~熱風の果て~

観劇の記録

アルキミコ(u-you.company)@TACCS1179

【演出】中山浩【脚本】すぎやまゆう

【出演】水野奈月、小田島渚、杉山夕、鷹村遊、伊集院友美、林由莉恵、木庭美咲、三品璃乃、ふくち笑也、結城かえで、徳永優羽、アイドル鳥越、海老沢茜、松田美咲、花川怜奈、月乃彩花、荒井芳美、小笠原佑花、木ノ本かいり、元澤めぐみ
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己が観劇生活に復帰する契機となった「ドールズハウス」を送り出した、杉山夕さん主宰の「u-you.company」の新作を観劇。名前を知っているキャストは「ドールズハウス」に出演していた杉山さんと木庭さん、徳永さん、月乃さん、林さんだけだったが、今回もきっと良質の演劇を見させてくれるはずと期待して、発売初日にはチケットを購入していた。その期待は外れることなく、終演後はDVDを予約してきた。
戦国の史実の歴史の流れを下敷きに、翻弄されながらも力強い女性たちの生き様、死に様が描かれる重厚な作品。家名を残すために親兄弟が敵味方となる道を選んだ主君のため、自らもまた掟に従って情を捨て、敵味方に分かれ、死に方を誤ることなく散っていく歩き巫女たち。一般の人間的な感覚から言えば、従わでもと思うような不条理な掟をひたすらに守る彼女たちが健気で痛々しい。同時に、掟を受け入れつつも端々から迸り出る人間的な感情が胸を打つ。安易に現代的な感情論に流すことなく、最期まで「歩き巫女」として生かし、死なせる演出を貫くことで、彼女たちの尊厳が保たれた。
昌幸や小松姫の家族愛は美しくはあるが、その裏で主君一家の想いを遂げさせるために、いとも簡単に投げ打たれていく命。素敵な殿方にめぐり合うことを夢見て、どんなタイプが好きかと、現代の女の子と変わらないような他愛もない話をしていた子が、次の瞬間には武器を手に取り、傷つき、自決をする。傷つけ合い、死に行く今わの際に発せられる言葉が、彼女たちの儚さをより増大させる。家族愛の美しさも主題のひとつではあるのだが、戦で親を殺されたといった設定の歩き巫女たちなので、余計に「生命の格差」といったものも感じて苦しくなった。
歩き巫女たちが戦う中で、舞台の中央で舞う小田島さん演じる竹林院。その舞姿が美しいだけ、戦いの悲劇との対比が浮き彫りになる。日本舞踊でも嗜んでいるのかと思って小田島さんのプロフィールを覗いたところ、踊りは踊りでも特技はフラダンス!衣装の着こなしや上品な立ち居振る舞いと物言いなど、すべての面で戦国の時代の女性を華麗に演じていた。ラストで小松姫から紐を贈られるというエピソードが「真田紐」につながるというあたり、考証がなかなか細かい。嫁入り前から「竹林院」と尼みたいな名前というのはいかがなものかと思ったが、彼女の実名は伝わっていないとのこと。姫と和子とで誕生の喜ばれ方が違うということに、小松姫が異を唱えるシーンがあったが、身分があったとしても、誰の子で誰の妻で誰の母かということのみが伝わるのがこの時代の女性たちだ。
初日を迎える前に、チケットは全公演完売。知らない出演者が多いので、パンフレットも買おうと思っていたが、土曜日の時点で、すでに売り切れとなってしまっていた。パンフレットそのものの商機だけでなく、出演者のことをより深く知ってもらえる機会も逃すことにもなるので、もったいない。もうひとつ、改善点としては前説。出演者によるカゲアナでよかったのではないかと思う。
次回のu-you.companyは、投票で圧倒的な支持を得た「ドールズハウス」の再演が早くも決定。場所は池袋のBIG TREE THEATER。全公演満席の実績を引っさげてとはいえ、初演が下北沢の小劇場だったことを考えれば、なかなか挑戦的だ。当然、出演者の入れ替えもあるだろうが、ヒロインを演じた「ドールズハウス」以来、再び休養の時間を迎えている、いいだゆかさんの復活の舞台となれば申し分はない。
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