~熱風の果て~

観劇の記録

メトロノウム(ENG)@日暮里d-倉庫

【演出】福地慎太郎【総合演出】佐藤修幸【脚本】宮城陽

【出演】竹内尚文、水崎綾、図師光博、中野裕理、門野翔、内山智絵、星璃、遠藤沙季、宮森セーラ、齋藤伸明、太田達也、松木わかは、澤田圭佑、斉藤有希、CR岡本物語、井上賢嗣、鶴愛佳、谷川華子、福岡みなみ、朝比奈叶羽、結城美優、出井景梧、岡谷未来、こはる、石部雄一、夢麻呂
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荒涼としたメルヘンチックなビジュアルと不思議で複雑そうな世界観に惹かれ、水崎綾さんがヒロインを演じるENGの公演を観劇。2回目の入場となるd-倉庫はどこからでも見やすい、いい劇場だ。
前半は「おもちゃ箱をひっくり返したような」という表現がぴたりと当てはまる、音と光とセリフが高速回転一糸乱れぬ雑然さ。場の転換が暗転ではなくて、出演者が駆けながら舞台裏と総入れ替えしたりするので、スピード感と躍動感が強く感じられた。そのスピード感と明るさの中に静かに入り込んでくる違和感と黒い霧。人間とアンドロイドとフィギュア。完全に通じ合うことはできない、埋めることができない断絶と、その中でも通じ合う心のようなもの、どちらも切ない。メトロノウムの外の世界の整合性には疑問があったり、全体としては殺陣に割く時間が長すぎたような感じは受けたが、人間にとっての真の幸福とは何か、人生の意味、価値といったものまで問いかけてくる、骨太のテーマがあった。メトロノウムは物語の中のように実体化されたような姿だけではなく、現実世界でもありふれたものになってきていて、知らぬ間に取り込まれているのかもしれない・・・。設定や人間関係が観客に隠されたまま演じられる時間が長かったので、2回見るべき作品なのだが、チケットは1公演しか買っていなかったので、公演DVDを予約した。
キャラクターたちの衣装は個性的で華やか。時間を操るウサギコンビのちょこまかした動きやセリフが可愛らしい。メトロノウムの振り子の動きはコミカルではあるのだが、その意味が分かると悲しくもある。4人のハンプティダンプディを一人で演じ分けたCR岡本さんの演じっぷりは見ものだった。
ヒロインを演じた水崎さんの演技を見るのは「冬椿」、「PLAYROOM」に続き3作品目だが、過去に見た作品で演じた役柄とは全く印象が異なる、新たな姿を見ることができた。前半の世間知らずで向こう見ずなお嬢様風から、後半の覚醒の迫力。稽古期間中に夢麻呂さんからド根性ぶりを称賛されただけはある、いい女優さんだ。
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