~熱風の果て~

観劇の記録

ラズベリーガール@中野ザ・ポケット

【脚本】守山カオリ、【演出】扇田賢

【出演】前田希美、斎藤亜美、金城成美、渡辺ありさ林あやの、大西颯季、川嶋由莉、渡壁りさ、仁藤みさき伊藤桃藤田薫子
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これまでに見た作品では、「幸福レコード」、「ラスト・ホリデイ」を手がけた脚本・演出家コンビによる作品。主催がMXTVで、来週には舞台版のスピンオフドラマが放映されるらしく、DVDの販売受付も行われていた。ガールズ演劇とアイドルライブの二本立てという触れ込みながら、「アイドルライブ」は、アイドル衣装に着替えた出演者が全員で2曲歌っただけ。あまり二本立てという感じでもなかったが、普段は様々な活動をしている出演者たちがひとつのグループのように振る舞うのはこういう舞台ならではであった。
物語は、主に現代から語られる過去・・・といっても過去が2013年という設定なので、未来から語られる現在と言うべきか。過去の中にも更に過去が語られる入れ子的設定で、これらの時代を結びつける存在として、亡くなった元演劇部員の「幽霊」が介在する。こういう設定では、現在と過去の物語が並行して進むのが常だが、この作品では、「現在」は、過去を語ることに主眼が置かれ、ストーリーが発展するということはなかった。そこはテレビドラマで詳しく描かれるということなのだろうか。
亡くなった元演劇部員が遺した脚本は、改変したり加えたりすることが許されず、いじくろうとすると雷が落ちる。しかし、順番を入れ替えることは許されるという。そして、入れ替えることでバッドエンドをハッピーエンドに変えることもできる。ここに、人生における所与の条件は変えようがなくとも、意識の持ちようであったり、行動しだいでいかようにも良いものにできるというメッセージが込められている。恐ろしい罰であるはずの雷でさえ、使いようによってはハッピーエンドへの契機となる。そして、劇を演じることにより、演劇部のメンバーたちもまた、それまでの自分を乗り越え、成長していくのだ。
「Alice in Deadly School Alternative」でも主演した前田さんは、コミカルな演技をさせれば存在感を遺憾なく発揮する。斎藤亜美さんは、ひっつめ髪に眼鏡の地味を装うキャラクターだったが、髪をほどいたライブパートではアイドルらしさを見せてくれた。MCでの表情の豊かさはいつもながらおもしろい。幽霊役の大西さんは、立っているだけで独特の存在感がある。すぐに打ち解けてしまったのが勿体ないくらい、もう少し神秘的な、謎めいた存在でいてほしいと思わせらるくらいだった。
「Pirates of the Desert」に日替りゲストとして出演していた仁藤みさきさんは、先生アイドルユニットに所属しているということもあってか、落ち着いた先生役。その役柄上、声を張るような場面はほとんどないのだが、日常と同じような声量で物静かに話すのと、舞台の発声として物静かに話すのとは全く違う。そのあたりは、やや経験不足が露呈してしまったような印象だった。
「幸福レコード」にも出演していた、うさぴょんこと渡辺ありささんは、ダブルキャストながら、最初から最後まで舞台に出ずっぱり。芸歴豊かという設定に相応しく、持ち前の抑揚のある台詞回しを存分に堪能することができた。ツインテールでアイドルらしさも醸し出していたし、稽古シーンでの体操着姿も見ることができて満足なり。
わさみんの妹こと林あやのさんのことを見るのは4年2か月ぶり。K5の「愛の色」に出演していたときは、わさみんとの見分けが全く付かなかったっけ。当時は妖精と言われていた彼女は、今は宇宙人と言われているのか。20歳になった彼女は、当時の印象からすれば、すっかり綺麗に変身していて、背も伸びたような気がしたが、細くて心配になるほどの手足はあの頃のまま。外国生まれという設定をとことん楽しんでいるような演技ぶりだった。