~熱風の果て~

観劇の記録

ハイスクールミレニアム(アリスインプロジェクト)@シアターKASSAI

【脚本・演出】久保田唱

【出演】真凛持田千妃来、小花、小田あさ美水樹たま彩月貴央稲森美優、平山空、田口夏帆、天野麻菜、大友歩、矢部まりな、岩崎桂、弥紗、岡田ちほ、篠原ゆり
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夏に見た作品の余りの低質さに、半ば愛想を尽かしていたアリスインプロジェクトの演劇。シアターKASSAIで教室を表現した無機質な白壁と無造作に置かれた机を見たときには苦い記憶がよみがえったが、今回は良い作品だった。チープなセットだからダメというわけではなくて、きちんとした脚本が用意され、稽古を積めば、経験の少ない女の子だけでも、十分に訴えかけてくる舞台がつくれる・・・という基本的なことが再認識できた。
女子高を舞台にしたタイムスリップもの、と聞けば使い古された題材で、まともな作品は作りようがないようにも思えたが、2000年問題というもはや誰もが忘れ去った得体の知れない「事件」を、過去と未来を結びつける場として設定したことで陳腐さは消えた。実現されていないタイムトリップに、いつの間にか一定の「ルール」がつくられ、演劇の世界でもそれに縛られるという奇妙な現象からは逃れて、ある程度自由な振る舞いが許されていた。過去の自分との遭遇も絶対的なタブーとはなっていなかった。
最も古い世界からやって来たのが、シノビの「アカツキ」。この名前と設定は、どうしても1週間前の「冬椿」を思い出させる。この後、アカツキ流忍法を編み出して、アカネたんの母親になるわけか!どんどんデジタルに馴染んでいくシノビ・・・というキャラ設定がおもしろかった。
過去と未来が交差する中で、断ち切られる絆、受け継がれる絆が重なり、全てを知ることになる観客は、全てを知らない舞台上のキャラクター、知ってそれを受け入れる舞台上のキャラクターたちに感情移入をしていくことになる。2011年から2015年の間に主役の真琴を待つ運命は明確に語られはしなかったが、それがはっきりと読み取れる香織の眼差しは、切なさを舞台に残していった。スカイツリーもポッキリいっちゃうのかー。「4000年問題」で締めるラストもキレイに決まった。
2000年問題というと、己にとっては割と最近の出来事のように感じるが、11年も前。さすがに生まれていない出演者はいなかったが、主演のちーちゃんこと千妃来たんは2歳となると、もはや遠い。どうでもいいことながら、「千妃来」という個性的な名前を「ちーちゃん」にしてしまうセンスはイクナイ。
オープニングで、己が唯一知っているモーニング娘の曲である「ラブマシーン」がテーマ的に使われていた。この曲は、己の感覚では2000年問題より古いと思っていたが、こちらも1999年だったのか。「ポチっとな」でも、過去を象徴する存在として小道具で使われていたモーニング娘。10年後にはAKBがそういうポジションになっているのだろうか。