~熱風の果て~

観劇の記録

ルクリアクリア(女神座ATHENA)@高田馬場ラビネスト

【作・演出】山口喬司

【出演】山川ひろみ、篠原冴美、市川咲、三田寺理紗、古河結子、秋山ゆずき、日野ありす、里佳津乃、辻野泉葉前田明日香
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女神座ATHENAの1年半ぶりとなる、3回目の公演。
この1年半の間に、日テレの企画で最終選考まで勝ち残った山川さん。そもそもアイドル番組を見る習慣がない上に、いかにヲタの資源が投入されたかで選ばれ、過程が目的化しているとしか思えないこの手の企画への嫌悪感もあり、一度も番組は見なかったが、山川さんのランキングはチェックしていた。いろいろな力学も働くであろうこういった場で、はかばかしき後ろ見しもない彼女が最終まで残ったということだけでも快挙と言える。最終的に「控え室で名前が呼ばれなかった」のは、かくのごとくにやあらむ。
舞台はサンタ学校。サンタの血を引く主役のルクリアは、ATHENAでは満を持しての主演となる山川さん。魔法少女風の制服姿が彼女によく似合っていて可愛らしい。性格的にも、山川さんがそのまま投影された感じなので、舞台上での彼女の演技を安心して楽しむことができる。地上波を経験したことで変わっているかも、なんてことも思っていたのだが、稀有なキャラクターである彼女は彼女のままで成長していたことが確かめられた。
ルクリアのライバルである魔術師の血を引くクレマを演じたのが、16歳の市川咲さん。ツインテールの制服姿で、ツンと顎を上げてルクリアに絡んでくる姿はまさに小悪魔。美声の持ち主でもあり、K5の頃の全盛期のともーみのイメージそのものだった。カーテンコールではそういう印象は薄らいだが、クレマというキャラクターがそれだけ彼女に憑いていたということか。まさにはまり役だった。
古河さんは言うに及ばず、脇役陣も複数の役をこなしつつ奮闘。3作連続での出演となった三田寺さんは、もはや欠かせない存在。田舎の女子高生役がどうしてこうも似合うのかと、彼女の演技ぶりにも感服した。先生役の秋山さんのぶっ飛び方も素晴らしい。20歳でここまで個性を全開にした演技をできる人はそうそういない。
高田馬場ラビネストというホームグラウンドを持つのが女神座ATHENAの強み。紙コップが床下からの空気でふわっと浮き上がるだけでも面白い。下半身をぬいぐるみで模したそりレースは微笑ましく、大掛かりなソリマシーンは迫力があり。舞台の狭さが逆に強みになっていた。前作「ぱじゃおじゃ」の方向性が個人的に合わなかったので、多少の不安はあったが、今作はストーリーと笑いのバランスが良く、キャラクターも個性があって感情移入でき、心から拍手を送れた。やっぱり、見ていて登場人物を応援したくなるか、ファンになれるかというのが、舞台を楽しめるか否かを決する一つのポイントだ。「ぱじゃおじゃ」はそこが少しばかり弱かった。
思うところなきにしもあらずの女神座ATHENAだが、良質の舞台を提供してくれることに感謝しつつ、今後も純粋に「作品」を楽しんでいきたい。
物販では、心待ちにしていた「冬椿」のDVDを購入。もう2年前になる作品だが、映像で見返しても鮮烈な感動がよみがえる名作だ。年明けに池袋で上演されるチアチア原田さんの舞台も見に行くぞー。