~熱風の果て~

観劇の記録

月下のオーケストラ(Flying Trip)@シアターグリーンBIG TREE THEATER

【脚本・演出】春間伸一

【出演】黒田有彩内田理央フォンチー緑川静香、荒井奈緒美、鈴木ふみ奈、亜希子、時田愛梨関根優那後上翔太、根津茂尚、加藤岳史、長谷川友貴、倉田瑠夏
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今年に入ってから、心のど真ん中に刺さる舞台作品に出会えていない気がして、己の感情の浸透性がゼロに近いせいかとも思えてきていたが、ここで出会えた。これまでも良質な舞台を提供し続けている春間さんのFlying Tripの舞台を見に来たことに、今回も間違いはなかった。
「落下ガール」、「ストパラ」、「空色ドロップ」、そして今回の「月下のオーケストラ」と、次第に非現実的な設定が減り、日常、現実の方に近づいていっており、今回は非現実的な要素はほぼゼロになっていた。このあたりも、作品を重ねるごとに、スタッフ、キャストの自信が深まっていることの表れとも言えるだろう。脚本だけでなく、音楽や舞台セットなど、演劇を構成する全ての要素が、劇中の世界に意識を導く。安易なご都合主義のハッピーエンドに走らなかったラストの展開も余韻を残すものとなった。男性陣を含めた複数のエピソードが交わる構成は、病院という限られた空間に深みを与えてくれた。
黒田有彩たんは、とても受け入れることのできない病を宣告され、大切なものを失っていくという、重い悩みに支配される役。彼女の演技、いわゆる舞台演技ではないのだが、本当によく伝わってくる。繊細に感情を伝えることにかけては、くろありたんには天性の才能の輝きを感じる。ラストシーンではハーモニカと歌も披露。彼女の歌唱力が高いのは新たな発見だった。
彼女の親友役は、今回も座長を務める内田理央たん。彼女にとっては、これまでの作品とは毛色の異なる役で苦労もあったはずだが、友のために揺れる感情と苦悩と強さを自然と表現できていた。黒田・内田コンビは3作品連続になるが、毎回違う顔、そして成長を見せてくれるし、演技も素晴らしい。これだけ続いてもマンネリということはなく、次の作品でも彼女たちのコンビを見たいと思う。
パンフレットでは女性陣は全員ナース服なので、そういう設定かと思ったら、半分は病人役。17歳の関根優那たんは、前作に続いて中学生役。長内という役名どおり、ツインテールでパジャマ姿だと中学生にしても幼く見えるくらい。前作ではたどたどしかった演技も目覚しく成長していた。好調レッズを影で支えるとっきーは、幽霊に怯えるパニック障害のような役。「まなつの銀河」の機械教師役と比べると、空回り気味にも見えたが、よくよく考えたら教師がはまり役すぎただけ。彼女には、病人よりもナースをやらせるべきでしょう。
終演後は、こちらもハイタッチ会。「空色ドロップ」では観客の拍手にもかかわらず実現されなかった男性キャストとのハイタッチもあり。女性アイドル中心の舞台であっても、キャスティングでもハイタッチでも、男性キャストの存在はあった方がいい。
後上翔太くんは、「純烈」というムードコーラスグループに所属しているということで、16日の公演では、純烈のミニライブがあった。このグループのことは全く知らなかったが、舞台物販の写真を140セットも売り上げたという翔太くんだけあって、幅広い年齢層の純烈ヲタが客席の結構な割合を占めていて、サイリウムやウチワを振る女性が多数出現。さっきまでアイドル中心のほろりとする舞台が行われていた空間であったことを忘れるくらいのホットな空間が出来あがっていた。