~熱風の果て~

観劇の記録

おるんと高麗犬(PandASSH!!!)@笹塚ファクトリー

【脚本】スギタクミ、【演出】まつだ壱岱

【出演】森田涼花フォンチー井深克彦、田所治彦、近藤奈保妃、神宮寺しし丸、夏生優美、清水日向子、中村まい、舞園れのん、白倉麻子、昼田富彦、浪江かえ、中村拓未、小林勇太、村上芳、杉浦友哉、千尋水田芙美子、茅田望見、鵜飼主水、よしとも、茶風林
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怪傑パンダースとASSHとのコラボで「PandASSH」と、リトプッチさんのようなプロジェクト名を引っ提げての公演第1作。
舞台となるのは新潟で、回すと願いが叶うと伝えられる高麗犬や、彼が鎮座する湊稲荷神社は実在しているらしい。花街というと、江戸時代が舞台という先入観を持ってしまうが、時代は昭和初期。この時代の芸者と遊女の違いや遊郭置屋の違いというのは、いまいちよく分からないが、森田さん演じるおるんたちは、身体を売らない芸者だった。
主演の森田さんは、以前の主演舞台での気品あふれる立ち居振る舞いが印象に残っていた。今作での芸者をどう演じるのかというところには興味があったが、新たな顔は思ったほどには見られず、上品で芯の強い芸者ぶりだった。翳の部分であったり、凄みのある色気を出すためには経験と時間が必要のようだ。
今年、とにかくその活躍を目にする機会の多いフォンさんは、屈折した感情を隠さない奔放な芸者。ほどよい色気とおきゃんさの表現は一流。これまでのフォンさんの中で、最も役に馴染んでいた。和装もよく似合う。
高麗犬は田所治彦くん。ASSHMOSHで見せている天才的なアドリブはまさに石と生身を往来する高麗犬役にふさわしい。軽妙さと対比をなす、神域を守護する神の使いとしての威厳も表現するような場面があればなおよかったとは思う。
登場人物たちの愛憎が複雑に絡み、次第に血の臭いを帯びていく。高麗犬という飛び道具がデウスなんちゃらとして働かなければ、生命による償いが求められるという展開の中で、「回すと、叶う」というキャッチコピーから予想されるハッピーエンドをどう導くかという興味もあったが、結局は償いは果たされた。
代償の重さほどに衝撃が弱かったのは、死に至るべき理由こそあれ、そこに不条理性が足りなかったためか。俗な言い方をすれば、「フラグが立っていなかった」。登場人部はそれぞれ過ちを犯すが、そこにあるのは嫉妬や情欲といったもの。動機が崇高であり、なおかつそれが理解されない、または誤解された結果もたらされる死というものであれば、より一層の悲しみをもたらしただろう。結果のための筋書きをいかに辿るかという劇になっていた面はあったが、それを補完する意味でも、現代編があったことは効果的だった。