~熱風の果て~

観劇の記録

ぱぢゃまdeおじゃま?(女神座ATHENA)@高田馬場ラビネスト

【作・演出】山口喬司

【出演】冨手麻妙、山川ひろみ、池上紗理依、鈴木絵未里、日野麻衣門田典子三田寺理紗、古河結子、守永七彩、宮島沙絵
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昨冬の旗揚げ公演「冬椿」に続く女神座ATEHAの2nd IMPACT。前作でこれ以上のものをつくるのは難しいだろうというレベルのものを送り出した後なので、第2作に対する不安というものは直後から抱いていた。チケット売出しイベントに参加はしてみたものの、30人規模のアイドルファンの範囲までを相手にするような売り方、考え方にも疑念を深めた。「冬椿」では、そんな疑念は完全に払拭され、脱帽するしかなかったので、今回も女子寮とパジャマという狙ったようなタイトルと雰囲気の劇と思わせて、驚きを与えてくれるだろうという期待も持っての観劇だった。
結論から言うと、疑念は深まった。2段ベッドを2台など女子寮の1室を華麗に乱雑に再現し、劇中で模様替えまで行ってしまう大掛かりなセットの中で、基本的にはパジャマでワイワイ、ゴロゴロ。ストーリーはあってオチもあるが、心に響くというものではないし、女子寮の雰囲気はリアルを追求する感じで、「萌え」の要素は少なく、喧しい笑い声が劇場にこだまする。劇中の多くの時間で聞かされると、気分のよいものではない。これだけ女の子がいて、ぶりっ子キャラがいないというのも珍しい。リアルにそうそういるものではないかもしれないが、キャラクターのバランスや萌え要素を考えると、一人くらいいてもよかった。
笑いどころは、「てんいちっ」ネタ。天下一發Tシャツから始まって、ロンカーフェイがアクションスターになっていたり、架空の映画が実際にセットの中のテレビに映し出されて餃子和尚やシューヤオが活躍したり。他の笑いどころは、古河さんの偉大なキャラクターに依存するところがほとんどだったので、「てんいちっ」を見ていたおかげで、2割増しくらいには楽しめたか。ただ、コメディタッチの舞台にしては、笑いの要素は弱かった。アイドルでもある経験の少ない女の子たちにコメディをやらせるのであれば、もっと突っ走ってアイドルにここまでやらせるかというくらいのことをやらせてあげないと逆に苦しい。笑いという点でも、硬派な時代劇でもあった「冬椿」の方が上だったというところに、この舞台の中途半端さが感じられる。
終演時に、心を込めた拍手ができなかったのが後ろめたい。冬には第3弾の構想もあるという女神座ATHENAだが、どのような方向性でいくのか難しいところ。今回のような作品が続けば、先行きの見通しが曇ってきもしてしまう。
出演者の演技は概ね安定していた。この点では安心の女神座ATHENA。舞台では3作品目の主演作となる冨手さん。干物系でもっさりとした役はこれまでとは大きく異なる。2段ベッドの上で寝そべってマンガを読むシーンが多いので、主演という割にはあまり顔が見られなかった。これまでの主演作同様、今回もいまひとつ印象に欠けた気がしてならない。進学せずに役者としての道を歩むことを決めたのであれば、自分なりの個性を強く打ち出していくべきだろう。
気になった出演者といえば、新入生役の鈴木絵未里さん。「俳優を真剣に目指す少女」を自称するだけあって、少し空気の読めないおっとりとした役どころを着実に演じていた。Girl〈s〉ACTRYからは、前作で主演の日野さんのほか、連続出演の三田寺さん、女神座初登場の門田さんの3人が出演。様々な舞台に人材を送り込むGirl〈s〉ACTRYではあるが、肝心の自前の公演は長いこと行われていない。高城さんが引退するなど遠心力が働く中で、今後の活動の方向性は見えてこない。お嬢様な寮長役の三田寺さんは、普段からのゆっくりとした喋り方が役のイメージと合っていて、はまり役だった。
ブログレビューキャンペーンを今回もやるという女神座ATHENAだが、心から楽しめたというレビュー以外は対象外とか。今回の舞台にはアンケート用紙も用意されていなかったが、内容的には賛否両論あって然るべき作品だったと思うし、批判は聞きたくないということでは内輪受けで終わってしまうだろう。