~熱風の果て~

観劇の記録

チャイナ・ディフェクション(女神座ATHENA)@コフレリオ新宿シアター

【作・演出】山口喬司

【出演】橋本耀、横島亜衿、山川ひろみ、高橋希来、木保英里香、横尾莉緒、赤井玲香、北條夢乃、田畑寧々、杉浦月那
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「聖餐のプシュコマキア」以来、2年ぶりとなる女神座ATHENAの第7回公演。その前作は、女神座としては異色とも言える難解なストーリーだったが、今作はアクションも前面に押し出して、観劇初心者にも取り付きやすい、エンタメ性も重視したつくりとなっていた。
舞台となるラーメン屋に狼藉者が現れるという、K.B.Sの「てんいちっ」を思い出させる物語の導入だった。そこでは、酔拳の使い手を演じた山川さんは、途中までは格闘シーンはなさそうな役かと思っていたが、途中から武術に開眼。山川さんの演技では、一見気が弱そうに見えてちゃっかりしたところがあったり、調子に乗ったりといったシーンが好きなので、メイファンの必殺技の連発シーンは魅力的だった。パンフレットで生年を公表するようになった山川さんだが、お団子に髪を結ってチャイナドレスを纏ったときの少女的な透明感はさすがだった。
様々な得物を持った格闘家たちによって繰り広げられる女性たちの戦闘シーンは女神座ならでは。その中でも正統派の拳法で見せ場をつくったマオとおばあちゃんの二人も、本業はアイドルだったり声優だったり。木保さんは、声質やビジュアルも含めて一本気で向こう見ずなところのあるマオ役にぴったりはまっていた。声量の大きさも特筆もので、舞台の世界では大きな武器の持ち主。違った雰囲気で舞台に立つ姿も見てみたいと思った。
橋本耀さんは、2年前の女神座のリーディングシアターに一度はキャスティングされながらチケット発売直後に降板という経緯があったので、主演での出演には少し驚いた。5年半前にAKB劇場で見たときの16歳のイメージで時は止まっていた。当時の魅力だった無邪気な笑顔の記憶と舞台上の姿がなかなか結び付いてこなかったが、気品あふれる宮廷衣装で舞う姿を見たときに、記憶の断絶が少し埋まったような気がした。
ラストシーンは、人間の肉体と魂とを分けて考える宗教的な価値観が受け入れられないと違和感が残ると思う。小皇后ことパイの魂の行方については、最後に誰かが偲んであげてもよかった。もし、魂聯冥破が予定どおり決まっていたら、ランファンが小皇后として君臨することになって、ラーメン屋どころではなくなっていたのだろうか・・・。ストーリー的には取り付きやすさ重視だったのかもしれないが、個性的な登場人物たちを多く配置していたので、もう少し複雑な関係性や、生い立ちを掘り下げるといったところがあってもよかったように感じた。
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