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~熱風の果て~

観劇の記録

戦国降臨GIRL(アリスインプロジェクト)@シアターKASSAI

演劇 演劇-2012年
【脚本・演出】まつだ壱岱

【出演】斉藤雅子、栞菜、船岡咲、階戸瑠奈、桜衣かれん、北山亜莉沙、優光、茅田望見、光希沙織、池田ショコラ、中田杏奈、安藤流々、岩下夏帆、高野瑠奈、石塚みづき、春野恵、秋場由香、稲川みなみ、小玉百夏、瀬川ももえ、新名杏梨、雲母、鍵谷まみ、鈴木絵未里、安井紀絵、中村裕香里、宮沢なお、堀高エミリ、更崎由奈、つちださゆり、安藤彩華、中村まい、田中真央
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壱岱氏が演出・脚本であれば外れはないだろうと思いつつも、シアターKASSAIという狭い会場での上演、女性キャストだけのアリスインという制約の中でどこまで魅せてくれるか、不安がないわけではなかった。開演前カゲアナでの「上演時間1時間20分を予定」と聞いたときには、これでは登場人物たちが満足に活躍する時間もないのでは、と更に不安が積み重ねられた。
しかし、幕が開いてみるとそれらの不安は見事に霧散、会場やキャスティングのハンデを跳ね返す迫力と完成度は演出と稽古の賜、そして実在の戦国武将を登場人物にもってきたことによるキャラクターの分かりやすさ。そんな利点も生かしてのテンポのよい展開。ASSHとアリスインは、予想以上の相性の良さで化学反応を起こしていた。密度が濃いゆえに、上演時間の短さも全く不満には感じなかった。
この舞台が評判の悪いはずもなく、早くも来年夏に六行会ホールで続編の上演が決定したらしい。しかし、大きいホールで殺陣の迫力も増し、スケールの大きな舞台が見られる・・・と手放しで喜んでばかりもいられない。来年春の六行会ホール公演は、当初予定されていた「ヴェッカー」から「Alice in Deadly School」の再演に変更になったらしく、その経緯の一端を綴った畑澤監督のブログの文面は、無念さが伺えるものだった。同じ轍を踏まないようにしてほしいものだが、大会場に変更されることも併せて考えると、仮に今作の登場人物やキャスティングを引き継ごうとすれば困難を伴うことだろう。このプロジェクトのルーツであり初演も六行会だった「Alice in Deadly School」の再演ですら、キャスティングは初演から全面的に変更されるのは間違いない。
主演の斉藤さんは、幼いルックスと可愛らしい声で、前半は理系少女・百華を弱々しく可憐に演じる。「まなつの銀河」でロケット発射の「いけー!」を叫んだときと同様、凛とした芯の強さも表現できるのが彼女の長所。後半のコールマスターとして覚醒した後との演じ分けがしっかりとできていた。台詞だけでなく、表情のグラデーションのつけ方も上手い。武将を降臨させるという設定によって、学生たちと、実際に戦う武将たちを別のキャストが演じることができるのも利点だ。信長役の階戸さんは剣道経験者ということで、太刀捌きが決まっていた。
学園の仲間である政宗、秀吉とそのコールマスターたちは、やや存在感が薄かった。織田武将で固められた学園の中に政宗が登場するというのは違和感もあったが、やはり長秀や一益では知名度不足ということなのだろう。もう少し必殺技のようなものがあったり、智謀派武将が活躍するような展開があればよかったか。
センスに定評のある壱岱氏のASSHが衣装を担当しているので、和洋折衷の華やかで個性的な衣装が登場人物たちの魅力を一層引き出した。中でも、ガーリーな衣装を身にまとい、鞠を得物に戦う義元の設定が目を引いた。
演技で目立ったのが、武の組で義元のコールマスターである蛇子を演じた、自称・キモヲタの岩下夏帆さん。声優としても活動しているだけあって、可愛らしい声が悪役としての蛇子の憎々しさを深め、ドスの利いた声への転換が迫力を加えていた。声色というのは舞台で演じる上で大きな武器になり得る。

(以下あらすじ)
未解明の歴史の謎を解明する「歴史補完計画」により現代に蘇った卑弥子(更崎)は、かつてヤマトに滅ぼされた「ヤマタイ」を鬼道の力で復活させ、ヤマトの国を支配することを目論む。これに対抗できるのが戦国武将たち。DNA型から作り出された器である「エーライフ」に、特異な能力を持ち特定の武将とシンクロできる少女たちが魂を「降臨(calling)」させることにより、昔の人物たちを復活させることができるのだ。その能力を持った少女たち(コールマスター)を集めて彼女らの能力を高め、ヤマタイとの戦いに備える秘密組織「降臨学園」。そして、学園は長年探し求めた、最強の武将・信長(階戸)を降臨させることができる力を秘めた少女・百華(斉藤)を発見する。対するは、信長の第六天魔王としての力を利用するため、百華を奪おうと襲い掛かるヤマタイの一党。危機が迫る中、百華が叫ぶと信長が降臨し、その力を得て勝利する。しかし、その後の百華は望んでも信長を降臨させることができない。それを知って再び百華を狙うヤマタイとの戦いで、勝家(つちだ)を降臨させることができる学園の先輩・大柴田(北山)は百華を守って命を落とす。ついに戦う決心を固め、覚醒した百華は、信長と心を通わせ、意のままに降臨させることに成功。政宗(優光/小玉)、秀吉(石塚/宮沢)、光秀(高野/中村裕)を降臨させる学園の仲間たち(栞菜、桜衣、船岡)と共に、敵方の蛇子(岩下/安井)が降臨させた義元(春野/堀高)、白童子(中村ま)が降臨させた信玄(安藤)を破る。しかし、白童子たちによって本能寺の記憶を呼び覚まされた光秀は突如として信長に刃を向け、コールマスターである三ツ子とともにいずこへか去る。そして新たに謙信を降臨させることに成功した卑弥子と戦い、三ツ子を取り戻すため、百華たちは今日も修練に励むのだった。