~熱風の果て~

観劇の記録

つか版・忠臣蔵スカイツリー編(劇団扉座)@すみだパークスタジオ倉

【作】つかこうへい、【脚本・演出】横内謙介

【出演】山本亨、岡森諦、高橋麻理、伴美奈子、犬飼淳治、新原武、有馬自由、上原健太、高木トモユキ、江原由夏、上土井敦、串間保彦、藤本貴行、松原海児、中原三千代、鈴木利典、川西佑佳、松本亮、野田翔太、江花実里、吉田有希、比嘉奈津子、藤田直美、塩屋愛実、砂田桃子、早川佳祐、星達也、高橋直幸、與座和樹
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一昨年のわさみん出演舞台「ドリル魂」で初めてその名を記憶に刻んだ劇団扉座。その後、「アトムへの伝言」を経て、3作品目の観劇。扉座としては、これが第50回の節目の公演ということだった。「世の中には渡辺麻友ちゃんのような子もいるんだぞ!」・・・吉良を、まゆゆにも憎まれるくらいの悪役になれと励ます台詞にドリル魂の欠片を見た。
今回の作品名にその名を冠するつかこうへいと忠臣蔵。横内氏はつかフォロワーとして演劇の世界に踏み込んだということ。個人的には、いずれもネームバリューほどには薄い馴染みしか持っていなかった。
最近まで演劇に親しむということがついぞなかった己にとっては、つかこうへい=蒲田行進曲という文字情報以外頭になかったし、漠然と昔の人というイメージだったので、一昨年、亡くなったというニュースを聞いたときには、韓国籍ということと、同じ時代に生きていた人だったのかということに驚きを抱いた記憶がある。
忠臣蔵にしても、里見版くらいしか見た記憶がないし、単純化された勧善懲悪の権化とでもいうようなマイナスイメージの先入観に固定されて、忠臣蔵を見るということ自体に拒否反応を示すようになってしまっていた。
どの程度、一般に知れている忠臣蔵に忠実なのか分からずに観劇した今日の舞台。忠臣蔵である必然性は感じられなかったが、虚実ないまぜに芝居と現実の境界を何度も踏み越え、荒唐無稽のようで、きちんと人情劇として成り立っていた。何よりも、プロフェッショナルな役者陣と制作陣が作り出す舞台上の熱気には時間を忘れるくらいに引き付けられるものがある。役者陣がカーテンコールでもほとんど笑顔を見せることもなく、劇の世界から抜けきらぬ表情を見せていたのも、それだけ全身全霊を込めて役に向かっていた証だろう。