~熱風の果て~

観劇の記録

心は孤独なアトム(STRAYDOG)@池袋シアターグリーンBIG TREE THEATER

【作・演出】森岡利行

【出演】仁藤萌乃、柴田明良、瑛蓮、阿井りんな、住吉真理子、佐藤仁、三原大樹、仁科咲姫、生田若菜、近藤佑帆、石田政博、酒井健太郎、中原和宏、澤野泰誠、西畑まどか、高橋千夏、木村文哉、松浦康太、南愛美、基村樹利
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Seedlingを含めて、観るのは3作品目となるSTRAYDOGの舞台。昨日の夜公演のチケットも買っていたのだが、それを承知で秋葉原での誕生祝公演に申し込むことを決断したために、東京公演の千秋楽の1回のみの観劇となった。
舞台序盤から、ちょっとしたセリフをきっかけに次元が転移し、役者たちのパワーが激しい台詞回しと身体の動きで舞台上を飛び回る。ビッグバン直後の宇宙はこのようなものであったのだろうかと思わせられるような、高熱が凝縮された非日常的な光景によって、惑わされながらも舞台にどんどんと引き込まれていく。
ミュージカル仕立てにもなっていて、随所に入ってくる歌や踊りも、時にはしっとりと、時には激しく、プロによる稽古の成果が発揮されていて、見ごたえがあった。若者だけでなく、おぢさんまで裸になったり叩かれたりと身体を張る凄まじさよ。
目まぐるしく転換し、全く異なる時間と空間で繰り広げられる3つの場面。どれが現実の世界なのかすらよく分からないこれらの場面が、終盤でひとつに重なるときの緊張感。本格的な演劇の醍醐味を久しぶりに味わった気がした。
繰り返し朗読された谷川俊太郎の「死んだ男の残したものは」。武満徹の作曲でベトナム戦争の時代につくられたこの歌のことは、高石友也のアルバムで聞いたことがあるが、高石バージョンでは歌われていなかった最後の一節は初めて聞いた。
主演の萌乃たんは、何とこの舞台の稽古中に左足骨折の重傷を負うというアクシデントに見舞われていた。セーラー服を身に纏い、傷めた足にはギブスをはめ、片足にローファー、もう片足には保護用の靴を履いての熱演。アドリブパートでは、そのケガをいじられてもいた。センスと根性の塊りであり、己が尊敬する女性の一人でもある萌乃たん。舞台での演技を見るのは今作が初めて。「らめらめ」のときは、彼女が主演の回はいちばん早くに売り切れてしまったし、わさみん主演回を優先したために見ることができなかったのだ。
舞台の演技と映像の演技の違いを認識し、舞台の演技の難しさを実感していたことのある萌乃たんだが、劇場公演でも己の目を釘付けにした、鋭く刺し込んでくるような表情は舞台向きと言える。このような中規模の劇場で、舞台を主戦場とする役者に囲まれて、アクシデントを乗り越えて主役を張ったという経験はこの先に生きてくるはず。
劇場公演で汗をかくことがなくなって、顔の肉付きにはそのあたりの影響も見られた。活躍の場を広げるためにも、もう少しだけ絞ってほしい・・・なんて言うのは失礼すぎるか。己にとって最後のチームK公演以来、まる2年ぶりにお目にかかったが、やはり彼女の持つ雰囲気、舞台での振舞いが好き。できるならば、もう一度あの頃の「RESET」公演を見たいとも思ってしまったが、その足跡は、13期の後輩にリスペクトされ、受け継がれようとしている。
終演後、見送りの列に加わっていた彼女に軽く挨拶したら、思いがけずポンとハイタッチが飛んできた。覚えていてくれたようで光栄。フォトブック、まだ残っているようだったら買おうかな・・・