~熱風の果て~

観劇の記録

星空ハーモニー(Southern' X)@CBGKシブゲキ!!

【演出】蜂巣和紀 【脚本】陽田翔大

【出演】栗生みな、図師光博、陽田翔大、藤本かえで、緒方有里沙、七海とろろ、古野あきほ栗原みさ、蜂巣和紀、鈴木聖奈、相澤香純、諸星あずな佐野実紀、平井杏奈花原あんり、今安琴奈、大河原生純、有村瞳、中村みら、永瀬葵子、麻生金三、今吉めぐみ
f:id:JoanUBARA:20170423192401j:plain
アイドルライブで2回訪れたことがあるマウントレーニアホールと同じフロアにあるシブゲキには初入場。昨年末の「ノッキンヘブン」や今春の「シュベスターの誓い」などの舞台で馴染みのある役者さんが多く揃った本作だが、いちばん初めに情報に接したのは、かつて舞台「ヴェッカーSIGHT」に主演した花原あんりさんのブログでだった。#チームにも気になる面々が多いので後ろ髪引かれる思いはあったが、花原さん出演の♭チームの千秋楽を予約して観劇。
一等地にあって設備面も恵まれたシブゲキという会場。生演奏、生歌唱を多用するこの舞台では、音響が生命線と言えるので、そこで妥協をしなかったというところに、旗揚げ公演として最高のものを送り出そうという制作側の覚悟を感じた。その分、観劇料金は高めの設定に。
ストーリーは、合唱部を中心とした高校生の青春群像劇ということになるのだろうが、メインとなるのが、MOSH図師さん演じる合唱部を指導することを捨てたレジェンド教師と、陽田さん演じる音楽と夢を捨てた合唱部OBの若者の親子の立ち直り。そこに合唱部の面々が真っ直ぐな情熱がぶつかることによって、乱れ果てて打ち捨てられた夢に向かって、再び時が動き出すというもの。
合唱部員たちの個性の強さ。14人の部員たちそれぞれに、役としての生命を吹き込むためには間違いではないにせよ、強すぎる個性は、それ自体がキャラクターに枠を嵌めることにもなり、与えられた個性を踏み越えられなくなるという諸刃の剣にもなる。現実性の強い学園ものということも考え合わせると、アクの強いキャラとしては、自然を意のままに操るという現実離れした超常能力の持ち主と、ゲストの今吉さん演じる謎のコーチの2人がいれば、そのくらいまででもうお腹いっぱい。栗生さんは声だけで十分個性を発揮できる女優さんなので、そこに過度のキャラ付けを加える必要があったのか疑問だった。オープニングでのバラバラな合唱部、見ていても聞いていても楽しく、あのくらいの個性の描き方がいちばんしっくりと来た。
顧問の先生を引っ張り出すために、部員たちがアイデアを凝らしてあの手この手で頑張るシーンは、図師さんたちの演技と身体を張った頑張りを堪能できたのはよかったが、舞台のバランス的には、笑いに偏った時間が長すぎた。あそこは、生徒たちが悲しいほどの純真な情熱で訴えかけるくらいがいい。蜂巣さん演じる館長が、莫大な設備投資が必要で、なおかつ集客が望めないプラネタリウムをつくった理由なんかもストーリーに絡めてほしかった。また、地区大会金賞というコンクールの結果発表までされたのは正直蛇足。全国大会金賞という最悪の結末にしなかったのは救いだが、顧問復帰からコンクールまでの苦労がほとんど描かれなかったわけだから、みんなの合唱に対して、観客それぞれが評価を下して拍手をして、そのまま幕が下りればそれでよかった。同じ意味で、冠菜さんのCDデビューも先を描き過ぎと感じた。
「シュベスターの誓い」ではひっつめお下げで眼鏡のブリちゃん役で暴れ回っていた緒方さん。眼鏡を外した素顔は透明感があって美しい。性格的にはやや気弱で真面目な役だったが、ゲストの今吉さんとの絡みでは舞台上に激しく体を打ち付けること4度。女優魂を見た。3年生では、冷静な部長も誰が演じているのか分からないまま気になって、後で名前をチェックしようと思っていたら、カーテンコールで、あの雪華さまを演じていた古野さんと初めて分かって、役柄でこうも変われるものかと、良い意味でびっくりした。
「幸せだから歌うのじゃなく、歌っていれば幸せなんだ」(By山崎ハコ「歩いて」)は元はアメリカの哲学者であるウィリアム・ジェームズの言葉だったとは知らなかった・・・
【⇒これまでの観劇作品一覧