~熱風の果て~

観劇の記録

AKB48(チーム4)「アイドルの夜明け」公演@AKB48劇場

【出演】岩立沙穂岡田彩花岡田奈々加藤玲奈北澤早紀小林茉里奈込山榛香佐々木優佳里佐藤妃星篠崎彩奈高島祐利奈土保瑞希西野未姫向井地美音村山彩希茂木忍
前回から2か月少しぶりの劇場での公演観劇。この間にいくつかの時代が過ぎ去ったような感覚がある。
まずは、大島優子たむの卒業。2006年の4月、己がはじめて劇場に行くことを決断した理由の全てが彼女のAKB入りという選択だった。彼女のことを「脳内卒業」と、送り出した気になって既に久しい。劇場最終公演に応募だけはしたが、味スタに行くでもなく中継を見るでもなく、彼女の卒業をこれほどあっさりと迎え、その意味を吟味することもなく受け流すだけになるとは、昔の己であれば想像もできないくらいだ。それでも、やはりひとつの時代が区切られたのだという感慨は徐々に強まっていくのだろう。もし彼女がAKBのオーディションを受けていなかったならば、己は現在のメンバーの顔もほとんど知らずに過ごしていたことだろう。それ以前に、AKBも今とだいぶ違った歴史を辿り、今の姿とは異なったものになっていたはずだし、何人かは芸能界に足を踏み入れることもなかったかもしれない。己にも、AKBにも決定的な影響を与え続けた大きな存在だ。
オリジナルKメンも、いよいよ少なくなった。今朝はなぜか、その中のひとりの「卒業記念握手会」に参加する夢を見た。会場入口には、本物のネギとぬいぐるみのネギが用意されていて、それを選んで握手会会場に入ろうかというところで目が覚めた。何かの暗示なのか・・・?
何かの刑を執行するためかとすら思われるほどの、小ぢんまりとした劇場に似つかわしくない大掛かりな機械。手荷物の持込禁止など、劇場の警戒レベルが上がったのは、2008年6月の秋葉原事件がきっかけだった。その当日、劇場公演を見るために秋葉原を訪れ、道路が封鎖された様子を見ただけの己の心にすら、この事件はいまだに棘を残す。ましてや、岩手のあの現場に居合わせたメンバーへの影響はとなると、とても思い及ぶところではない。劇場が、ベルトまで外さなければ入れない空間になってしまったのは残念だが、これまで大きな事故がなく公演が演じ続けられてきた積み重ねを崩さないためには、これも受け入れなければならない。入場に手間がかかってしまうので、なかなか呼ばれないと待っている時間が長く、終盤戦まで突入してしまうと心理的にも余計に辛い。
昨年の11月に夜空を照らすように燦然と現れたチーム4。望みをかけながら楽しみに眺めていたら、望月になることすら待たずに群雲がその姿を隠してしまった。そして、曇り空の後にやって来たのは「アイドルの夜明け」。かつてチームBの最後を飾ったセットリストだ。当時は、美香ちぃの復帰を待ち続けて叶わず、公演を見ても暗澹たる気持ちになってしまい、チームBにも劇場の空気にも馴染めなかったような記憶がある。そういう事情を除いてセットリストを取り出しても、その魅力は己には理解しづらいものだった。パロディ的で表面的な設定の楽曲群がセットリストの流れを容赦なく寸断するし、核になれるだけの楽曲もない。B3「パジャマドライブ」公演と比べてしまうと雲泥の差だった。
そんなわけで、当時は8回しか見ずに終わってしまい、その後もDVDやCDで振り返ることも、総括することもなく放ったらかしにしてしまっていた公演なので、こんな楽曲もそういえばあったっけと、怪しい記憶の糸をたどりながら、その曖昧さに自ら驚いたりしていた。
チーム4「アイドルの夜明け」公演の個人的初日は、さっきーの17歳の誕生祝公演。以前のようにチーム4公演が他チームより多く組まれるわけでもなく、のろりんずが揃う公演は少ない中で、なかなか個人的初日を迎えられずにいたが、それがさっきーの誕生祝ならば申し分ない。ここ1年は、公演にしても握手会にしてもモバメにしても、AKB全体のことは差し置いて、ひたすら「のろりんず」を追うようになっていたので、昨年10月のさっほー19歳の誕生祝公演に続いて、さっきー17歳の誕生祝公演に入れたのはありがたい。
さっきーにとっては、1か月ぶりとなる公演出演。昨年、AKB劇場出演回数で、ぴっかりんを抑えて1位に輝いたさっきー。今年の選挙ポスターにも「わたしがNo.1!」とその事実が誇らしげに書かれていたように、いつも控えめな彼女が自信を持つことができ、大事にもしている記録だった。そんなさっきーが直面した、公演があっても呼ばれないという日々。まさにアイデンティティの危機。誕生祝でも、その悔しさを、涙を光らせながら吐露していた。昨年からは、徐々に貪欲な部分も見せてきている中で、「4Stars」の歌詞そのままに乗り越えてほしい。17歳になって、モバメの写真では時折色っぽさも覗かせることも出てきたが、序盤から嬉し涙を流し、誕生祝では少し甘えたような子供っぽい口調にもなったさっきーの純粋さは不変のものだ。
「B Stars」が「4 Stars」になった以外は、B4と特に変わったところはないかな。「フォーフォーフォフォフォ・・・」というのは悪い冗談のようだったが。「女子高生はやめられない」のぬいぐるみは代替わりはしているんだろうけど、昔と同じモデルなのだろうか。ジャンケンは「お約束」でさっきーが優勝で「たかーく」ポーズで締めていた。
シングル曲の「ラブラドールレトリバー」も演じられた。最近はシングルが出ても再生しないままになっていることも多いので、この曲は今日の公演で初めて聴いた。AKBの楽曲が自然に耳に入ってくるような生活もしてないし、ここ数年のシングル曲に関しては、完全に一般人以下に成り下がっている。さっきーはソロパートもあって、いいポジションだった。
誕生祝の司会とお手紙担当は、どちらもさっほー。のろりんずは冒頭の「アイドルの夜明け」から対称の位置にいるし、「アリガトウ」では上手でじゃれ合うようなところも見られた。公演で喋ると、のろりんとしたぶりっ子口調で、常にさっほーワールドを作り上げる。だんだんと個性が確立されてきた。「口移しのチョコレート」は、人間であることを疑いたくなるくらいのevil fairyぶりで、舞台上を獲物となる迷える子羊を求めて飛び回っているかのような、可愛らしい邪悪さだった。「天国野郎」バックダンサーでのメイド衣装もなり切って楽しんでいるようだった。誕生祝での司会は、前半、これで感動の流れにもっていけるのかと少し心配になったが、さっきーの感受性の豊かさに助けられつつ、のろりんずの絆もあって、しっかりと笑いもとりつつ、泣かせていた。
MCでは歯に衣着せぬ物言いで盛り上げ役になりつつあるみきちゃんは、曲中の突き抜けた表現はいまだ健在。彼女もまた劇場でこそ最も輝く存在だ。ゆいりーはだいぶ髪が伸びていて、さっほーと一瞬見分けが付かなかったりした。新たに設けられた劇場公演Webアンケートのダンスパフォーマンス部門には、ゆいりーの名前を入れて送った。残念少女みーおんの台詞は介入を拒絶するように憎々しく語られた。「横須賀カーブ」などでも、豊富な経験と素質が見えるような表情の作り方をしていた。
れなっちさんは2年ぶりに見たので、まだ触角のイメージと今のアイドル然とした姿がつながらない。さっきーの誕生祝の司会やお手紙はれなっちさんの可能性もあると思ったが、公演ではまだお互い遠慮しているよう。近くに来ても、さっきーと積極的に絡むようなところはなかった。それでも二人の心は通じ合っていることだろう。
今日は、誕生祝という特別な雰囲気もあり、再編前のチーム4のメンバーが過半を占めていたこともあり、再編前と同じようにチームとしての魅力も感じることができた。もはやチームを意識して見ることが正しいのかすら分からなくなっているが、生の姿から感じたものは、素直に受け取りたい。