~熱風の果て~

観劇の記録

苦闘のラブリーロバー(マシンキカク)@劇場MOMO

【演出】こいづか登【作】羽仁修

【出演】坂口和也、石川竜太郎、谷沢龍馬、遊佐航、牧田雄一、妃野由樹子、小日向茜、瀬野るりか、大門与作、八幡カオル
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小日向茜さんが出演するクリスマスらしい作品を中野で観劇。内田順子さんの自主ライブを見るために初めて訪れてから早13年、劇場MOMOに初めて入場して、中野のポケットスクエアにある4つの劇場をようやくコンプリートできた。
「マシンキカク」という演劇プロジェクトの旗揚げ公演となるこの作品は、過去にも何度か上演されたことがある有名な作品とのこと。ラブリーロバーこと泥棒のお兄さんが、盗みに入った先のシェアハウスの住人たちに見つかって、色々なひとたちの関係者を名乗りながら乗り切ろうとしていくというコメディ劇。
泥棒さんが、この住人にとっては電機屋でこの住人にとってはヤクザで・・・と彼自身の混乱を、観客も一緒に体験できる。泥棒さんは別に捕まってもいいかと思いつつ、狭いシェアハウスの中でごちゃごちゃになった嘘の人間関係の網をすり抜けるように、いかに破綻させずにギリギリのところを進んでいくかという脚本の展開には、ゲーム感覚のようなスリル感があった。
フライヤーのビジュアルのイラストに描かれている泥棒さんを演じた坂口さんは、舞台の上でもイラスト以上の冷や汗・大汗を流しながらの演じていた。毎公演あれだけ体力を使いながら演じていると思うと頭が下がる。「バック島」にも出演していた谷沢さんもかなりの汗をかいていたし、彼らだけでなく、90分間とやや短めの上演時間全体が熱量が高く、密度が濃い作品だった。ただ、泥棒さんは、やっぱり盗みを重ねてきた過去があるのだから、できれば自首の道を選ぶか、償いをどう果たしていくのかというところまでラストで見せてくれた方がよかったかな。
2012年のK.B.S作品「てんいちっ」に主演した遊佐航さんのことを見るのはそれ以来。当時16歳という若さで身体を張った文字通りの体当たりの演技を繰り広げていた彼も成人。少し気の弱い好青年の役を、落ち着いた感じで演じていて、5年前の姿を思い出すと何だか感慨深かった。感情を爆発させる場面と、その後の和解シーンは、コメディ色の強かったこの作品に暖かな明かりを灯した。
小日向さんは、アイドルの卵・「あいあい」役で出演。どこかで聞いたような名前だが、小文字じゃないからいいのか。少し空気の読めない感じを、無邪気な笑い顔とイントネーションを平らにした喋り方で上手く表現していた。テーマソングの「アイアイ」を振り付きで歌う姿が可愛らしい。ワンレンに憧れて前髪を伸ばしていた小日向さんは、あいあいの役柄に合わせて前髪を切りそろえ、アイドルらしいビジュアルに。「リングのリア王」のときは、少しでも強そうに見せるために食事によってウエイトを増やしていたというから、さすがの役者根性。アイドル上がりだからと思われたくないという気の強さも向上心へとつながっている。
今回は「バック島」の時に続いて、生写真にサインをしてもらえる機会があるのもうれしい。あいあいと泥棒さんが出会った幼少時代から、アイドルの卵と泥棒として再会するまでの間の二人の人生に思いを馳せる小日向さんの感性は素敵だと思った。卒業ライブ以降、5つの舞台作品を休む間もなく駆け抜けた彼女。グループ卒業後は舞台で会える機会が出てくるかもと期待はしていたが、これほど多く会えるというのは嬉しい誤算だった。次の舞台作品は今のところ未定とのことだったが、精力的な活動がまた見られるのは間違いないと思うので、次の情報を楽しみに待っていたい。
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