~熱風の果て~

観劇の記録

天皇の系譜(カプセル兵団)@八幡山ワーサルシアター

【作・脚色・演出】吉久直志

【出演】伊藤栄次津久井教生植村喜八郎、長谷川てるや、こぶしのぶゆき北原知奈、北出浩二、永澤菜教小見川千明、伊藤未帆
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6月の北欧神話編に続き、アクティブイマジネーション朗読劇を観劇。
この朗読劇では、神武東征、サホビメとサホビコ、ヤマトタケル神功皇后仁徳天皇イワノヒメ、マヨワ、雄略天皇といったあたりにスポットを当てながら読み進められ、オケとヲケの物語で神話の役割は終わり、幕を閉じる。
天皇・皇族といえども喜怒哀楽を表に出し、過ちも犯せば、嫉妬もするし、色香に迷うし、騙しもする。アドリブを多く交えて、本職の声優たちが本気で演じれば、その筋の通ったカオスの世界はますます人間的になる。今回は、喋るときには椅子から立ち上がって演じられたので、演じているときの表情がよく見えたし、ダイナミックなアクティブ感が増していた。いったんハケた津久井教生さんが、ニャンちゅうTシャツを着込んで指人形まで仕込んで花道からお菓子を配りながら再登場したり、一発芸コーナーが挟まって北出さんの宙返りまで飛び出すなど、終始自由に、笑いに包まれながらの舞台進行。
そこに挟まるしんみりとしたシーンが、マヨワとツブラオオミの物語。基本的に、天皇の歴史は勝者の歴史であり、その正統性を示すためのものなので、劇中にもあったように、勝てば官軍的なところがある。だからこそ反逆者・敗者の側にも光が当たるシーンは美しく感じた。
日本で生活していても、なかなか知る機会が少ない日本神話の世界。少なくとも、教育の場で日本神話に関することを教わった記憶は全くない。日本神話というものがあることを知ったのすらだいぶ後になってからだ。愛読していた小学館版のマンガ日本の歴史でも、卑弥呼の次は継体天皇で、神話的なエピソードは、稗田阿礼ヤマトタケルを語る一コマくらいしか出てこない。一方、大人になってから古本で買った、昭和42年刊行の集英社版のマンガ日本の歴史では、第1巻の大半を使って、神武東征、ヤマトタケル神功皇后仁徳天皇雄略天皇、オケとヲケ、継体天皇まで詳しく描かれている。
いろいろな事情があって教育の現場からは葬られてしまったと思われる日本神話だが、物語として見ると、よくできているし、単純に面白い。仏教伝来から鎮護国家、廃仏毀釈国家神道、戦前戦後の教育政策など、歴史の波にもまれ続けて毀誉褒貶を繰り返しても、なお脈々と生き続けるヤオヨロズの神々の世界の魅力を再認識できた朗読劇だった。
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