~熱風の果て~

観劇の記録

ダーリンの進化論(劇団まけん組)@恵比寿エコー劇場

【脚本・演出】江戸川崇

【出演】松井勇歩、石井陽菜、中口翔、諒太郎、星守紗凪、加藤学、小玉百夏、原田麻里子普光院貴之、花田昇太朗、堀田優希、大仲マリ、荒木未歩、平井杏奈、根本羽衣、藤白レイミ、園部未卯
f:id:JoanUBARA:20171210212334j:plain
9月の「バック島」、11月の「とナン」に続いての江戸川作品の観劇。劇中でヒーローのベルトに輝いていた「まけんグミ」は、実際に愛知の製菓会社が商品化しているらしく、今回旗揚げされた劇団だけでなく「まけんグミ」ライブイベントなども行われているようだ。ヒロインの石井陽菜さんはじめ、女性陣は、他の舞台などで馴染みの顔が多かった。
過去への干渉が間接的か直接的かという違いはあれ、不幸な未来を変えるという点では「バック島」に近い設定。「花蓮華さん」という同じ名前のキャラクターが、性別が違っても登場していて、記憶の上書きといった要素も共通していた。題名のパロディ色は「とナン」のように、マンガ作品の題名そのものではない方向に出ていたが、メインキャラクターが「とらえもん」に「とびた」で、トラエモンが未来からトビタの過去を変えにやって来る、というどこかで聞いたような設定。「僕とらえもん」という台詞だけで笑いが取れるというのは美味しい。
ドラえもん」では、セワシドラえもんを送り込むのは、のび太の結婚相手を変えることで自分が幸せになるというエゴ目的なのだから、実は恐ろしい。ドラえもんを過去に送り込んだセワシが、のび太ジャイ子の子孫ならば、結婚相手が変わった瞬間にのび太ジャイ子の子供たちもろともセワシも消滅するはずなのだが、その辺りは色々な考察もされているようだ。
この舞台は、基本的にコメディで、阻止されるべき未来がどれだけ酷いものなかという描写まではなく、悪の側も愛すべきキャラクターたちなので、気楽に見ていられる。バトルシーンが多くあったのは、ビジュアルからすれば予想外で、迫力のあるアクションが随所に見られた。進化した紅太郎は意外と格好良い。アクションで大活躍していたのが、ダストクイーンを演じた、過去には「戦国降臨」シリーズで見たこともある小玉百夏さん。少しセクシーな衣装に身を包んでの男性陣相手のバトルには、悪役とはいえ思わず応援したくなってしまった。アドリブに笑ってしまったり、セットの段差につまずいてしまったりという素の部分が顔をのぞかせるところがまた愛おしい。
「とナン」に続いての出演となった星守紗凪さんは、愛憎入り混じった複雑な心を抱えて素直になれずに企みに手を貸してしまうお嬢様役。こういう癖のある役で出てくれる方が嬉しいし、彼女にとっても役者としての成長につながるはず。ビジュアルも声質もお嬢様役にはうってつけなので、それが余計に憎たらしさを増幅させていて、キャスティングとしてはまっていた。
元チアチアの平井杏奈さんは、派手なパンツを履いて、何一つためらいのない表情と動きでパワフルに笑いを取りにいっていた。女性客の方が多い舞台でこれだけやり切って笑いを取れるというのは素晴らしい。完全に役者として独自の地位を築きつつあるし、いろいろなところから引く手あまたになっていくだろう。
【⇒これまでの観劇作品一覧