~熱風の果て~

観劇の記録

ザ・エレベーターホール(K.B.S.Project)@コフレリオ新宿シアター

【演出・脚本】山口喬司

【出演】山川ひろみ、木本夕貴、栁川瑠衣、山口喬司、森田猛虎、久保早里奈、中野将樹、森大成、白石恭平、工藤優希、近藤麗音、ジョセフ運生、菅ノ又北都、鈴木咲稀、西川諒多、西田有里、メクダシ・カリル
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山口喬司さん主宰のK.B.S.Projectの記念すべき20作目。10年以上にわたってジャンルを問わない作品をつくり続け、劇場で上演し続けるということは並大抵のことではない。作品の質や笑いの要素に関しても心地よく、安心して見ることができる。これまでは20分の4しか見ることができていないが、これからも続いていくという山口さんの挨拶を聞いて安心した。
主演の山川さんも、K.B.S.の第6作から積み重ねたキャリアはちょうど10年。謙虚な姿勢やフレッシュさを失うことなく、確かな演技力を見せる彼女は、もはやK.B.S.の申し子のような存在だ。これまでヒロイン的な準主演ポジションの役を見ることが多かったが、今回は主役で、とにかくよく動き、喋り、感情も表情も変わる。ひとつの作品の中でこれほど様々な面が見られるのは珍しいが、引き出しの多さに感服させられもした。
小劇場のセットとは思えないような精巧なエレベーターの造形の前で、場の転換を一度も行わずに、扉が開いては閉じ、人が乗り込んでは降りと、息つく暇ないスピード感で劇が進行していく。扉が開くタイミングをずらしたり、死角をつくって人物同士をすれ違わせたりと、2台のエレベーターが効果的に使われていた。
森田猛虎さん演じる警備員は、台詞はほとんどないにもかかわらず、動きや表情に味があって、何もないときでも、つい警備員室の方を見たくなってしまう。耄碌しているかのような警備員が、最後にしゃっきりとして大仕事をやってのけるという展開は、意外性と暖かみがあった。ひと世代違う役者と共演するようになったことに感慨深そうな森田さんだったが、中野さんや森田さんのようなベテランの安定感と、二役を演じ分けて貫禄も出てきたジョセフ運生さんのような中堅、さらには若手の役者たちのパワーの融合が、K.B.S.の魅力になっている。今回はそこにメクダシ・カリルさんのような飛び道具も加わり、登場人物一人一人のはっきりとした個性と、役者の個性が融合して、バラエティあふれる舞台空間となっていた。
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