象は全く良くなかった。今日、1公演通してセンターポジションに立つ姿を見てみると、その印象は覆る。誰にでもできるものではない「RESET」公演の優子ポジション。そこに迷いというものを微塵も感じさせることなく、小さく華奢な身体を軽快に操りながらステージを飛び回るさまは優子を髣髴とさせる。表情が消えてしまう場面が今後少なくなっていけば、センターとしてより一層輝けそうに見えた。

「シアターの女神」公演@AKB48劇場

【出演】石田晴香伊豆田莉奈大森美優河西智美北原里英小林香菜サイード横田絵玲奈佐藤すみれ佐藤夏希鈴木紫帆里鈴木まりや近野莉菜名取稚菜藤田奈那増田有華宮崎美穂
「シアターの女神」公演に4回目の入場で、わかにゃんとなっつんの2人が揃わなかったのは初めて。つまり、これまで1度もこの公演でのゆきりんとともーみの姿は見ていなかった。いちばん長い間、劇場通常公演で会えていないメンバーとなっていたともーみの出演を見るのは、実に2年前の、あの「2.21」以来。
今日のともーみは、いい意味で2年の時の経過を感じさせなかった。公演に出られることの喜びを噛みしめ、ステージ上で決して手を抜かないのが、昔からの彼女の魅力であり、劇場映えするのも当然。手は抜かなくても、力の抜き方が上手く、柔らかな腰の回し方とあいまって、誰にも真似のできないなまめかしさとなって表れる。常に「チユ?」と言っているかのような唇や、アゴを少し上げての満足そうな表情や、K5の「海を渡れ!」で見せていたような幸せ走りも見られたし、自己紹介MCではサディスティックな笑い声も聞けた。「チームB推し」ではともーみのチームKサインが見られて、何となしに嬉しさを感じた。
今日はチームBの元Kメンが総出演ということもあって、懐かしいような場面が諸所に見られた。後半の家族MCは、前半チームがお題に沿って多くのメンバーに話が振られたのに対し、後半チームはともーみとNなっちのお風呂の話に脱線し、温泉の露天風呂で才加を中心として行われるというライオンキングごっこの話にまでいってしまった。旧Kで話を走らせすぎたことには、すーちゃんがチームBに話を引き戻そうとするまで、メンバーも己も気付かなかった。
公演では完全に中心的存在になっている有華が行くところ、必ず何かが起きる。自己紹介MCでは旧Kメンから総ツッコミを受け、アンコールでは香菜とお尻の触りあいをしていたり、紙ヒコーキを独り占めしようとしたりしていた。同じセットリストを演じ続ける中でも、常に新しい楽しみを見つけていこうという姿勢が見えた。見ようによっては悪ふざけのように見えてしまうかもしれないが、スイッチの切替えはきちんとできている。
ショートカットから髪がだんだん伸びてきたはるきゃんのテンションの高さは目立った。後ろで結んだ髪が彼女のイメージによく似合う。振り切れすぎて、「100メートルコンビニ」のイントロに入ろうかという緊張のタイミングで笑い声を止められなかったのはまずかったが、その他の場面では動きも表情も、K5でのレギュラー時代を思い出させる充実ぶりだった。目が据わったようになって、そこから発せられる凄味のようなものが見られれば、そこから目を離したくなくなる。
今日の公演は、全てのメンバーが持っている力を出せていて、最初から最後まで、活気が感じられた。みゃおも多少は絞れて、最後まで体力切れも起こさず。「あん誰」の話をしている時には、すっかり非選抜メンバーの立場から発言していることに寂しさも覚えたが、卑屈になっている感じではなかった。デビュー時の姿を追い求めるのは、彼女にとっても己にとっても今は意味のあることではないが、まだまだ変われる、まだ浮かび上がることができるという可能性を感じることはできる。
今日も公演に来る前に病院に行ったというわかにゃん。怪我と付き合いながらのギリギリのステージが続いていたということと、その中で質の高いパフォーマンスを見せていたということに驚いた。そこに悲壮感を全く見せないことを含めて、去年の「見逃し」のK3で彼女が自負していた「根性があります」の意味がはっきりと分かってきた。この公演で己がいちばん好きな曲である「100メートルコンビニ」では、わかにゃんの無防備な上の空のようなにたりとした表情を見て、「勝手な人ね、手に負えない〜」の部分にこういう解釈ができるのかと、新たな気付きを促された。

月と箱舟(“STRAYDOG”Seedling)@池袋GEKIBA

【作】矢沢幸治、【演出】那波隆史

【出演】堀之内良太、川村美喜、花田裕二郎、増田桂次、大村仁望、竹重里美、堀高エミリ、高橋玄太、松浦康太、佐々木直樹 、樽味萌花、大尾和弘、渡部未来 、北村絵梨奈
震災直後の「Girls Prison Opera」以来2回目となるストレイドッグ系舞台の観劇。あらすじに興味を惹かれたということもあり、もえたんこと樽味萌花さんが出演しているということもある。
もえたんといえば、2005年から2006年にかけてのちゅろすライブにおいて、寸劇「私、萌たん」や、ソロ歌唱の「スプリングサンバ」、楢さんとのアニソン対決などで活躍した姿がまだ記憶に新しい。己はもえたんの「スプリングサンバ」を聴いて曲に興味を持って、大場久美子の「スプリングサンバ」が収録されたオムニバスCDを買って、大場久美子の歌唱力に衝撃を受けたくらい。今もオスカーに所属する彼女は、ちゅろす後も舞台に出演したり、演劇アイドルユニット「Shimokita5」を組んでいたりしたようだが、アンテナに引っかかってこなかったため、2006年5月3日にKチーム公演の裏で初台Doorsで開催された「ちゅろすでLive!」以来、6年ぶりに彼女を見た。この時期に活躍していたちゅろすメンバーとしては、プラチカ所属のアイドルユニット「MYM Melody」で頑張っている守木裕香ちゃん、フラップガールズスクール練習生という肩書きの近藤真由ちゃんと、モデル活動をしている楢さんは現在の活動が把握できた。李湖ちゃんも事務所には所属しているようだが。返す返すもにゃは惜しい。
余談はほどほどにして、劇はストーリーだけを取り出せば陰惨さ極まる悲劇。人間の業と罪と欲の深さが余すところなく舞台上に曝け出される。その中に欠片が煌き濁流の中に飲み込まれていく愛が美しい。想像以上の重苦しさにかたずを呑んだ。陰惨さを覆い隠すように、下ネタであったり着ぐるみであったり、中和の工夫が行われている。上空から薬剤を大量散布するような乱暴さはあったが、小劇場の狭い舞台の中で、目一杯に身体を張って演じる若い役者たちのパワーには快さも感じた。体力も気力も使うし、擦り傷や痣も絶えることがないと思われる激しさの中で、あと1週間、若いからこそできるような公演が続くというのだから頭が下がる。ストレイドッグは、同じような顔ぶれでハイペースで公演を打ち続けているので、質が保てているのかという疑念もあったが、その点での心配は無用だったし、客席は満員。「Seedling」とは言ってもプロの舞台だった。
最前列の防水シートはどういう演出で使うのかと思ったら、手頸の動脈を切って血潮が吹き出るという仕掛け。実際に血しぶきが飛ぶ舞台というのは初めて見た。
もえたんは、鑑別所上がりの未改悛の不良少女の役で、役づくりのために髪を金髪に染め上げての出演。さらにギャルメイクなので、事前に分かっていなければ彼女とは気付かなかっただろう。人間的にはいいところが全くない役だったが、汚い言葉をチラつかせ、色仕掛けも使いながら、不良を果敢に演じきっていた。次は全うな人間役も見てみたい。

桃太郎外伝〜ライズアップヒーロー〜(A☆ct Stage)@武蔵野芸術劇場

【脚本】麻草郁、【演出】松田信行

【出演】宮本晃行、北村悠、栞菜、村上耕平、井深克彦、平山佳延、高橋明日香、遥奈瞳、新田夏鈴持田千妃来川原浩史、ハマック柳田、丹羽俊輔、永門、富永敬太、池内亮太、高橋伸輔、浅田育輝、上原梨加、南雲星菜、森田このみ、成実美香、りょうか、玉木麻衣、五十嵐啓輔、杉山祐希、加藤光大、石崎慎也
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麻草・松田コンビといえば、荒唐無稽かつ深みのない設定、唐突な急展開、小劇場を更に小さく見せるチープなセットと演出・・・これまで見た演劇の中でも最低評価の部類に入る「ハルモニアガーデン」が思い出される。また、桃太郎というからには、単純な勧善懲悪でイケメンパラダイスで激しい殺陣で押し通すだけかもしれない、と余り期待もせずに向かった本日の会場。
その期待値と比べれば、十分満足の出来だった。善悪二元論に拠らずに、殺陣で派手に見せるよりも、人物の心理に重きを置かれていた。主人公と敵対する者が単なる悪役として殺されて終わりとなり、その背景や心理が深く描かれない演劇ほど詰まらないものはないが、この演劇はまさにその対極。複数の軸を交えて、行動に説得力のある登場人物たちの人間関係には緊張感があった。
主人公も単純な善玉、完全無欠の正義を振りかざすだけでは物足りない。その点でも、この劇の主役である宮本くん演じる桃太郎は、挫折をし、悩み、自ら答えを出すという深みがあった。親友でありライバルでもある北村悠くん演じる浦島次郎もまた悩み、自らの選択によって運命が定まる。敵に操られて誤った道に踏み込むというのではありふれた展開だが、そうではなかったところには好感が持てた。「VAMPIRE HUNTER」のルキスオルトス、「ロボット」の早乙女トム、そして浦島次郎・・・悠くんには悩める青年がよく似合う。
「VAMPIRE HUNTER」では、ルキスオルトスの少年時代を演じていた中村美香さん、ブログの更新がぷっつりと途絶えたので引退したのかと思っていたら、いつの間にか名前を「成実美香」に変えて活動していた。式神軍団では、独特の声でりょうかさんの式神かおりがいちばん目だっていた。
同じく「VAMPIRE HUNTER」組である栞菜さん、鬼の一族・茨木童子という設定ではあったが、お姫様でもあり、身体も絞れて素直な可憐さを醸していた。もし己が脚本家であれば、ラストシーン前で彼女は白狐さまに斬られてしまうのだが、さすがに麻草氏はそういう外道なことはしない。それに、もし白狐さまが茨木童子を斬ってしまっては、白狐さまもまた斬られなければ収まらない。そのような方向に持っていかなかったことで、白狐さまが最後まで格好よい敵役のまま高笑いできたのだから、やはり栞菜さんは斬られなくて正解だろう。
オープニングの全員による歌唱とダンスで、ひとり明らかにレベルの違う人が混ざっているのが分かったが、それが九尾の狐であり安倍晴明の母でもある白狐さま役の遥奈瞳さん。劇中には白狐さまのテーマソングのようなものを彼女がソロで歌う場面があって、オープニングの図抜けた歌唱力の持ち主の正体が明らかにされた。経歴を調べたら元宝塚歌劇団。その看板にたがわぬ実力と存在感だった。
この劇には、もう一人、元宝塚歌劇団という経歴の人物が出演していて、それが、宝塚の演出部にいたことがあるという丹羽さん。この人の名前で検索したら、炊き出しに並び、ビッグイシューを売りながら演劇界への復帰を諦めなかったという不屈の魂が照らし出された。
今年に入ってからその演技を見るのが早くも4作品目となるKNUの新田さんだが、衣装を含めてKNUらしい色っぽさではこの作品がいちばん。年齢以上の落ち着きと、品のある色気が出せるという点では重宝されるべき女優だ。
晴明といえばイケメンが演じるものと相場が決まっているかと思いきや、この作品では本業がラーメン屋という川原さんが晴明で、イケメンは晴明の弟子。劇中では、ラーメン屋が白狐さまによって、晴明の「器」として利用されてしまったという設定だった。器ならもっとイケメンを・・・と思ってしまうが、白狐さまの審美眼に口を出すのはやめておこう。

ドロシーとあなたの渋谷で春物語@マウントレーニアホール

さくら学院ライブで入場して、ホールの雰囲気の良さと見易さは分かっていたことと、今のドロシーとの距離感に相応しい2階席が開放されたことで、1月のO-EAST以来、久しぶりにドロシーライブに参戦。昨日はユアスタで見事にベガルタ勝利の女神となったドロシー。己の本音としては、今年のベガルタがJ1を制するようなことは阻止してほしいものだが・・・
昨夏のTIFで衝撃を受けて東北まで脚を伸ばすことも3度。しかし、秋のアイドル横丁とそこで発表された新曲「HAPPY DAYS」を峠として急速に下り坂を辿ったドロシーへの思い入れ。今日のライブでも、峠以前の曲と以後の曲とではステージ上と己の心のシンクロ具合が全く違った。もし、全ての曲に今日はじめて出会っていたとしたら、それでも同じような気持ちになったのかどうかは分からない。
「部屋とパジャマと私」は、今日は「部屋とパジャマと私たち」バージョンということで、まりちゃんソロではなく、1番は他の4人のメンバーが歌った。それぞれ個性と魅力を持った4人ではあるが、歌唱力の差は埋めようがない。ドロシーの強みとしては、やはりまりちゃんの高く澄んだ、精一杯のようで安定した、他にどこを探しても見つからないであろうオンリーワンの歌声。聴いていても満足、見ていても応援したくなる。「部屋とパジャマと私」を聴くのがライブでの楽しみでもあるので、興が削がれた感じにもなったが、その後、存分にまりちゃんの歌声が聴ける「見ていてエンジェル」、「冬の桜」とつながる構成がよかった。この、ピンク色に染まるような、まったりと幸福になれるような、坂本サトルさんによる楽曲群がドロシーに対して感じる魅力の大きな部分だ。
後半は、テクノポップ的な「トライアングルスクエア」、ハードロックの「臨戦態勢が止まらない」、デビュー曲の軽快なガールポップの「ジャンプ」。いわゆるアイドルポップスとは一線を画すこれらの楽曲群を高い技術と気持ちで演じるドロシーの輝きには気持ちを昂ぶらせずにはいられない。
これらは、いずれも「峠」以前のもの。アイドルとしての人気は関東にもすっかり根付いたが、今の路線には一種の惜しさも感じずにはいられない。また、このような惜しさを感じさせるのも、ドロシーのパフォーマンスがそれだけ魅力的であり、それが失われていないことの証左とも言えるだろう。