~熱風の果て~

観劇の記録

AKB48(チームB)

【出演】内田眞由美多田愛佳大家志津香柏木由紀片山陽加小原春香小森美果指原莉乃田名部生来仲谷明香仲川遥香中塚智実仁藤萌乃平嶋夏海米沢瑠美渡辺麻友
開幕からはや数か月、チームB4th「アイドルの夜明け」公演とのファーストコンタクトは決して望んでいなかった姿でやって来た。「美香ちぃの初日が己の初日」と願をかけていたが、それも徒らになってしまった。美香ちぃの卒業発表とともに、己をB公演に導いたのが、レギュラーステージのスタジオ録音版CD3枚の発売。「アイドルの夜明け」公演は、CDよりもまずは劇場で聴きたいという思いがあったので、B4だけは開封せずにいた。レギュラーステージのCDが一部でも発売されたというのは大きな前進だが、発売元がAKSということは、キングレコードからは商売にならないと判断されたということか・・・。未発売のレギュラーステージCDも早いところ出してほしい。
新抽選制度の導入で、「限りある資源」となった可能性もある当選メール。優子たむ出演公演が1日3公演応募可という、10か月ぶりとなる願ってもいない状況だった日曜日のK5の全滅と引き換えに手にした今日のB4の2通の当選通知を握りしめて劇場へと向かった。悲しい初日、敗北感をもたらす初日、B3を超えるようなセットリストは期待できないだろうという後ろ向きの予感・・・。マイナスの要素がうるさいくらいに目の前を飛び交う中、幕が開いて己の半年間の眠りを覚ますべく、夜明けの光が射し込んできた。
M1「アイドルの夜明け」はK3の「友よ」を思い出させる楽器演奏つきの曲。顔が丸くなった萌乃たんのフルート演奏の上品な立ち姿に視線を奪われる。らぶたん隊長のバトンさばきも鮮やか。楽器の方向から音が聞こえてきたので、ちゃんと生演奏をしているようだ。楽器が入ると団結力のイメージが高まる。「友よ」は放課後の1ページという感じの平和なオーラが出ていたが、「アイドルの夜明け」はあくまでもAKBのステージ。ダンス隊を交えて、自然とテンションを高めてくれた。チームBの世界へのゲートとしては申し分ない曲だ。
M2「みなさんもご一緒に」で暖められたテンションを激しく揺さぶられ、M3「春一番が吹く頃」の陽光の中の感傷は上気した心に爽やかな風を運んでくる。M4へのつなぎで特攻服に早替わり。衣装を破り捨てるかのような豪快な萌乃たんの替えっぷりにドキっとした。M4「拳の正義」は正義のスケールとしては俗っぽいが、K4の「メロスの道」を思い出させるバトルシーンが熱い。鋭い眼光の持ち主であるさっしーにこういう世界に入り込ませると迫力のある表情が出てくる。
自己紹介MCを特攻服でやらせるのはちょっとかわいそうな気もする。異様なテンションでMC番長ぶりをアピールするさっしー。初見の客にはインパクトを残すだろうな。今日のMCは名古屋の話題で持ち切り。留守番のしーちゃんも周りを巻き込んでネタにできるとは強くなった。大阪のチームKライブには、ファーストコンサート以来ホールコンサートへの参戦を止めている己も心を動かされたものの、結局は「1Fスタンディング」という席種を見てあっさり断念。小さくてもいい、確実にステージが見える席さえあれば見に行っていたところだが、「これがチームKの今の実力」という責任転嫁の記事に反論できる資格がないのが残念だ。
ユニット5曲は、3-3-3-4-3というバランスのとれた人数構成が特徴。楽曲のバリエーションという点ではK5の4-2-6-3-1の方が上だが、そこは「3人ユニットに捨て曲なし」の格言が勝る。華のあるメインキャストを実力派2人が支えるという構図がいちばん安定感があるのだ。
M5「残念少女」は堕天使系。諦めの笑顔を覗かせるうっちーと絶望感あふれる表情の中塚さんがまゆゆを支える。A5の「恋愛禁止条例」のたかみなは空気携帯だったが、この曲はホンモノの小道具が登場していた。M6「口移しのチョコレート」はゆきりんの本領を遺憾なく発揮させる正統派アイドルソング・・・と思いきや歌詞カード見たら超過激。柳腰という言葉がぴったりのゆきりんのしなやかな動きに魅了されたが、歌詞をチェックした上で見ていたらもっと高まれたのか・・・もったいないことをした!M7「片思いの対角線」は、本来ならばここに美香ちぃが入るはずだったのか。小森さんのパフォーマンスを見るのは初めてだったが、美香ちぃのことを思い出しそうなのと、天然系キャラには警戒心から入るのが己のスタンスということもあって、なるべく見ないようにしてしまった。萌乃たんは忙しい振り付けを演じさせると本当にいい動きをする。点から点への一瞬の動きの切れ味がすごい。一見上品そうに見えて実際上品なゆきりんと萌乃たんは、激しい曲、破滅的な曲ではいとも簡単に飾り気を捨てられるのが強みだ。萌乃たんの「静」にはそれほど惹きつけるものはないのだけれど、彼女の「動」の魅力に無意識に目を奪われているのが己のいつものパターンだ。
M8「天国野郎」はK4「くるくるぱー」系の脳内パラダイスソング。「おしめし」のコスプレ路線はどちらかといえば興ざめだったが、とことんバカバカしくやってくれれば最高!メイドと警官衣装で登場した春香姫のコスプレイヤーとしての天分の発揮が素晴らしい。半年の間でいちばん変わったチームBメンバーといえば、髪を短くした美白はるゴン。高校3年生にはとても見えないという、実はルックス的にだけはロリ系でもあるはるゴンとロリータ系衣装のコラボには新しい地平線が見えた気がした。巫女さんまゆゆが目を閉じて呪文を唱えていると、本当に巫蠱の術を使いこなす呪力によって殺められてしまうのではないかという気分になってしまう。
M9「愛しきナターシャ」はシベリア鉄道系ハードロック。秋元康から松本隆への挑戦状か?3人へのコールに違和感を感じていたら、どうやらこの曲だけは3人が別キャラになり切っているとか。MCではいじられキャラに徹するさっしーが「拳の正義」に続いて迫力の表情を見せてくれる。
M10「女子高生はやめられない」は、AKBにおいてはもはや、過半数を女子高生が占め、なおかつフレッシュさを失っていないチームBしか演じることができない曲。華やかな女子高生アイドル集団AKB48を感じることができる貴重な曲だ。この曲をはじめ、今のチームBのイメージは、夜明けの曙光というよりは、燦燦と最良の刻を輝く真夏の太陽の眩い光彩だ。M11「好きと言えばよかった」はこのセットリストいちばんのスピード感と後悔先に立たず系の重苦しさの融合が己好み。B3の名曲「Two years later」と同じようなテンションの上がり方を感じた。M12「そばかすのキス」は、本来は序盤向きの軽やかな曲調。「好きと言えばよかった」の重く激しい攪拌で凝固した心を融解してくれる。M13「タンポポの決心」は「向日葵」の力強さと方向性は一緒でも慎ましさとささやかさがチームBらしい。
EC1「B Stars」は綺羅星のように舞台に配列されたチームBの面々と一体になれる、BメンとBヲタのための曲。アンコール1曲目としては理想的だ。EC2「横須賀カーブ」は「拳の正義」とロケ地がかぶるイメージで、チームBのイメージとはずれているが、スピード感で強引にねじ伏せるだけのパワーがある。ここまで来てしまえば、締めの曲はもう秋Pお手の物なので何も心配することはなく、B4個人的初日を前に感じていた敗北感は既に微塵もなかった。
結局のところ、B3初日を見たときと同じかそれ以上の高揚を感じる良セットリストだった。盛り上がり、一体感を重視した曲と振り付けによって、激しいテンションの渦をつくり出して押し通していくのは、一本調子になるという危険性もはらむが、今日の2公演はとにかく楽しかった!美香ちぃが復帰していたら、間違いなく足繁く通うことを強く望むことになっていただろう。チームKにこのセットリストではなく、SDNのようなセットリストが与えられたことが恨めしくさえ思えたが、少し考えればチームKは既にこれを演じる時期は過ぎてしまっていることは明白。チームKは他チームとではなく、SDNとの棲み分けを考えなければいけない段階になっていたということに今さらながら気付かされてしまった。