~熱風の果て~

観劇の記録

時空警察ヴェッカー1983(アリスインプロジェクト)@笹塚ファクトリー

【脚本】畑澤和也、麻草郁、【演出】吉久直志

【出演】加藤里穂菜、玉川来夢船岡咲、栞菜、金澤有希山本千尋横山利奈、那奈、渡辺ありさ、五十嵐夏実、田井中茉莉亜長沢美樹宮原華音、春原優子、遠藤瑠香、綾乃彩、金田瀬奈、門田紗季、勝田麗美、鍵谷まみ、新平真里亜、小林千莉、花音、浅田愛、鶴原文香、中山泰香、水野奈月、森沢碧音、山崎涼子
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アリスインのヴェッカーシリーズとしては、「ノエルサンドレ」、「彷徨のエトランゼ」に続く第3作だが、前2作との直接のつながりはない。毎回、一度見ただけでは理解できない部分が多いシリーズで、今作もその例に漏れることはなかった。よく分からなかった部分は、夜公演の千秋楽で確かめよう、と思っていたら、開演時間を間違えていて見られなかった。夜公演は19時開演、千秋楽は1時間早め、というタイムテーブルが疑いようもないレベルで染み付いてしまっていたので、チケット券面を見て17時開演だったことに気がついたときには既に遅し。2011年3月に、同じ笹塚ファクトリーで上演された、まりやんぬ出演舞台の「努力しないで出世する方法」の千秋楽も全く同じパターンですっぽかしているというのに懲りないね。笹塚ファクトリーは撤収のリミットが早いのだろうか。
ストーリーは1983年のみを舞台に進み、時空の分岐や統合も起きず、時空同位体も出現しないので、本来であれば理解しやすいはずなのだが、理系的な素養や想像力に欠ける己にとってはやはり難解。そもそも「ダンデライオンガール」のドーナツ盤は、誰が何の目的で作成し、レコード屋の棚に置いたのか、そもそも何だったのかすらよく分からなかったし、リリーズが持ってきたステッキをサポートドロイドナインが未来に持って帰るのが何のためなのかもよく分からなかったし、そもそもナインが自らの過ちを認めることとなった決め手が何だったのかもよく分からなかったし、工藤かをるがなぜ伝説のヴェッカーに変身してしまったのかもよく分からなかった。これだけ核心が分かっていないというのは全く話にならないな。普通の感受性があれば理解することは難しくないのかもしれないが、理解できないものは仕方ない。
個性的なキャラクターが揃っていたので、物語の核心はよく分からなくてもそれなりに楽しめてしまうあたりは、アイドル舞台ながらアクションを多用するこの作品ならでは。パフォーマーを使って、見えないものをイメージさせるような演出もこれまでのアリスインにはない試みで、芸術的な色彩を与えていた。張り出しを設けた舞台を囲むような客席、そして舞台を十字に使って縦横無尽にキャラクターが目まぐるしく入退場を繰り返すところは見ごたえがあった。このスピード感は、笹塚ファクトリーで初めて観劇した作品であり、栞菜さんや田井中さんも出演していた「VAMPIRE HUNTER」など、藤本さんの演出作品でも用いられていたものだ。
時空刑事とサポートドロイドだけでも、4世代13人が登場。戦闘シーンは、これまでの2作と比較すると、だいぶ迫力が出ていた。ナイン役を演じた初舞台の山本さんは、本職が「武術家」で、槍術でも輝かしい成績を残しているとか。どおりで槍扱いが手馴れているというレベルどころではなかったわけだ。演技の面でも、全く経験がないということには気がつかないほどで、圧倒的な存在感で異彩を放っていた。
マスコット的なキャラクターともなるサポートドロイド。チャーム役の田井中さんを舞台で見るのは、何だかんだで「VAMPIRE HUNTER」以来2年ぶり。最後の自己紹介で「よっ、田井中!」と客席や共演者からもいじられまくるまで気がつかなかった。関西弁ロイドで、アドリブで笑いを取りと、個性を生かして楽しそうに演じていた。チャームのおばあちゃんに当たるエルは、りなはむこと横山さん。ぶりっ子キャラクターがはまっていたのは、エルの役作りかと思ったら、自己紹介になってもそのままのキャラクターで、どうやらアイドルとしても全く同じ路線を貫いているようだ。ダブルキャスト日野麻衣さんのエルも、きっと似合っていたことと思うが、他の大事な仕事のために最終日は休演ということで、千秋楽に間に合っていたとしても見られなかった。日テレの最新ランキングでは、山川さんが7位で日野さんが8位と健闘中。アイドル番組を見る習慣はないので、活躍はサイトの順位で知るだけだが、「冬椿」で共演した二人には、贔屓の感情が湧くのが人情だ。ランキングには、「彷徨のエトランゼ」出演組の、権藤さんと倉持さんの名前も見える。
今日の出演者の中で、馴染みの顔となるのが、9作品目の船岡さんと、12作品目の栞菜さん。船岡さんは、ツインテールで女の子らしく可愛く戦うヴェッカー。栞菜さんは、ヴェッカーシリーズ出演3作目にして初めてヴェックフォームに身を包んだ。馴染みの顔というだけではなく、演技やアクションの面でも安定感抜群の二人だった。
アリスインの舞台には2度目の出演となる金澤さん。細く長い手足は秋葉原のステージに立っていた頃と同じだ。演技面では、感情が入って涙をこぼすほどになった後半にかけて、尻上がりによくなっていった。もう過去を引きずってはいないし、過去と結びつけて彼女のことを見る必要もないだろう。